ファイナルファイト (後編)
暴力集団マッドギアにより、大西洋に面したメトロシティに平和と秩序は無く、暴力と死が支配していた。
正義に溢れる市長マイク・ハガーはマッドギアと徹底的に争い、マッドギアの勢いが弱まったと思ったその時、ハガーの娘ジェシカが攫われてしまう。
ジェシカを救うため、ハガーと、ジェシカの恋人コーディ、そして友達の忍者ガイはマッドギアへ立ち向かう。
「ところで健全な男子高校生である千歳君には刺激の強いジェシカが捕まってるシーン、海外だと規制されて悲鳴しか聞こえないの知ってる?」
「なんなら日本国内でも家庭用版だと服着せられてるよ、下着姿なのはアーケード版とクラシックコレクションだけ」
「やりますねぇ」
何気にアーケードでファイナルファイトを遊ぶのは初めてだ。特に意味もなくレバーをぐるっと回してみたりする。ふむパッドとは全然操作感が違う。
料金は百円、流石に五十円では遊べないか。財布に入っているのは五〇〇円。つまりコンティニューは四回まで。恥ずかしながらノーコンティニューでクリアした事がない。
四回でいけるだろうか。
「よし、じゃあやろっか千歳君」
と玲花はドンと百円玉のタワーを幾つも置いていく、一つのタワーにつき十枚、それが五個。五千円分だ。
「これが、大人の財力」
「千歳君にも分けてしんぜよう」
「ありがたや」
男子高校生の財力なんてたかが知れてる。
コインを入れてキャラ選択、玲花は宣言通りハガーを迷わず選ぶ。残るはコーディとガイだが、悩みどころだ。
いつもなら、コレクションでプレイする時はハガー以外だとガイを選ぶ事が多いのだが、ガイは機動力が高く素早い攻撃でコンボをキメやすい反面、火力が低めとなっている。またそれ以外にも細かいテクニックが意外とあるので、何気に中級者以上の人向けだ。
大人の財力でコンティニュー回数が増えたとは言え、やはりプライドは大事にしたいのでここは素直に強いコーディでいこう。
「あらガイで行くのかなと思ってたわ」
「アーケードは初めてだから、様子見兼ねてコーディで」
「ハイスコア狙う?」
「いやあ、とりあえずクリアでいいんじゃない? 僕錬金とか成功した事ないし」
「実は私も錬金を成功させた事ない、じゃあ普通にやろうか」
ちなみに錬金とは樽等の破壊オブジェクトを破壊して宝石等のスコア加算アイテムにする小技である。
上手い人はこれを駆使してハイスコアを目指し、かつノーコンティニューでクリアしてしまう。
「ほいほい、肉食べる?」
「あ、欲しい。鉄パイプでたよ」
「とるとる」
流石に二人だからだろうか、サクサク進んでいく。玲香はあまり派手に動くタイプではないらしく、こうして一つの画面に二人並んで肩と肩をぶつけ合わせていてもあまり動きを感じない。
これが詩織だったなら、激しく動いてトントンとぶつけてきたり体重を掛けに来たりしていただろう。
寺崎ならどうだったろう、想像できない。
「あ、そうそう。どさくさ紛れに肘でオッパイ突ついても怒らないよ」
「ぶっ! やらないよ! てああ!! 死んだ!!」
なんて事を言うんだこの人は、言われてからその手があったかと納得してしまったではないか。丁度肘の高さに氷室の胸があるから勢い任せに突つけただろうし、見条ならそうした。
「ソドム前に残機は残したかったのに」
「いやあ男子高校生をからかうのは楽しいなあ」
ケラケラと笑う姿は大変愛らしいのだが、いかんせん動機が動機だ。青春のトキメキよりも先にフツフツとした怒りがくる。
「ふん!」
「あぁ! ちょっと!? せっかくパンチハメしてたのに!!」
パンチハメしてるハガーに向けて思いっきりジャンプキックをかます。それにより一方的に敵集団を殴っていたハガーがあっという間に囲まれてピンチになった。
このゲーム、何気にフレンドリーファイアがあるから侮れない。
「ヤバッ! コンティニューコンティニュー」
コインを投入して復帰。
