夢:失敗
「ひろ!」
「おい、ひろ!」
肩を激しく揺さぶられる。
ひろは勢いよく目を開いた。
目の前にはダイちゃんがいた。
唇の端から血を流している。
「ダイちゃん!」
ひろは慌てて辺りを見回す。
校舎の中。
さっきまでいた駄菓子屋は跡形もない。
「……戻された。」
夢が強制的に巻き戻したのだ。
ダイちゃんと目が合う。
ダイちゃんは口元の血を親指で拭い、苦笑した。
「悪い。」
「いい作戦だと思ったんだけど、裏目に出た。」
「ケースケは?」
ダイちゃんは廊下の先を指差した。
「教室に戻ろうとしてる!」
ひろの背筋が凍る。
「まずい!」
「このままだとケースケが教室へ行っちゃう!」
ダイちゃんもうなずく。
「急ぐぞ!」
「うん!」
二人は顔を見合わせると、転がるように廊下を駆け出した。
教室の前。
ケースケが立っていた。
教室の扉に手をかけたまま、俯いている。
顔色は真っ青だった。
「……。」
二人は立ち止まる。
遅かった。
「ケースケ!」
叫んだ、その瞬間。
――ガバッ。
「ケースケ!」
その叫び声は、自分の部屋に響き渡っていた。
荒い息。
汗で濡れたシャツ。
ひろはベッドの上で顔を覆う。
「……くそっ。」
せっかく駄菓子屋まで連れ出したのに。
夢は、結局元の流れへ戻そうとしてくる。
時計を見る。
午前五時。
「今日は……さすがに仕事行かないとまずいか。」
そう呟くと、重い身体をゆっくりと起こした。




