26 微笑みと理由
今回は真沙斗視点でお送りします!
(あ、そろそろ行った方がいいかな……)
僕は時計を見てそう思い、皆に気づかれないようにこっそり教室を出た。
こういうことをするのは気が引けるけど、事情が事情だし、先生には話してあるから大丈夫だと自分に言い聞かせた。
小さくパタパタと音をたてて廊下を小走りし、生徒会室へと向かった。
生徒会室に着くと同時にチャイムが鳴り響いたので、僕は生徒会室に入った。
するとそこには顔を真っ青にしている愛留奈先輩と、背を向けて顔を見えないようにしている美野原先輩がいた。
僕はそんな二人の間に漂っている雰囲気が気になり、美野原先輩に声をかけた。
「交代の時間なので来ました……って、あれ? 何かありましたか?」
「別になかったぜ? 気のせいじゃねーの?」
「そうですか? ならいいのですが……」
正直あまり納得することはできなかったけど、先輩が言っているのだからきっとそうなのだろう。
僕は美野原先輩が出ていったのを見届けてから、愛留奈先輩に近寄った。
「先輩、大丈夫ですか? 顔が青くなってますが……」
「あ、うん………ごめん、眠いから寝ても良いかな? 折角来てくれたのに、ごめんね」
「いえ、気にしないでください。だから早く元気になってください」
「ありがとう……」
そう言って愛留奈先輩は横になった。しばらくすると寝息が聞こえてきたので少し安堵する。
そう思いながら、僕はさっきの雰囲気のことを考えた。
(美野原先輩は何もなかったって言ってたけど……それじゃあどうして愛留奈先輩はあんなにも顔を青くしてたんだろう? 先輩を疑いたいわけじゃないけど、何かあったとしか思えないんだよなぁ……)
愛留奈先輩は気持ちをあまり面に出さない。そのせいか、皆にはクールビューティーと言われてるけど……。
そんな愛留奈先輩があそこまで取り乱したのだから、むしろ何もなかったという方がおかしいような……。
「むー……とりあえず、お昼ご飯作っとこう、レトルトだけど……」
僕は自分に言い聞かせるようにそう呟き、先輩を起こさないように静かに席を立った。
僕がお昼ご飯を持って席に戻ると、先輩が背もたれに寄りかかるようにして起き上がっていた。
「あれっ、先輩!? もう起き上がっても大丈夫なんですか!?」
「正直まだ気持ち悪いけど……でも、お腹空いたから……」
「あ、じゃあこれ食べてください。さっき温めてきたばかりなので熱いかもしれませんが……」
「あ、ごめんね。ありがとう」
「ふへっ!? あ、い、いえ……」
不意に見せた先輩の笑顔に驚いた僕は、思わず間抜けな声を出してしまった。
そのことにすごく恥ずかしくなってしまった僕は、先輩から目を逸らすようにして俯いた。
すると突然頭の上にふわりと何かが乗り、顔を上げて見ると左上に先輩の腕が見えた。
しばらくして先輩に頭を撫でられていることに気づき、さっきよりも顔を真っ赤にしてしまった。
僕がギュッと目を瞑っていると、先輩がポツリと呟いた。
「大丈夫、笑わないよ。私だって間抜けな声を出したことあるし、他の人だって出したことがある。誰だってあることなんだから、恥ずかしがらなくてもいいんだよ」
その言葉を聞いた瞬間僕は目を見開き、勢いよく顔を上げた。
するとその視線の先には、何度も「大丈夫だよ」と繰り返しながら微笑んでいる愛留奈先輩がいた。
(………やっぱり、愛留奈先輩はすごいなぁ。皆が先輩を好きになるの、わかるような気がする……)
僕はそう思いながら先輩に微笑み、名残惜しくも先輩の手を頭から離した。
次回も真沙斗視点になる…かも?




