25 本と親友と衝撃的な言葉
愛留奈視点で、静悟までの経緯です!
有無を言えなくなった私は、促されるがままにソファーへと寝転がった。
するとやはり体調が悪いのか、一瞬にして眠気に襲われた。
そして私はそのまま目をぎゅっと閉じた。そして次に目を開けた時は目の前に龍次がいた。
それを見た私は呻き声を出しながら起き上がる。そしたら私をそっと支えてくれた。
「おい、大丈夫か? 辛いんだったら、安静にした方がいいぞ」
「大丈夫、です……。さっきよりも、楽だし、それに、先輩だって、授業が……」
「俺のことは気にしなくていい。今は体調をよくすることに専念しろ。皆心配しているんだからな」
「わかり、ました……。すみません……」
「気にするな。わかったなら大人しく寝ていろ」
そう言われ、私は柄でもないのにふにゃりと笑い、そのままソファーへと倒れこんだ。
そして心地よい気分の中、私はそっと目を閉じた。
次に目を開けると、そこには目の前の椅子に座って本を開き、驚愕に目を見開いて本を凝視している龍次がいた。
私は起き上がってソファーに身を委ね、首を傾げながら話しかけた。
「……先輩? どうしたんですか?」
「っ!?」
私に気づいた龍次は大きな音をたてて本を閉じ、今度はこちらを見た。
それを一瞥しながら龍次の読んでいた本に目を向けた。
(それにしても、どうして本を読んでいたんだろう? 確かゲーム内や噂では、本は全く読まなかったはずだけど……)
そう思った私は、本を見ながら龍次に再び話しかけた。
「先輩……あ、その本……。それって確か恋愛小説だったはず……」
「え!? あ、その、これはだなっ! 俺の趣味という訳ではなくてだなっ!」
私が更に首を傾げながら聞くと、龍次は慌てて弁解しようとした。
しかし次の瞬間チャイムが鳴り響き、同時に扉がスパンッと大きな音をたてて開いた。
「愛留奈! 色々な意味で大丈夫!?」
「先輩、愛留奈さんを襲ってないですよね!?」
「心配するのはともかくとして、何でそんな心配してんだよ! そこは何もしてないって信じろよ!」
「あははっ、でも確かに手を出しててもおかしくないよね〜」
「何を言っているんですか。先輩の『ピー!』を奪うのは俺ですから」
「ちょっ、蓮!? 放送禁止用語がかかるようなこと言わないでよ!」
「「……………………」」
ズカズカと室内に入ってきた六人は、まるで打ち合わせでもしていたかのようにスムーズに言葉を順に紡いでいった。
それを見ている私と龍次は、ただ呆然とそんな漫才のような会話を見ていることしかできなかった。
(ていうか、何でチャイムと同時に入ってこれた……? まさかとは思うけど、授業を抜け出したんじゃ……)
だけどそんなことを考えても仕方ないと思った私は、近くに来た香里奈を見ながら龍次と幸宏の会話を聞いていた。
すると龍次は威圧だけで五人を外に出し、室内に私と香里奈を残していなくなった。
すると香里奈が私を見ていたので優しく微笑み、香里奈の頭に手を乗せてぽんぽんと撫でた。
「香里奈、私は大丈夫だよ。だから、そんなに辛そうな顔をしないで」
「で、でも……」
「あ、言っておくけど嘘はついてないよ。本当に大丈夫だから」
「わ、わかった…。あ、でも今はちゃんと寝てて!」
「ちょっ、香里奈――わっ!?」
「きゃぁあっ!」
香里奈は私にきちんと寝るように言いながら手を伸ばしてきたが、運悪く足を滑らせてしまったらしく、私を押し倒すようにしてソファーに倒れこんだ。
ぼふっ
ソファーからそんな音が聞こえた後、私は小さく呻き声を出してしまった。
それを聞いた香里奈は、私のちょうどお腹の部分に乗っているのを思い出したのか、慌てて立ち上がった。
