ヴァイス(2回目)-1
記憶を取り戻したのは、婚約破棄を宣言してからだ。
もっと早く戻してくれと思ったが、過去に戻してくれたことは奇跡としか言いようがない。
何度か人に今年の年号を聞いて回ったくらいだ。
ここから、カトレアを、悲劇を繰り返さない手筈を整えるためにルヴァ男爵の噂をかき集めなければならない。
ヴァイスはそう意気込むと、ふと外が騒がしくなった。
風が吹いているわけではなく、雨が降っているわけでもない。
精霊様たちが怯えているのだ。
「約束通り、アンタを過去に戻したよ」
外の気配を感じている間に入っていた、前回と契約した悪魔の女。
「少し、待ってください。雇用書を用意します」
奇跡を起こしてくれた悪魔、しかも対価は魂などではなく、メイドとしての雇用と食事。なんとも良心的なものだろうか。
ヴァイスは急いで雇用書を作成し、目の前の人知を、精霊をも超えた女に渡す。
すぐさまできなければ死ぬのは自分だ。
カトレアに冤罪をかけられる前に死ぬわけにはいかなかった。
「これにサインして、明日の朝この隣の建物へ行ってください」
「人間も知能が進化してるね。これに精霊を介した契約がされる仕組みが施されている」
その言葉にヴァイスは驚きを隠せない。
ヴァイスは加護持ちだ。
加護の内容は違えることを許さない誓約の大精霊の代行人となる。つまり、ヴァイスの用意した書面に書かれたことは絶対である。不便なことは、無自覚に発生するため、普段は意識することなく、裁判官などには便利だろうなくらいの認識でしかなかった。
これは目の前の悪魔に喧嘩を売ったことにならないか?
とこの時ばかりは冷や汗が流れ続ける。
「どこかの自堕落とは違ってアタシは暇を持て余すのは好きじゃない。それに、アイツもアンタの元婚約者の近くにいるようだしね…。
アタシはコバト。よろしく、ゴシュジンサマ」
大声をあげて笑い、コバトと署名したた。どこか裏がありそうだが、一応、首の皮一枚が繋がったことを実感する。
コバトは早速、準備をしてくるといい、部屋を出ていった。
嵐が去ったと、ヴァイスはやっと落ち着いて呼吸をすることができた。
ヴァイスは今日の出来事を思い出す。
1回目の時には無かったカトレアの行動、そして、コバトの言葉、彼女もコバトのような存在が他にもいて彼女を回帰させたのか?
だとしても、このままいけば確実に婚約破棄されるな。
ヴァイスは自分自身に嘲笑する。
だが、同じ鉄は踏まない、まずはルヴァ家を洗う。
ヴァイスの瞳には、復讐心と覚悟を宿していた。
「それにしても…」
ヴァイスはカトレアがあれほどまで脱がなかった聖女という仮面をいとも簡単に取りはずしたことに昔を、まだ互いが婚約者という縛りができる前を思い出した。
やっぱり、この恋心は手放せそうにないな。
どこまでも諦めない、慈しみ、まっすぐ進む勇者のようなカトレアはヴァイスの憧れであり、初恋を攫われたのだ。
新設定 ヴァイスは契約の大精霊の加護持ち。
他に兄弟がいれば、法廷の方に行かされていた。
このことを知っているのは父と加護を鑑定した霊族のみ。
まだもう少し続きます。
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