ファンタジスタ明日翔 (前編)
月曜日から始まった中間テストも早くも最終日、有終の美を飾るのはEnglish。日本語で英語!
まだ一年生のテストだ、問題自体はそこまで難しくない。ニアミスにさえ気を付ければそこそこの点数はとれる。
よしここは「ナナミと一緒に学ぼ」でやったところだ。脳内で花澤香菜ボイスのナナミが水着姿で応援してくれている、やはりナナミは可愛い。
しまった、うっかり「ナナミ ベリーキュート」と書いてしまった。しかも日本語で。消し消し。
キーンコーンカーンコーンと昔懐かしいチャイムが鳴り響いてテスト終了が告げられる。学校のチャイムなんてものは今じゃテストの時しか聞かないからしみじみしてしまうなど、そういえば中二の頃に通っていた中学は珍しくチャイム制のままだったな。
学校からチャイムが無くなる事への憂いを感じたり感じなかったりしながら、答案用紙を返却する。
問題の方はタブレットに送られるのに答案の方は未だに紙なのは何故なのだろうか。おそらく我々クソガキッズには到底及びもつかない考えがあるのだろう。知らんけど。
「見条は今回のテストどうだった?」
周りから漂うテスト終わりの緩みきった空気に当てられてつい隣の見条へそのような事を聞いてみた。
「まあ赤点は回避できるんじゃねぇかなって感じ」
一年生一学期中間テストで赤点を予想できるのかお前は。
「へぇ見条は全然ダメなんだぁ」
と煽るように話しかけてきたのは後ろの席の寺崎だ。そこそこ会話するようになってもまだ女子との会話は緊張する。
「そういう寺崎さんはテスト良かったの?」
「ウチをバカにすんなよし、全然わかんなかったわ」
ダメなのかよ。
「逆に千歳は良さそうじゃん」
「自己採点だけど七十〜八十は固いかなと」
口にしてみたが別に自慢できる点数でもないな。
「それはそれとして、お前らは明後日の球技大会はどの種目に出るんだい? 千歳君はバスケだよな」
「勝手に決めないでもらいたい。グラウンドゴルフだ」
「「なにそれ?」」
簡単に説明するとゲートボールの個人競技バージョンみたいなものだ。
これといった技術や道具も必要ないのでお年寄りからお子様まで楽しめるファミリースポーツなのである。専用のクラブでボールを転がして、指定された場所へ運ぶだけなのだが、これがまた奥が深く、語るには時間が三日くらい足りないので割愛させていただく。
というわけで球技大会に出る種目はグラウンドゴルフに決まりだ。集団競技になんて陰キャコミュ障の自分が出られる筈がない、いや出たくない!
個人競技で静かにすごす穏やかな球技大会、楽しみだ。
テストが終わってすぐ、この後のホームルームで出る競技を決め、そして週明け開催。いやはやなんとも過密なスケジュールだこと。
そして迎えたホームルーム。
「ええー、球技大会は必ず個人競技と集団競技から一つずつ参加するように」
「…………」
この時、千歳は青ざめた表情で担任の言葉を脳内で反芻していたという。
「まさかこの僕がサッカーをやる事になろうとは」
個人競技の方は狙い通りグラウンドゴルフをとれたのだが、集団競技の方はなんとサッカーになってしまった。できるのか? ロクに運動してないのに?
「まあまあ俺も一緒に頑張るからさ」
意外な事に見条もまたサッカーを選んだのだ。てっきりバスケを選ぶのかと思っていたのだが「バスケ部がバスケ選んでも面白くないだろ?」との事だった。
テスト最終日なので学校は半日で終わり、いつもより三時間も早い放課後に新鮮さを感じつつカーテンを閉める。
「はぁ、ボール家にあったかなあ」
「ボール? もしかして千歳君、サッカーの練習するの?」
「少しでもやっといた方がいいかなて、あとウイイレもやろうかな」
「偉いねぇ、じゃあそんな千歳君には一緒に必殺シュートを学んでもらおう」
「必殺シュート?」
「あぁ! 漫画でもあるだろ? ドライブシュートや火の玉シュートとか」
「あるけど、まさか再現すると!?」
「無理に決まってるだろ、何言ってるんだ?」
こやつ。
「だが決め技はあるべきなんだ。俺のチームメイトは諦めて試合終了という技をもっているしな」
「それはただの試合放棄だ。あと名言を汚すな」
「というわけで今からサッカーのゲームやりながら出来そうな技を探ってこうよ」
「うーーん無理矢理な導入ぅ。なんのゲームやるのさ」
「ファンタジスタ明日翔」
「聞いた事ないや、制作会社は?」
「紳士ゲームのエースストライカーこと、キュリエイト」
「OK気合いいれるわ」




