「はじめてのプレイ編③」
道中。
「閃のお家はどこ?」
怜が尋ねた。
『それがねー……ないんすよ〜』
どうやら、閃は以前、新築の自宅の近くで盛大に花火を打ち上げ——色々あって家を失ったらしい。
「自分で打ち上げた花火で……」
怜は、呆れたように言う。
『いやぁ〜、あんときは腹抱えて笑ったよ』
閃はケラケラと笑いながら言った。
(……笑ってたんだ)
怜は、内心でツッコんだ。
◆
不動産屋に到着した2人は、表に貼られているチラシを眺めた。
一軒家、アパート、マンション——住居タイプは、意外なほど豊富だった。
「どれがいいかな?」
怜が尋ねる。
『怜の場合は、一軒家タイプかな』
閃はチラシを見ながら言った。
『もちのすけコレクションとか、家具をいっぱい飾りたいなら、アパートとかマンションはちょっと狭いかも』
『それに、一軒家タイプなら、最初は小さくても後から増築できるし』
怜のマイキャラは、ふむふむと頷きながら話を聞いていた。
「なら、一軒家にしようかな」
怜はそう言った。
『ただ、もちろん土地代とかもいるから、初期費用はかなりかかるよ』
閃の話によると、土地が安く、なおかつ治安も良いのは、もふもふの村らしい。
ただ、その分かなりの田舎で、アクセスは不便とのことだった。
「んー……なら、せっかくだし、他の場所も見てから決めたいな」
怜は言った。
『そだね』
閃も、それに頷いた。
◆
「さっき貰ったビギナーセット、なにが入ってるんだろ」
怜は、さっそくセットを開いた。
中には、ガイドブック、キャンプセット、木の釣り竿、木の剣、木の盾、3日分の食料が入っていた。
「剣と盾って……このゲーム、戦うの?」
怜は少し意外そうに言った。
『それはプレイヤー次第かな』
閃が答える。
『平和に生活したいなら、安全区域にいれば戦う必要はないよ。というか、安全区域だと基本的に戦闘自体できないし』
『逆に、安全区域の外は危険もあるから、護身用の武器は必要になる』
「そっか。閃はどっち?」
『俺は基本戦わない派。でもまぁ、その時の状況によるかな』
「誰と戦うの?」
『野生の獣とか、モンスターとか、あとは他のプレイヤーとか』
「勝ったら?」
『食材とか素材、お金とか色々手に入る』
『他プレイヤーだったら、その人の所持金とか持ち物とか』
「……?」
怜は少し黙ったあと、聞き返した。
「もし今、私が他プレイヤーに襲われて負けたら——もちのすけグッズ、取られちゃうってこと?」
『そうなるね』
『だから、ほとんどのプレイヤーは部屋を借りて保管したり、貸倉庫とか預かり屋にアイテムを預けたりしてる』
「やっぱ安くても部屋借りとくべきかな?」
『安全区域から出なければ問題ないけど、心配なら全然ありだよ』
◆
怜は、ふと自分の所持金を確認した。
表示されていたのは——3000チップ。
どうやら、チップがこの世界で使われている通貨単位らしい。
ちなみに、先ほど見たチラシには、“もふもふの村の土地(小)”ですら、50000チップと書かれていた。
「……まずは、お金稼ごうかな」
怜はぽつりと言った。
『そだね』
閃も軽く返す。
こうして怜は、まず資金集めから始めることになった。
——つづく。




