「はじめてのプレイ編⑤」
魔物の森に到着した2人。
怜はいつの間にか、もちのすけの着ぐるみパジャマから初期の服へと着替えていた。
『あれ? コス戻したんだ』
閃が言った。
「うん。返り血がつくかもしれないし」
怜はそう答える。
『返り血て』
もちろん、このゲームにそんなシステムは存在しない。
怜の独特な発想に、閃はある意味感心していた。
その時、向こうから魔物が3体こちらへ歩いてきた。
「来た」
怜は武器を構える。
『ゴロリンが3体か』
閃も武器を構えた。
「ゴロリン?」
怜が尋ねる。
『ゴロツキゴブリンの略らしい』
▼ゴロリン
閃が答えた。
たしかに絵柄はポップだが、見た目はいかにもゴロツキといった雰囲気だった。
◆
『ゴロリンは単体ならあまり強くないけど、複数いる場合は——』
閃が怜の方を向きながら説明しようとした、その時だった。
すでに怜の姿はそこになかった。
怜は武器を構えたまま、一直線に敵へと突っ込んでいく。
ゴロリンたちも武器を構え、迎撃態勢を取った。
(怜……意外と好戦的だなぁ)
閃はそう思いながら、後を追う。
怜はすでにゴロリンたちと交戦していた。
武器の長いリーチを活かし、アウトレンジから的確に攻撃を当てていく。
さらに相手の攻撃も、ひらりひらりと軽やかに回避していた。
閃はビリビリヌンチャクを振るい、ゴロリンを1体撃破する。
続いて怜も1体を倒した。
そして最後の1体は、閃がとどめを刺した。
◆
ゴロリンを倒した後、怜は落ちた報酬アイテムを拾い集めていた。
『……ゲーム苦手って言ってたけど、とても初心者とは思えないプレイだったよ』
閃は驚いた様子で言う。
「そう?」
怜はケロッとした表情で答えた。
『全くの初心者なのにノーダメージなんて……』
閃は素直に感心する。
「ふぅん……」
しかし怜はあまり気にした様子もない。
「さ、次行こ」
そう言って、先へ歩き出した。
◆
それから30分ほど、2人は魔物を狩り続けた。
怜はすっかり戦闘のコツを掴んでいた。
(……楽しい)
魔物を倒しながら、怜はそんなことを思う。
『怜、時間大丈夫?』
閃が声をかけた。
時刻はすでに深夜。
ゲームを始めてから2時間が経っていた。
「え、もうこんな時間?」
怜は時間の経過の早さに驚く。
「うーん……今日はもう終わろうかな」
怜が言った。
『それがいいよ』
閃も頷く。
「じゃあ……おやすみ」
そう言い残し、怜はゲームをログアウトした。
そして現実世界でベッドに横になる。
こうして、怜の初めての『もふもふの村』プレイは幕を閉じた。
(もふもふの村、か……)
そんなことを考えながら、怜は静かに目を閉じる。
——つづく。