「め、愛留奈ごめんね! 大丈夫!? 悪化してない!?」
「だ、大丈夫……。だけど眠いから寝させて……」
「寝ちゃうの!? 寝てもいいけど死なないでね!?」
「いや、ただ単に眠いだけ、だから………」
私は香里奈の発想に少し呆れながらも、小さく笑って「おやすみ」と言った。
香里奈がそれに「おやすみ」と返したのを聞いて、私は再び夢の中へと戻った。
次に私が目を開けると、椅子には静悟が座っていた。どうやら、もう香里奈とは交代していたようだ。
私がのそのそと起き上がると、少し嫌そうな顔をして聞いてきた。
「起きていいのか?」
「うん、大丈夫……。美野原君、授業は……?」
「あー、さぼり。でも罪悪感持たなくていーよ。授業メンドいし、罪悪感持たれると逆に迷惑だし」
「わかった……。じゃあ謝罪もお礼も言わなくていいよね」
「そうしてくれ。謝罪されても礼言われても迷惑だから」
「わかった……クシュンッ」
私は静悟に返事をしようとして口を開いた瞬間、言葉ではない別の何かが出ることを察知した。
私は慌てて口に手をあててくしゃみをした。
それを見た静悟は無言で立ち上がってソファーに近づき、自分のブレザーを私の肩にかけてくれた。
私が首を傾げて静悟を見ると、呟くように小さく「着てていい」と言ってくれた。
私も小さく「ありがとう」と言ってギュッとブレザーを握る。
(温かいなぁ……)
そう思っといると、静悟が「寒いの苦手だもんな」と言った。
その言葉を聞いた瞬間、私はピタリと動きを止めた。
そのことに混乱しているであろう静悟に、自分でも驚くくらい透き通った声で言った。
「どうして私が……寒いの苦手だってこと、知ってるの?」
今度は、静悟の動きが止まったのがわかった。
私は、親友の香里奈にすら『寒いのが苦手』ということを言っていない。なのにどうして静悟が知っている?
私は考えるのをひとまず止め、静悟を睨みつけながら言った。
「私、今みたいになんでもわかってるっていう態度をされるの、嫌いなの。もしそのつもりで言ったなら――…もう二度としないで」
ブチッ
この言葉の後、静悟の頭の中でなにか切れたような音がした。
すると静悟はさっきまで座っていた椅子に座り直し、私を睨みつけながら喋り始めた。
「『嫌い』? 『つもり』? 『二度としないで』? ふざけてんのかお前。そんな軽い気持ちで言ったとかあり得ねーし。つーか実際、俺はなんでも知ってるし。例えば――」
そこまで言って言葉を止めると、一度深呼吸をして言った。
「――お前の前世とか……なぁ?」
瞬間、一気に空気が凍りついた。
私はサッと顔を青くして驚愕に目を見開き、精一杯震える口から小さく「な、んで……」と呟いた。
それを見た静悟は意地悪気に笑い、背を向けて「さーな」と言った。
すると丁度チャイムが鳴り響き、真沙斗が一人で生徒会室に入ってきた。
「交代の時間なので来ました……って、あれ? 何かありましたか?」
「別になかったぜ? 気のせいじゃねーの?」
「そうですか? ならいいのですが……」
そんな会話を二人がしていたが、今はさっきの言葉しか頭になかった。
するといつの間にか静悟は出ていっており、部屋には私と真沙斗の二人だけになっていた。
「先輩、大丈夫ですか? 顔が青くなってますが……」
「あ、うん………ごめん、眠いから寝てもいいかな? 折角来てくれたのに、ごめんね」
「いえ、気にしないでください。だから早く元気になってください」
「ありがとう……」
私はそう言ってソファーに横になり、さっきのことを考えないようにしながら眠りについた。
次回からもまたコロコロ視点が変わります。




