ぬがせっ!! ハーレム野球拳 女子校生GP (前編)
入学してから最初の週末、初めての休日が明日に控えている。世間では土曜日も授業があるという学校も増えているらしく、ここもいずれそうなるのかもしれないが、僕が卒業するまでは待っていてほしい。
果てさて、新しいクラスになってから早四日も経ったわけだが……むしろ由良からブシドーを仕掛けられてからまだ四日な事実に驚く。
我が一年二組では少しずつグループが出来つつあった。コミュ力の高そうな女子のグループ、陽気な明らかにスポーツが趣味ですみたいな男子グループ、静かにお喋りをする女子グループ、集まってゲームしている男子グループ。
もう少し時間が経てば住居エリアみたいに分けられそうだ。今の時代には珍しいくらい個性ハッキリしている子が揃っている気がするな。
前の学校ではどうだったかなと記憶を遡りながら、トイレから教室に戻ると目の前の光景を見て溜息が漏れた。自分の席にクラスの女子が座って占拠しているのだ。
またか、と心の中で悪態をつく。最近では休み時間に席を立つと大体こうなっているから困る。それもこれもみんなアイツのせいだ、クラス一の、いや学校一のイケメンと言っても差支えのない見条友則とかいう男が隣の席にいるからだ。
ああ、自分の名前が津雲ではなく野村とかならこんな苦労はしないですんだのに。
見条はバスケ部に所属しているらしく、センターというポジションを勤めているらしい。その肩書きに相応しく高身長でスタイルも良く、その癖やや小顔と女子ウケがあまりにいい。受け答えも柔らかいから尚更オチる子が男女問わずにいるそうな。
昨日も女子と男子から告白されたらしい。
「授業始まるまで待つか」
流石に休み時間が終われば彼女達もいなくなるだろう。あと五分くらいか。
壁際に寄りかかってポケットからPSPを出す。こういう時は携帯ゲームをやるに限る。五分しかないからレベリングでも。
「ごめん、授業始まるまでにトイレ行ってくるよ」
「はーい」「いってらー」「じゃあかいさーん」
おや? と顔を上げると見条が席を立つのが見え、同時に固まっていた女子達が最初期の仮面ライダーの怪人が倒される時みたいに解れていく。
ふと、見条が傍に来て「ごめんね」と耳打ちして去って行った。
なるほど、男でもオチる奴がいる理由がわかった。
放課後、誰もいなくなった教室でポツねんとゲームをしていた。本日は電脳遊戯部は無いそうだ、先程由良がやって来てそう告げた。何でも今日はピアノと茶道のレッスンがあるらしく、授業の予習復習する時間を考えると今日はとても忙しく部活どころではないとの事。あまりにも偉すぎて「が、頑張ってね」と自己嫌悪しながら返すしかなかった。
授業の予習なんてした事ないや。
もののついでに、こういう事もあるから事前に連絡できるように連絡先も交換しようと持ちかけたのだが、鳩が豆鉄砲をくらったみたいな顔したかと思うと、次の瞬間には顔を赤くしながら了承してくれたのだった。
確かに異性から連絡先を交換しようと言われたら「こいつ俺に気があるんじゃね?」と勘ぐるのも仕方ない、次からは気をつけよう。
てなわけでゆっくり一人の時間を謳歌しているのが今。
「よしよし、そろそろ次のステージに行こうかな」
「あっれぇ? ここにもいない? ねぇトモ君見なかった?」
一人の時間終わった。
振り返ると教室の扉付近に隣のクラスの女子が立っていた。メイクもネイルもきめたいかにもなギャル、隣のクラスの子だとわかったのは休み時間の度に席を占拠してくるからだ。
「トモ君? あぁ見条か。部活じゃないの?」
「今日バスケ部休みなんだよね、あーあデートに誘いたかったのに」
お礼も何も無くブツブツと言いながら去って行った。
一人の時間が戻ってきた。
「ふぅ行ったか」
と今度は件の見条が現れた。掃除道具入れのロッカーから。
「なんでそこから!?」
「やあ」と片手を振って爽やかに挨拶を返すが頭に替えのモップが被さってる。
「いつからそこに居たの?」
ガチャガチャと音を立てながらロッカーの中を直して閉じる。
「三十分くらいかな、君が一組の由良さんとラブコメしてるとこらへんから」
「別にラブコメしてないけど、三十分もそこでジッとしてたの? どうかしてるんじゃない?」
「いやぁ照れるなあ」
褒めていない。
「今日はバスケ部無くてね、帰ろうとしたら校門に女子達が固まってて逃げてきたんだ」
「そのまま女子達と帰ればいいのに」
「好いてくれるのは嬉しいけど、まとわりつかれるのはね。それにずっと女子達に囲まれてるから男子の友達がいなくて寂しいんだよ」
「それ聞く人が聞いたらイヤミにしかならないよ」
「だから今日から俺と君は親友だ」
「距離感バグってんのかお前!? 友達すっ飛ばしてんじゃん!」
「まあまあ、それに千歳君とはずっと話してみたかったんだ」
「いきなり下の名前呼びか」
「じゃあチー君」
「やめて」
見条は自分の席に座ってから鞄を開けてガサゴソと中を漁る、そうして出てきたのはなんとPSPだった。
「お、おお??」
「実は俺もゲーム好きでさ、好きなゲームとか興味あるゲームを語りたかったんだ」
「ほ、ほーー、そういう事なら、うん。僕も話してみたいな」
思いがけず同じ趣味をもつとわかって途端に親近感が湧いてくる。そもそもこういうのは興味無いと思っていたから驚きだ。
「何やってたの? 僕は今スパロボやってたんだけど」
「俺はこれ」
PSPを起動してタイトル画面を見せてくる。
「ぬがせっ!! ハーレム野球拳女子校生GP!」
…………
…………
「なんて?」
「ぬがせっ!! ハーレム野球拳女子校生GP!」




