24 複雑な心情と登場した墓穴
遅くなってすみません。
今回は静悟視点です!
「ぁふ……」
俺は一人、欠伸をしながら生徒会室へと向かっていた。
なぜなら次にあいつ――佐渡山愛留奈を看病するのが俺だからだ。
拓磨とか真沙斗は看病できることに喜んでたが、俺の場合は時間を無駄にするだけだ。もったいねぇ。
(それに、俺は『あの事』をあいつにばれたくねぇ。あいつと俺は似たような境遇にいるからな……。ま、この学園に知ってるやつは誰もいないから、考えても無駄かもしんねーけど)
そう思いながら俺は生徒会室の扉を開け、そのまま中に入って三宅に交代の時間だと伝えようとした。
しかしその肝心な三宅は、佐渡山に覆い被さるようにしてぐっすり眠っていた。
それを見た俺は頭を掻きながらどうするか考えた。
(どうする、起こすか? だけど俺だったら絶対に機嫌を損ねるし、かといってこのまま教室に戻ると拓磨になんか言われるだろーし……)
悩みに悩んだ末、俺は置いてあった椅子に座って様子を見ることにした。
しばらくすると三宅が目を覚まし、焦った表情をしながら「ごめんっ、よろしくね!」と言って生徒会室から出ていった。
最初はその迅速な行動に呆然としていたが、後にここには俺と佐渡山しかいないのだと理解した。
しかし俺は拓磨達とは違う。こいつに興味なんて全くない。時が経つのを黙々と待っていればいいだけだ。
「……………ん……」
そう、待っていればいいのだ。興味なんて全くないのだから。
「………んっ……」
待って、いれば…――
(っ……待てるかぁぁぁぁっ!!)
口に出すのをなんとか我慢し、ばれないように心の中でそう叫んだ。
確かにこいつに興味はない。だけど今まで女子と二人きりになったことなんて一度もないし、俺はこれでも一応思春期真っ盛りの健全な男子なのだ。変な気分になってもおかしくはない。
だけどこいつは拓磨と真沙斗と三宅、それからよくわからないが龍次先輩と蓮にも好かれてる………多分だが。
そんな逆ハーレム状態の佐渡山に手を出したらなにをされるかわからない。へたしたら、生死をさ迷うかもしれない。考えただけでもゾッとする。
(とにかく、こいつに手を出す=命の危険性がある、と考えておこう)
そのことを忘れないために、俺は心の中で何度も何度も繰り返した。
交代する時間まであと少しとなった時、佐渡山が呻き声を出しながら目を覚ました。
ずっと寝ていればよかったのにと思いながら心の中で舌打ちをしつつ、いつも通りの態度で話しかけた。
「起きていいのか?」
「うん、大丈夫……。美野原君、授業は……?」
「あー、さぼり。でも罪悪感持たなくていーよ。授業メンドいし、罪悪感持たれると逆に迷惑だし」
「わかった……。じゃあ謝罪もお礼も言わなくていいよね」
「そうしてくれ。謝罪されても礼言われても迷惑だから」
「わかった……クシュンッ」
佐渡山は俺の言ったことに返事をしようとして口を開いた瞬間、口に手をあててくしゃみをした。
それを見た俺は無言で立ち上がってソファーに近づき、自分のブレザーを佐渡山の肩にかけた。
佐渡山は首を傾げて俺を見たが、俺が小さく「着てていい」と言うと、佐渡山も小さく「ありがとう」と言ってギュッとブレザーを握った。
それを見て可愛いと思ってしまった気持ちを誤魔化すために「寒いの苦手だもんな」と言うと、今度はピタリと動きを止めた。
直後、生徒会室の空気が凍りついた。
俺は訳がわからずに混乱したが、佐渡山はさっきよりも小さく、だけど透き通るような声で言った。
「どうして私が……寒いの苦手だってこと、知ってるの?」
今度は、俺の動きが止まった。
よく考えたら、こいつは『寒いのが苦手』ということを誰にも、おそらく親友の三宅にすら言っていない。
なのにどうして俺がそのことを知っていたのか、確かに疑問がわくだろう。
俺は墓穴を掘ったことに冷や汗をかきながら、どうするかを考えていた。
(まずいな……。もしもこれ以上追及されたらボロが出るかもしれない……。でも、本当のことを話すわけにはいかないし……)
言い訳を必死に考えていると、佐渡山は俺を睨みつけながら言った。
「私、今みたいになんでもわかってるっていう態度をされるの、嫌いなの。もしそのつもりで言ったなら――…もう二度としないで」
ブチッ
頭の中でなにか切れたような音がしたが、そんなの今はどうでもよかった。
俺はさっきまで座っていた椅子に座り直し、佐渡山を睨みつけて喋り始めた。
「『嫌い』? 『つもり』? 『二度としないで』? ふざけてんのかお前。そんな軽い気持ちで言ったとかあり得ねーし。つーか実際、俺はなんでも知ってるし。例えば――」
そこまで言って言葉を止め、一度深呼吸をして言った。
「――お前の前世とか……なぁ?」
さらに空気が凍りついた。
チラリと佐渡山を見ると、顔を青くして驚愕に目を見開き、震える口から小さく「な、んで……」と呟いた。
それを見て意地悪気に笑い、背を向けて「さーな」と言った。
すると丁度チャイムが鳴り響き、真沙斗が一人で生徒会室に入ってきた。
「交代の時間なので来ました……って、あれ? 何かありましたか?」
「別になかったぜ? 気のせいじゃねーの?」
「そうですか? ならいいのですが……」
きっとこの部屋の雰囲気を敏感に感じたんだろう。真沙斗は瞬きをしながら聞いてきた。
しかし俺の言葉を信じることにしたのか、納得がいかないような顔をしながらもそう言った。
俺は佐渡山と真沙斗を一瞥し、生徒会室から出た。そしてそのまま廊下に座り込む。
(あーあ、なに言ってんだ俺は。もしばれたらどーすんだよ、たく……)
俺は心の中で自分を叱り、教室へ戻るために廊下を歩き始めた。
次回は愛留奈視点にする予定です。




