「ソロプレイ編①」
3日後。
あれから怜は、ソロプレイで金策をしながら魔物を狩り続けていた。
そして、すっかり戦闘の楽しさにハマっていた。
もふもふの村にはレベルという概念はない。
その代わり、武器や装備を強化することでキャラクターが強くなっていくシステムだった。
怜には、以前から欲しいと思っていた武器がある。
氷の杖 Lv.1——価格は10000チップ。
そして現在、怜の所持金は12800チップになっていた。
(やっと買える……)
怜はそう思いながら村へ戻り、そのまま武器屋へ向かった。
◆
怜は真っ先に氷の杖を購入した。
▼氷の杖Lv.1
「毎度ありー似合ってるよー」
武器屋の店員が棒読み気味に言う。
(やった……早速試そう)
怜は再び魔物の森へ向かった。
氷の杖を装備し、魔物へ攻撃を放つ。
氷属性ダメージに加え、低確率で相手を凍結状態にする効果を持つ。
(ふふふ……凍ってる、凍ってる)
魔法武器は、以前使っていた鉄の棒とは比べものにならないほど強力だった。
その時、怜はあることに気づく。
魔法武器を装備すると、画面に緑色のゲージが表示されていた。
そして攻撃するたびに、そのゲージが少しずつ減っていく。
(あ、これが魔力ゲージってやつか……)
以前、閃から説明を受けていた。
このゲージが尽きると、魔法武器は特殊効果を失い、ただの打撃武器になってしまう。
(……これ、どうやって回復するんだろう)
そこまでは聞いていなかったようだ。
(……それより、食料もなくなってきた)
(釣りでもしようかな)
そう考えた怜は、川辺へ向かうことにした。
◆
“よく釣れるスポット”にやって来た怜。
ここは、以前閃に教えてもらった場所だった。
閃もこの場所で釣りをして、よく食料を確保していたらしい。
周囲には誰もいない。
怜はちょこんと腰を下ろし、釣りを始めた。
(現実で釣りなんてしたことないな……)
(たしか、前に東とか光井が釣りの話で盛り上がってたような……)
(烈もたまにするって言ってたっけ……)
そんなことをぼんやり考えていると、早速ウキが沈んだ。
タイミングよくボタンを押し、魚を釣り上げる。
(やった……!)
どうやら上手く釣れたようだ。
怜は再び釣り糸を垂らす。
するとそこへ、大柄なカバのキャラクターがゆっくりと近づいてきた。
◆
カバのキャラクターも釣り竿を持っていた。
『こんにちはー』
カバはチャットで挨拶をしてきた。
名前は「カバゾー」というらしい。
▼カバゾー
『こんにちは』
怜もチャットで返事をする。
『ん?もしかして、怜ちゃん?』
カバゾーが尋ねてきた。
怜のマイキャラクター名は、そのまま“レイ”だ。
『えっと、どなたですか?』
怜がチャットで聞く。
『ああ、ごめん。能勢です』
『もしかして、能勢主任ですか?』
『そだよ』
整備主任の能勢だった。
怜は思い出す。
以前、閃からこの釣り場を教えてもらった時、能勢から教わった場所だと言っていた。
『能勢主任も、されてたんですね』
怜はチャットを送る。
『ゲーム全般好きだからね』
そういえば、閃や光井が能勢のことをゲームマスターと呼んでいたのを思い出した。
『この場所を知ってるってことは、閃くんから聞いたんだね』
能勢がチャットで言う。
『はい。能勢主任が教えてくれたって言ってました』
怜が返した。
話によると、能勢はもふもふの村ではサバイバル重視のプレイを楽しんでいるらしい。
◆
『ついでに教えてほしいことがあって』
『魔法ゲージって、どうやって回復するんですか?』
怜はチャットで尋ねた。
『魔法ゲージは、アイテムなら魔法石とか魔法液で回復できるよ』
『あとは魔術師に頼んだり、魔力スポットって場所で回復したり、方法はいろいろあるね』
どうやら回復手段はいくつもあるらしい。
『ありがとうございます』
怜はお礼を返した。
『あ、ちょうど魔法石いくつか持ってるから、全部あげるよ』
能勢が言う。
『いいんですか?』
怜が聞き返す。
『いいよー』
カバゾー(能勢)はバッグから魔法石を3つ取り出し、怜へ手渡した。
『能勢主任、ありがとうございます』
怜はぺこりと頭を下げた。
——つづく。




