ファンタジスタ明日翔 (後編)
ファンタジスタ明日翔を一言で例えるならエッチなキャプテン翼である。人によってはイナズマイレブンだったりするらしいが。
シナリオはプロサッカー選手としての生命を失った主人公が才能溢れる明日翔と出会い、女子サッカーチームのコーチになるところから始まる。
「そしてそのチーム名がゴールデンボールズ」
「キンタマじゃん!」
「キンタマだよ! しかもちゃんとズがついてるから複数形、つまり二つのキンタマを示唆している」
「いやキンタマは普通ニコイチで扱わない?」
「でもキンタマは二個あるわけだし」
等とキンタマ学はここまでにして。
見条はSwitchの画面を出してゴールデンボールズのメンバーを一人ずつ紹介する。
「メインとなるのは五人、サッカーは十一人でやるスポーツだからあと六人いるわけだが、その六人はあくまでモブとしているだけだ」
「なるほどね、キャラデザ可愛いね」
「だろ? 一人目は主人公にしてメインヒロインの明日翔、全能力が高いエースストライカーだ。正直こいつ一人で中盤まで大体なんとかなる」
「キャプテン翼も翼君がそんな感じだったよね、あっちはもう少しシビアだった気がするけど」
「次が明日翔の親友ポジの伊織、この子はミッドフィルダーでコートの中程で活躍する子なんだけど、気付いたら一番ボール保持してるし、なんなら結構シュート打つ」
「サッカーゲーあるあるだあ」
「次が雫、明日翔と同じストライカーで、明日翔が封殺されてる時はこの子がシュートを打つ。以上」
「もうちょっとなんかあるでしょ!?」
「この子はどちらかというとシナリオの方が面白みあって、淡々と喋る割に感情的な可愛い子なんだよ」
段々熱がはいってきている、さては推しだな。
「あと必殺シュート打つ時に出てくるカットインの腋がエロい、二回抜いた」
推しだった。
「次はキャプテンの千颯、ディフェンスが強くて。シナリオではラスボスチームに妹がいるから、その辺の因縁が描かれているんだ、明日翔の次くらいにシナリオで優遇されてるキャラだと思うよ」
「ふーん、でこの子はえっちなの?」
「えっちだよ!」
よし!
「最後はキーパーの朱莉。おっぱいがデカイ!」
「でかいな!」
最早それだけで充分であろう。
「この五人を中心にしてシナリオが展開されるわけよ」
「それはわかった、しかし肝心のえっちなとこ……ゲフンゲフン。ゲーム部分はどうなのかね? ワトソン君」
「中身はキャプテン翼だよホームズ、俯瞰視点でコート全体を見ながらボールを持ってるキャラを操作する、そして相手と接触したらエンカウントしてコマンドバトルが始まるのさ」
「当然エンカウント前にパスしたりシュートしたりもできるのだろうけど、僕達って必殺シュート見たくて今この話してるよね」
「オーケーオーケー、途中のデータあるから実際に試合を見てもらおうかな」
シナリオをスキップして早々に試合開始となる。試合が始まる前にアナウンサーが色々と喋ってくれるのはキャプテン翼オマージュだなと感じる。聞けば放置すると寝るらしい。
キックオフとなりボールがゴールデンボールズへ、早速敵陣へ切り込むようにエースストライカーの明日翔がドリブルでくい込んでいく。
「やはりこの辺の敵は強いな」
「そうなの?」
確かに速やかに包囲されてるように感じる、もしかしたら後半の試合なのか。
「ほいパス」
シュートは通らないと判断したのか後ろへパスをする。パスを受け取ったのは。
「この子なんか肌青くない?」
「キョンシーだからな」
「あぁなるほどキョンシーだからか、ほな仕方ないな」
…………ん?
