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エーテルコード:サイドストーリー  作者: エトコッコ
サイドストーリーズ

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21/38

「姉妹 -怜と凛-」


「——怜……怜!」


閃の呼びかけに、はっと我に返った怜は顔を上げる。


視線の先のモニターには閃の姿が映っていた。


「今のところ、人の反応も違法SDの反応もなし。ちょうど区切りもいいし、ここで一度休憩しよ」


柔らかく告げる閃に対し、怜はわずかに俯きながら、静かに首を振る。


「……私は、捜索を続ける」


その声には迷いというより、どこか張り詰めた固さがあった。


「ダメで〜す。不用意な時間外労働は認めませ〜ん」


あえて軽い調子でそう言うと、閃のバサラヲが怜のシラユキの手を取るようにして引き寄せ、そのままキャリアへと歩き出す。


「ちょ、ちょっと……!」


戸惑う怜をよそに、閃は振り返りもせずに続けた。


「休息も大事な仕事って、散々言われてきたでしょ?オルフェの人たちに」


その言葉通り、これまで何度も耳にしてきた忠告だった。


怜は反論できないまま、結局そのまま連れられていく。


そうこうしているうちに、2人はキャリアへと戻っていた。



キャリア内に入り、2人はEDを降りると、フォーム姿のまま昼食を取ることにした。


閃は手慣れた様子で、2人分のランチボックスとドリンクをテーブルに並べる。


「怜、昨日の夜と今日の朝、ちゃんと何か食べた?」


椅子に腰掛けながら、何気ない口調で問いかける。


「……昨日の夜は、もちのすけグミ食べた……」


少しだけ間を置いて返ってきた答えに、閃は一瞬言葉を失い——すぐに小さく笑った。


「あー……ま、いっか!」


深くは追及せず、2人はランチボックスを開け、食事を始めた。


いつもと変わらない様子で食べる怜を見て、閃は内心ほっとしていた。


しばらくして、怜がぽつりと口を開く。


「……気になってるんでしょ?……姉のこと」


「え? あ……うん」


不意を突かれ、閃は少し戸惑いながらも頷いた。


「……なら、聞いてくれる?」


その一言をきっかけに、怜は静かに、自分の中に溜め込んでいたものを語り始めた。



閃は、怜の話を最後まで遮ることなく、ただ黙って聞いていた。


過去のこと、凛との関係、抱えてきた感情、そして——今も整理しきれていない自身の気持ち。


すべてを聞き終えたあと、怜は小さく息を吐く。


「……長々と、ごめん」


「いや、話してくれてありがとう、怜」


オルフェに来てから初めてだった。


怜が、ここまで自分の内側を誰かに明かしたのは。


これまではずっと、考えないようにしてきた。


触れなければ、揺れないと思っていた。


しかし、凛との再会が、その蓋をこじ開けた。


抑え込んでいた感情は、今にも溢れ出しそうになっていた。


そして何より——怜自身、自分がどうしたいのか分からなくなっていた。


「……私は、自分が何をしたいのかわからない」


その言葉は、静かでありながらも切実だった。


「確かに……難しいね……」


閃もまた、簡単に答えを出せる問いではないと分かっている。


「ねぇ……閃なら、どういう向き合い方する?」


「うーん……」


少し考え込んだあと、閃は慎重に言葉を選ぶ。


「……気持ちの整理がつかないまま会っても、多分余計に拗れると思う。だから、ある程度整理がついてから会う……かな……」


どこか自信なさげではあったが、それでも正直な答えだった。


「そうだよね……私も、そう思う」


怜は小さく頷く。


「ただ……凛は父と同じで、旅先で、いつどうなるか分からないから——」


そこまで言いかけて、怜の表情が変わった。


「……あ」


何かに気づいたように、目を見開く。


「そっか……私、わかった……」


「え?」


閃が覗き込むと、怜はまっすぐ前を見たまま続けた。


「もし凛に何かあって、二度と会えなかったらって思ったら……私は、多分、一生後悔する」


その言葉には、迷いがなかった。


「だから……私は、無意識に凛に会おうとしていたんだ……」


ようやく、自分の行動の理由に辿り着いた瞬間だった。



その日の任務を終え、帰還途中のキャリアの中。


怜のスマカに、一件のメッセージが届く。


——差出人は、凛。


画面を見つめ、内容を読み終えたあと、怜は何も言わず、キャリアの窓の外へと視線を向けた。


流れていく景色の向こうに、何かを探すように。



一方その頃。


航空行きのレールバスの中で、凛もまた窓の外を眺めていた。


そのとき、スマカが小さく鳴る。


表示された名前に、凛は息を呑んだ。


——怜。


怜から返事が来るのは、これが初めてだった。


震える指でメッセージを開く。


読み進めるうちに、ぽたり、ぽたりと涙が画面に落ちた。


凛はそれを拭い、深く息を吸う。


そして、静かに文字を打ち込んだ。


『永遠に愛してる』

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