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エーテルコード:サイドストーリー  作者: エトコッコ
メルの日常

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29/32

「メルの引っ越し」


午前の任務を終え、怜が自室へ戻ろうとしたそのとき、廊下の先で思わず足が止まった。


視界いっぱいに積み上げられたダンボールの山。


その間を縫うように、2体のUBがせっせと荷物を運んでいる。


「おっ、アイスガールじゃん」


ひょいと顔を出したのは、当の張本人——メルだった。


彼女はなぜか怜のことを“アイスガール”と呼ぶ。


「これ……全部あなたの……?」


呆れ半分で問いかける。


「そ!全部翌日配達にしてたから、一気に届いちった!」


メルは悪びれもなく笑った。


「ヒマなら手伝ってよー」


(いや、暇じゃ無いんだけど……)


心の中で即座に否定するが、ふと頭をよぎる。


自分もまた、似たようなことをしては部屋の前にダンボールを積み上げていることを。


——あまり人のことは言えない。


結局、怜は小さく息をつき、そのまま荷物の整理を手伝うことにした。


「お、サンキュー♪」


メルは軽くウインクを飛ばした。



作業は手際よく分担されていた。


UBたちが運搬と空き箱の処理を担当、怜はダンボールの開封、メルは中身の配置を進めていく。


中から出てくるのは、高価そうなPC機材、大量の洋服、ぬいぐるみ、そしてお菓子やジュース——まさに雑多で自由なラインナップだった。


「これ……全部は入らないよ」


怜が現実的な指摘をする。


「んー……じゃ、とりあえずここからここまで!あとは空き部屋に置いといてー」


メルは迷いなく仕分けを始める。


「名前、書いとかないと分からなくなる」


「あ、そっか!ペン持ってない?」


怜はポーチからペンを取り出し、差し出した。


「サンキュー♪」


メルは受け取ると、次々に箱へ名前を書き込み、UBに指示を出して運ばせていく。


作業は驚くほどスムーズに進み、廊下からダンボールの山は跡形もなく消えていた。


「ありがとね、アイスガール!」


メルは満足げに笑い、ペンを返す。


「あんたらも、助かったよ」


続けてUBにも声をかける。


「イエイエ。ナニカオコマリゴトガアレバ、イツデモオッシャッテクダサイ」


そう応じると、UBたちは静かに去っていった。


ふと、メルがくるりと振り返る。


「そういや、アイスガールって“もちのすけ”好きなの?」


「う、うん……」


少しだけ照れながら、怜は頷く。


さっき貸したペンは、もちのすけのグッズだった。


それを聞いたメルは、部屋の中へ戻ると、山のような荷物をかき分けながら何かを探し始めた。


「はい!これ、あげる!」


次の瞬間、軽く投げ渡されたそれを、怜は反射的に受け取る。


それは、もちこのぬいぐるみだった。


「え……いいの?」


思わぬ贈り物に、怜は目を瞬かせる。


「手伝ってくれたお礼♪」


メルは笑って答えた。


同じタイプのものは、すでにいくつか持っている。


それでも、いくつあっても嬉しい。


「あ、ありがと……」


ほんの少しだけ頬を緩めながら、怜はそう答えた。

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