「いやなんでキョンシー!?」
「意外とパワーがあって突破力あるんだよこのキョンシー、必殺シュートもコスパいいし」
「そういう事聞いてるんじゃないんだよ!」
画面ではキョンシーが必殺シュートを打つところが映された、生憎相手ゴールキーパーが必殺技で受け止めてボールが相手に回った訳だが。
「よしもっかいボールとったぞ」
再びボールを奪い取ってゴールデンボールズの攻撃となる。固まった相手チームを散らすために一度パスを戻す。パスを受け取ったのは。
「アイエエエ! 忍者!? 忍者なんで!?」
「サッカーだぞ! 忍者ぐらいいるだろ!」
そんな馬鹿な。しかもこの忍者、服装だけでいえばむしろ対魔n……。
ちなみに他にも異世界から来た魔王や、アンドロイドもいるそうな。バリエーション豊富だなあ。
「しかし必殺技のバリエーション多いよな」
「まあそこが売りの一つだな、必殺技の度に入るカットインもえっちだし」
「さっきの明日翔と伊織のコンビ技のカットイン良かったよ、潰れおっぱいとか」
ただ一つ残念なところがあり、必殺技のモーションが全く表示されないのでどのような動きをしているのか全くわからないところだ。
これがキャプテン翼なら漫画やアニメで描かれるのでわかるのだが、ファンタジスタ明日翔はそういったメディアミックス展開をしていないためただ強い技くらいしかわからない。
必殺技の参考にやり始めたのに、これでは技名くらいしかアテにできないな。
「試合終了、勝ったぜ」
「おめでとう、ゲーム部分はちゃんとしてるんだね。必殺技もコスト制だから使い時を考えなきゃいけないし、戦略性がある」
「それに試合終了すれば皆仲良し、ほら見ろ、ユニフォーム交換が始まるぞ」
「あぁよく見かけるやつよね、動画で見たことある」
バスケやサッカーの試合終了時に選手達がお互いにユニフォームを交換する光景を見たことがないだろうか。お互いへのリスペクトを込めたスポーツマンシップという精神をわかりやすい見た目で表したもの、思い出も交換するわけだから受け取った選手達もぞんざいには扱わない。
このゲームもちゃんとスポーツマンシップを。
「めっちゃ下着じゃん」
「よく見ろちゃんと上からもう一枚羽織ってる」
それはそうだ、女の子がユニフォーム交換をすれば必然と下着姿になるわけで、ユニフォーム交換という胸熱な儀式を逆手にとったドスケベな天才的な演出だったわけだ。
紳士ゲーム業界のエースストライカーの名は伊達じゃないという事かキュリエイト。
「ちなみにSteam版だと上の一枚も無いから下着だ」
「見条、僕成人したらSteamアカウントを作るのが夢なんだ」
「でけぇ夢だな」
アカウント作ったらエロゲをいっぱいやろうと思ってる。
尚、えっちなのはこのユニフォーム交換だけではない。当然としてシナリオに挟み込まれるCGに置いても同様で、かなり危うい構図のイラストがキャラの数だけ用意されているのだ。
「これエロくね?」
「えぇスパッツでこんな開脚やっていいの? 見条次々」
「焦るなってほら、これとか」
「エッッロ」
「な? やべえよな」
「うん、あと唐突にトイレ行きたくなってきちゃった」
「奇遇だな、俺もだよ」
「じゃあ僕あっちの人気のない技術棟のトイレでシてくるから」
「俺はそこの部室棟のを、この画像もってくか?」
「あ、お願い。あとさっきの伊織ちゃんのCGも」
「オーケーオーケー」
そうして千歳と見条は前屈みで廊下を別れて歩き、別々のトイレへと向かっていくのであった。
数十分後、再び教室で相見える二人の少年の顔付きは、別れる前とは雲泥の差と言えるべき変貌を遂げており、そこにはえっちな女の子に興奮する男子高校生の姿は無かった。
あるのはただ、一ヌキ……もとい一仕事終えて賢者となった男の姿があるのみだ。
「やるかい千歳君、俺達のサッカーを」
「あぁ、僕達で球技大会を制するんだ」
「俺達がファンタジスタだ!」
「僕達がファンタジスタだ!」
決意を新たに二人の賢者はサッカーへの熱意を高めたのであった。
尚、後日行われた球技大会のサッカーはボロ負けした。




