14「有意義な時間でした」
ザクロが戻ってくるまで適当に時間を潰すことになった。
ダンスを踊る気にもなれず、一人でお酒を飲んでいる。
バルコニーから吹き荒れる風が、程よく酔いを覚ます。その時、バルコニーの扉が開いた。
「失礼、先客がいたとは知らず」
仮面で顔を覆った男が慌てたように言った。
仮面舞踏会なのだから、カトレアも仮面をつけているため、人のことは言えない。
「かまいません、今宵は無礼講ではないですか」
カトレアとて貴族令嬢、器が広くてなんぼである。
その言葉に安心した男がカトレアの隣にきた。
「私はこのような場所は初めてで、緊張してしまいました」
男がそういうが、佇まいからして慣れているのがわかる。
かまをかけているのだろうか。
カトレアはそう思ったが、詮索するのは無粋だと感じ、踏み止まる。
「あなたも夜風にあたりに来たのならば、少し私とお話しいたしませんか?」
カトレアは貞淑な令嬢後のような穏やかな笑みを浮かべて男を招く。きっと、カトレアも酔っていたのだ。
「それは良いですね。では失礼して」
意外にも男は乗り、二人だけのただの談笑は何の飾らない言葉だらけでカトレアにとって、この時間はとても話しやすかった。
「最近知った昔話で、わからないことがありますの、あなたのご感想を聞いても良いかしら?」
カトレアの酔いが回ったのか、それともこの男が聞き上手なのか、一夜限りの話し相手に対して自分も1回目の話をする。
「とある女性には婚約者がいたのです。その婚約者の方は彼女の長年の幼馴染なのです。婚約者となった女性は彼に似合うよう一生懸命努力したのです。しかし、ある時、急に婚約を破棄され、彼女は無実の罪で投獄されたのです。もちろん、女性は男を許さないのはわかるでしょう?」
「ええ」
「けれど、彼女の元婚約者は、死ぬ直前の彼女の前に現れ、涙を流したのです。そこで物語が終わってしまい、元婚約者の心情が私にはわからないのです。同じ男性のあなたならばわかりますか?」
はじまりのザクロと出会う前、ヴァイスは冷徹な目をしていたにもかかわらず、痩せこけたカトレアを前にして、嘲るのではなく、その目から一筋の涙を溢したのだ。
もしかしたら、幻覚だったのかもしれないが、それでも、ヴァイスの気持ちを知りたかった。
男は考えるように顎に手を置く。
「きっと、その女性を愛していたのでしょうね」
男の口からはそう言われ、カトレアは狼狽えた。
ありえない。と
今日は21時にも投稿します!




