初心者の村…完
壊れかけた世界を構築し直す際、アーサーと神しゃまにとって困ったのは、世界に散らばる前任達に宿っていた神の力だった。
その力は、この世界の人間のマイナス思考に染まり、アーサーと神ちゃまが頑張っても浄化しきれるものではなかった。
だから、世界を構築し直す際に、法則を加えた。
力の魔物化
魔物は侵された力の欠片の化身だ。
それらは倒されることで浄化され、力となって倒した相手に吸収される。
力を集める水晶と、浄化する聖域も各地に作ったが…
清らかすぎるモノは簡単に反転しやすい。
それは前任達が…身をもって、世界に残してしまった法則だった。
夢の中、とうとうある聖域が反転した。
しかし彼はもう、神を宿す身ではない。
時々夢見ることしか出来ない。
それに…聖域はあくまでも魔物討伐浄化システムの補助。
強くて強力な魔物が産まれるということは、それを倒せばそれだけ大きな浄化が望めるということだ。
しかし長くアーサーの築いたシステムが世界を安定させていたせいか、世界は安易に二人目のアーサーを求めてしまったようだ。
アーサーの神しゃまは、彼女に聖域の浄化を求めなかった。
世界が安易によその世界の人に頼る法則を作ってしまっては、やっかいだからだ。
アーサーに似た気質といっても、人は変わる。
だから何度も滅びかけたのだから。
「でも……まさか、初心者の村に一年も落ち着いちゃうなんてな~」
夢の中、少年と暮らして一年…
少し、ある意味大人となった少年が、ヒイラギをそうゆう対象として意識してしまい、一緒の寝床で眠れなくなって……やっとヒイラギが女性であることに気付いて、うろたえていた。
頑張れ、少年
天然誑しな彼女は、自分とは別種類で規格外だった。
結果は分かっているが、過程は大変そうなので、応援せずにはいられない。
猫耳姉妹が連れてくるエルフ…森の王の復活に立ち上がった彼女が、ヒイラギと少年に変化をもたらすだろうか?
ドアをノックされ返事する。
「父さん、夕飯の時間だよ」
「ああ、呼びにきてくれてありがとう、リージ」
元ハイエルフでこの世界に生まれ変わってくれた妻と、自分の子として、この世界に生まれ変わった少年に…アーサーは笑みを浮かべて立ち上がった。
頑張れ、息子よ
この後も色々とありますが、とりあえずこれにて完結です。
初心者の村から出ていかない、異世界トリップ主人公を書いてみたかったので(笑)