「ソロプレイ編③」
突如現れた小さな影は、瞬く間に2体のキノコ型の魔物を倒した。
『大丈夫ですか!?先輩!!』
チャットが届く。
そこにいたのは、可愛らしいリスのキャラクターだった。
怜のマイキャラクターよりも、ひと回り小さい。
『ありがとうございます』
怜はチャットで返事をする。
(ん……?先輩?)
怜のことを“先輩”と呼ぶ人物は、ひとりしかいない。
『もしかして、みのり?』
怜がチャットで尋ねる。
『正解でーす♡』
みのりのマイキャラクターは、ぐっと親指を立てた。
▼みのりのマイキャラ
『あっ!これ使ってください!』
みのりは“毒けし薬”を怜へ渡す。
怜はすぐにそれを使い、毒状態を治した。
◆
『閃先輩から、怜先輩も始めたって聞いてて』
『怜先輩のマイキャラを見つけたので、あとを追いかけてたんです』
『そしたらキノコの森に入っていったので、慌てて走ってきました』
みのりが言った。
『そうだったんだ。ありがとう、みのり。危なかった』
怜はぺこりと頭を下げる。
『ここ、そんなに危険じゃなさそうだったから、大丈夫かなって……』
怜は首をかしげた。
キノコの森の危険度は★1.5。
魔物の森の★1と、それほど大きな差はない。
『先輩の武器、氷属性ですよね?』
『うん』
『さっきの魔物、“キノコマン”は氷属性に耐性があるんです』
『それに毒属性も持ってるので、攻撃力は低いんですけど、なかなか厄介な相手なんですよ』
▼キノコマン
(そっか……だから全然ダメージを与えられなかったんだ)
怜は納得した。
『ちなみに、キノコマンの弱点は炎属性です』
『でも、物理攻撃だけでも十分倒せますよ』
みのりが説明する。
『そうだったんだ……』
『なら、いろんな武器を持ってた方がいいのかな?』
怜が尋ねた。
『そうですね。最低でも3種類くらいは持っておいた方がいいかもしれません』
みのりは頷きながら答えた。
◆
『いろいろありがとう、みのり』
『いえいえ〜!それより……』
みのりは怜のマイキャラを、じっと見つめた。
『怜先輩のマイキャラ、可愛い……♡』
みのりが言う。
『みのりのも、すごく可愛いよ』
怜も素直に答えた。
『あ〜ん、愛しの怜先輩♡抱きつきたいです〜♡』
みのりは目をハートマークにしながら、その場をくるくると回る。
みのりは普段から、閃の次に怜へ強い好意を抱いている。
愛情表現はとてもストレート。
しかし、現実では、閃とは違って怜は照れ屋な性格なので、みのりもある程度遠慮していた。
怜自身も(彼女なりに)みのりを可愛がっている。
ただ、その真っすぐすぎる愛情表現に押されてしまうことが多かった。
今もまさにそうだった。
『み、みのり……ちょっと』
怜が困ったように言う。
『あ!フレンドになりましょ!』
勢いのまま、みのりが提案した。
こうして2人は、フレンド登録を済ませた。
◆
『先輩、よかったらボイチャしません?』
みのりが提案した。
『ちょっと照れる……』
怜は少し恥ずかしそうに答える。
『恥ずかしがってる先輩も可愛い……♡』
『わ、わかったから……』
照れ隠しをしながら、怜はボイスチャットを開始した。
『せんぱぁい♡』
甘えるようなみのりの声が聞こえてくる。
「や、やぁ」
怜はなぜかぎこちない返事をした。
『こんな時間に怜先輩のクールな声が聞けるなんて、みのりん幸せです♡』
「そ、それはよかった」
『普段は我慢してるので、今だけは甘えさせてください♡』
(普段どれだけ我慢してるの……?)
怜は心の中でつぶやく。
「ところで、みのりってすごく強いね」
怜が言った。
先ほども、キノコマンを2体あっという間に倒していた。
『えへへ!』
『あたしも、それなりにプレイしてますからね!』
みのりは得意げに胸を張る。
「みのりは、どんな武器を使ってるの?」
『あたしは短剣の二刀流スタイルです!』
短剣の二刀流は、スピードと手数に特化した戦闘スタイルだ。
「そうなんだ。かっこいいね」
怜が素直に褒める。
『嬉しいです♡』
みのりは本当に嬉しそうだった。
その後も、2人はしばらく他愛のない雑談を楽しんだ。
——つづく。




