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エーテルコード:サイドストーリー  作者: エトコッコ
サイドストーリー

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22/39

「烈の傷跡」


とある日の夜。


夕食を終えた烈と光井は、談話室でくつろいでいた。


「ところでよー」


光井がふと、烈に声をかける。


「ちょっと気になってたことがあってさ……」


「ん?」


烈は軽く返した。


「その“左目の傷跡”のことなんだけど——」


烈の左目の下には、2本の傷跡がある。


光井は、初めてそれを見たとき、過去の喧嘩か何かでついたものだろうと考えていた。


だが後に、その傷はそうしたものではなく、テツによるものだと知ることになる。


経緯はこうだ。


今でこそ慣れているが、もともとテツは大の風呂嫌いだった。


烈も当初は、入浴させるのに相当苦労していたという。


ある日、暴れるテツをなだめていた最中、振り回された腕に引っかかる形で、鋭い爪が烈の左目付近に当たった。


——それが、あの傷の由来だった。


なお烈いわく、喧嘩でついた傷は一つもないらしい。



しかし、光井にはどうしても引っかかることがあった。


「ファクターってよ、普通の人より身体能力とか免疫力とか、色々強くなるだろ?」


「ああ」


烈は短く頷く。


「だから、病気にも怪我にもなりにくいし、もしなったとしてもすぐ治る——そういうもんだよな?」


光井は確認するように言った。


「特にさ……烈って、その中でもそういうの、かなり高い方なんだろ?」


「あー、そうだな」


烈はあっさりと答える。


光井の言う通り、烈は“強化”という特性の影響で、他のファクターと比べても高かった。


「ならよ、その傷だって……すぐ治って、跡も残らなかったんじゃねーの?」


光井は首をかしげる。


その疑問はもっともだった。


だが——


「ああ、これな。ちゃんと理由があんだよ」


烈は少しだけ視線を落とし、そう言った。



「確かに、これくらいの傷ならすぐ治る。なんなら、音が心配して、すぐに治そうとしてくれたんだけどさ——断ったんだ」


「なんで?」


光井が眉をひそめる。


「ほら……なんか、いい感じに傷入ってるし——」


烈は少しだけ笑いながら言いかけて、ふっと表情を緩めた。


「この傷跡見るとさ……あんときのテツ、めちゃくちゃ風呂嫌がってたなーって、思い出すんだよなー」


どこか懐かしむような口調だった。


「……つまり、その傷跡は、デザインが気に入ってるのと……テツとの思い出ってことか?」


「そういうこった!」


烈はあっけらかんと笑った。



「じゃあ、その傷跡が治らないのは?」


「あー、それな。俺とか閃って、ピアスつけてるだろ?」


烈は左耳の銀のピアスを軽く指で弾いた。


「こういうのって、要するに“体に穴が空いてる状態”だろ?」


「そうだな」


光井は頷く。


「つまり——自分が“怪我”って認識しなきゃ、それは怪我じゃない。だから、治す必要もないって、エーテルが判断してるんじゃないか」


「——って、松永主任が言ってたぜ」


「……なるほどな!」


光井はぱっと表情を明るくした。


「ってことは、タトゥーとかも同じで、“怪我じゃない”って認識してりゃ、そのまま残るってわけか!」


「たぶんな」


烈は気楽に答える。


実際、烈の左目の傷跡も、テツとの思い出として消したくないという意思が、そのまま反映された結果だと言える。


「いやー!なんかスッキリしたぜー!」


光井は満足そうに伸びをした。


「そんなに気になってたのかよ……」


烈は呆れたように笑った。

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