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ローゼ・ルヴァの生き様

事前忠告

できるだけオブラートに包んだり少し伝わればいいかなくらいの調整で書きましたが、不快に感じてしまうことがあるかもしれません。

カトレアの恩恵によって一生をこの退屈な辺境の地で過ごすだけで刑が決まったローゼは退屈すぎてあくびが出た。


ローゼはルヴァ男爵の妾腹。つまり実子ではない。

母はもともと虚弱体質でローゼを産んで程なくなくなった。それまでは孤児院で楽しく暮らしていた。

修道女になって今度は自分が恩返ししようと思っていた矢先、実父の遣いだと名乗る者がローゼを引き取った。

正妻の子は出来が悪く、家を出てしまったため、代わりに引き取ったと言っていたが、本当は違った。

ローゼを使って貴族から金をむしり取るためだ。

男爵家は返せないほど多額の借金をしていた。


逃げ出そうとすればすぐに捕まる、孤児の頃のような日々には戻れない、涙に暮れることなどする暇もなく、汚れた人形のような対照的な日々を過ごす。


貴族や裕福な者が行く学校では、家を出ることができた。

いくつか条件も出されたが、あそこよりはマシだと、学生生活に胸を躍らせた。

しかし、あったのは妾腹ということで虐められる日々。

どこにも居場所がないと言われたようで、一人でいることがよくあった。

いつものようにお綺麗な貴族令嬢がローゼに教育を施していると、通りかかった同じ女子制服をきた綺麗な女性が間に割り込んだ。


「何をなさっているの?」


冷徹な声が教室と人々を制する。


「これは、カトレア様。ごきげんよう」


お綺麗な女子学生たちは頭を下げて礼を取る。


「私は何をなさっているか聞いているのです」


それなりの家柄である彼女たちの挨拶を無視してカトレアは自分の問いかけをうやむやにしなかった。


「いえ、ちょっとした教育をしていただけですわ」

「教育?」


カトレアはスッと庇いきれないほどの腫れた頬を押さえながら倒れているローゼを見ると、女子生徒の一人の頬を思いっきり叩いた。

刻みのいい音が部屋中に響き、シーンと静まり返るまで誰も何も言えなかった。


「な、何をなさいますの!」


叩かれた彼女の仲間たちは駆け寄ってカトレアに反論する。

ローゼは呆気に取られた。


「あなたが目下と感じている人に教育を施しているのですから、私も教育をあなたたちに施せますよね?それとも、先ほどの教育という言葉の意味が違ったのであれば、私自らが大精霊様の御前で懺悔なさいましょうか?」


彼女の胸を張り、威厳のある言葉がこの場を制した。


「め、滅相もございません。お教えくださりありがとうございました」


顔を青くして教室を忙しなく出ていく彼女たち。

ザマァみろと心の中で出ていったお綺麗な貴族令嬢たちにローゼは悪態をついた。


「ひどく腫れていますね」


綺麗なカトレアは懐からシワひとつないハンカチを取り出し、急いで部屋を出て、すぐに戻ってきた。

冷たく冷やされたハンカチをローゼに当てて、手当てをする。


「医務室まで行きましょう。こちらは差し上げます」


カトレアはローゼに手を差し出し、医務室までローゼに合わせて歩いてくれた。


その後、あの女子生徒たちは一切、ローゼに関わらなくなった。聞いたことだが、カトレアは聖女と呼ばれているらしい。確かに手当てや医務室まで連れて行ってくれたことは聖女らしかった。

しかし、女子生徒の頬を引っ叩くカトレアが聖女?!とローゼは息を殺して当時を思い出し笑った。

カトレアと関わることはもうなかったが、それでももらったハンカチは生きる希望だった。


学校生活が終わり、地獄へ逆戻りをした。

義母に言われ、下町へ買い物へ出かけると、ふと目に入った書店屋が気になった。

なんの変哲もない本ばかりが並ぶ中、一冊の本を手に取る。

店主に聞いても何も知らないと言われ、無料でもらえた。

いいものをもらえたと心を躍らせていると、ちんまりとした孤児院でカトレアが目に入った。

楽しそうに子供達と戯れるカトレア。

自身も孤児だったため、そこに重なるものを感じた、と同時になぜ自分はそこにいないのか、なぜ自分だけこんなことをしないといけないのか。

今の自分がいっそう惨めに見えた。

溜め込んでいたものが一気に噴き出る。

一心不乱に家に戻り、もらった本が落ちてページが開かれる。

きつく結んだ拳から血がそこに垂れ落ちた。

突風が起こり、本から現れた異形なものが不意に自分を救う救世主のように見えた。


ローゼはそのアクマと契約し、自分の人生というものを謳歌した。


声があれば相手を意のままに操れる。誰も私を陥れない、今度は私が人形遊びをする番だ!

力に溺れたローゼは見境なく気に入らなければ消してきた。これが私の望む何の障害のない人生だと。


アクマはあっけなくやられた。

その時になって自分がしたことの意味がわかった。

ああ、私死ぬんだ。

罪を犯した自覚をしたローゼは清く、ヴァイスの言葉を受け入れた。

しかし、それを拒否したのはカトレアだ。

彼女はローゼに判決を下すと、言った。


「あの時、あなたの名前を聞いておけば、きっといい友達でいられたでしょうね」


その言葉にローゼは微笑んだ。


「あなたのような綺麗な人とはきっとソリが合わないわ」


ローゼはカトレアの方を一度も見ずに与えられた罰を受け入れ、馬車に乗った。


そして現在、ローゼは一年中氷で覆われた土地にいる。なんでもドラゴンの魔力が雪を降らせているのだとか。

ローゼは立ち上がり、そのドラゴンと話をつけに行こうとしていた。

ローゼは今、人生を楽しんでいる。

ローゼは生きてきた環境を知ると憎めない子だと思います。

カトレアに対して憧れを抱き、契約書の力によって欲を捻じ曲げられた哀れな子。

彼女は退屈な辺境の地にも順応し多少不便はありましたが、もともと厳しい環境には慣れているため、むしろキツく当たってくる者がいないので、生涯を悠々自適に過ごしました。


雪を年がら年中降らせるドラゴンの話はまた別の機会に。

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