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15「ありえない」

男が言うことはあり得なかった。

ヴァイスはカトレアを疎ましく思っていたのだ。

目を合わせることなく、話しかければ険しい顔をする。ただ、パーティや公の場では、それを隠していた。

これのどこが円満な婚約なのだろうかとカトレアは日々思っていた。

初めは、婚約者となれて嬉しかったのに。

幼い日々の記憶が蘇り、目頭が熱くなる。


「…嬢。ご…嬢。ご令嬢」


男が何の反応もしないカトレアの意識を戻す。


「ごめんなさい。酔い過ぎてしまったようです」


カトレアが扉の方を見ると、タイミングよくザクロが人型で立っていた。

よく不審に思われないわね。

服装も何もかもこの会場には似合わない不気味な男。

疑問に思ったが、悪魔だから、で片付けられる程に慣れてきた。


「失礼します。とても有意義な時間でした」


カトレアは洗礼された礼を取り、バルコニーに男を残して、パーティを後にした。

会場の外には帰りの馬車が常駐していたため、ザクロと共にそれに乗り込んだ。


「面白い話はできたか?」

「あなたには関係ないでしょう?」

「だな、オレには関係ねーよ」


ピリついたカトレアの言葉に、ザクロは全く気にせず、むしろよりにやけ顔を深めている。


「ルヴァ男爵令嬢の悪魔はどうだったの?」

「ありゃ、契約書型のもんだ。契約書を探すのに骨が折れるぜ」

「場所は聞かなかったの?」

「オレらにも守秘義務はあるからな」


何当たり前のこと言ってんだとばかりに顔を顰めるザクロに私が悪いのかな?と思わず考えてしまうカトレア。


「けど、契約主の方が自慢してやがった。ヴァイス?とか言う王太子サマの権力でテメェともう一回、婚約破棄させんだと、そん時にオメェを投獄するのに力を使うんだとよ」


ルヴァ男爵令嬢はあの悲劇を繰り返させるつもりなのだろう。

カトレアは絶対に阻止しなければいけないと思った。


「そのためには出来事が起こる直前に契約書を使って契約事項を増やさなならねぇ。テメェを確実に投獄させたら、契約は遂行されるってな」

「そこを奪うというわけね」

「そう言うことだ」


この時の二人の顔はどんな悪役よりも悪どい顔をしていた。

明日も2話投稿、完結まで走ります!

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