そして迎えるは二面のボスことソドム。アメフトの様な防具に武者兜を被り刀を二本もって戦う日本被れのアメリカ人。
「僕、実はソドムをノーコンティニューで倒した事ないんだよね」
「ならお姉さんに任せなさい」
ソドムの強さは尋常ではなく、あまりの強さゆえにカプコンのベルトアクションは二面ボスが強いという法則が出来たほど。
だが理不尽てわけではなく、何気に行動パターンがあるので読み切ればノーコンティニューで倒せる。
「負けたわ」
「頼りないお姉さんだ」
あっさり負けた氷室は置いておいて、なるべく縦軸を意識して立ち回りソドムの強力なタックルに備える。
「ダメだ」
善戦はしたと思うが、自分もサクッと倒されてしまった。コインを入れてコンティニュー。二人いたからか、コンティニューは先の一回だけでソドムを倒す事ができた。
いやはやソドムは強い。家に帰ったら練習しよう。
「ちなみに千歳君はストリートファイターはやった事ある?」
「2だけやった事ある」
「ZEROからソドムが登場してて大活躍するんだよ」
「へぇ」
その後、ボーナスステージでなんの罪もない車をボッコボコに破壊して。メトロシティを進んでいく。
酒場の奥にある地下闘技場で戦い、工場で戦い、なんの罪もないガラスを破壊し、湾岸エリアを進んで辿り着いたのはマッドギア首領が潜むアップタウン。
ビルの高層を目指す最終エリアだけあってザコ敵ラッシュが中々キツイ。少しずつ進んで敵を排除しても尚物量が凄い、最早これは無双ゲーと言っても過言ではないのではないだろうか。過言か。
「やっば、コンティニュー」
ここまででコンティニューした回数は三回、手持ちのコインは百円玉一枚のみ。氷室はまだまだ余裕がある。財力とは末恐ろしい。
訪れる最上階、マッドギア首領ベルガーとの戦いだ。
ベルガーは最初車椅子に座っており、ボウガンでチクチクと攻撃してくる。これは横軸を合わせなければ簡単に回避できる上に、飛んでくる矢は殴り落とせる。
ベルガーよりも湧いてくるザコ敵の方が厄介なまである。ベルガーは最終的に車椅子からおりてぴょんぴょんと飛び跳ねながらボウガンを撃ってくるが、これも軸さえ意識してれば対処が可能だ。
とどのつまりラスボスでありながら大した強さではない。
『うわあああああ』
悲鳴を上げながら落ちていくベルガーを見送ってエンドロール。ここでちょっとしたドラマが展開されるのだが割愛しておく。
「さあて、名前はどうしようか」
「AAAでいいよ」
「面白くないなあ」
「えぇ? じゃあ」
別にハイスコア目指してはいなかったのだから気にする事もるまいと思いつつ、せめてもの抵抗で「TNK」と打っておいた。チンコである。
対して氷室が打ったのは。
「SEX!」
「くっだらねぇ!!」
お互い様である。
尚、ハイスコアランキングをみると上位三名は「SEX」だった。同じ事を考える人種が多いこと。
「じゃあ氷室さん、今日はありがとうございました」
「こっちも楽しかったよ、送ってかなくても大丈夫?」
「大丈夫ですよ、てかそもそもヘルメット無かったですよね?」
「忘れてたわ」
手を振り振りして別れを告げて帰路に付く。外はまだ明るく東の空には月が薄らと見えている。今夜は少し冷えるらしいから暖かいもの食べたいな。
そうしてアーケード街を歩き、そして踵を返した。
行くべき場所は先のゲームセンター。たった一枚だけ残った百円玉を握りしめてもう一度あの筐体の前へ。
「脱衣……麻雀……ごくり」
勝てば女の子のエッチな姿が見られる脱衣麻雀、キョロキョロと辺りを見回しても近くに人はいない、時間的に多くの人は晩御飯の時間だろう。
よし、投入だ。
「目指せおっぱい!」
男子高校生たるもの性欲は人並以上にあるわけで、こういったゲームには果敢に挑みたいのだ。ただ一つ問題があるとすれば。
「麻雀のルール全くわからない」
結局一枚も脱がせられずに終わった。




