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ファイナルファイト (前編)

 GWといえば何を思い浮かべるだろうか、そう、ゲームセンターである。

 そんな事はない? いやいやよく考えて欲しい。GWといえば五月頭にある大型連休を指すのはカレンダーを見れば明らかだ。そしてGWはゲームウィークの略称、ならばゲームセンターにいくのが正しいGWの過ごし方ではないだろうか。

 そう考えた僕こと津雲千歳は少ないお小遣いを手に、五年前によく通った街のゲームセンターへと向かったのであった。


「閉店してる」


 既に店は閉じており営業をしていなかった。


「くぅ、久しぶりにゾイドインフィニティで遊べると思ってたのに」


 五年という歳月はかくも無常である。

 しかして口の中はゲームセンターであるがゆえ、このままおめおめ帰るつもりも無い。他のゲームセンターに行こうと思い、デバイスでマップ検索をする。


「一番近いのはここか……うーーん、ここクレーンゲーム専門店だ。えっとじゃあ次は……遠いな」


 マップ通りなら歩いて一時間近くかかる距離にゲームセンターがある。今日は最高気温が十六度と、春も佳境を過ぎ初夏を覗かせる時節としては冬の残滓が感じられる。

 歩いても熱中症の恐れはないだろうが、一応ドリンクを買っておこう。


「それにしても、最近はゲームセンターが少なくなってきたなあ」


 利益率が低いからとか利用客が減ったとか、はたまた家庭用ゲームが充実したとかググると色々出てくるが、本当の所は素人の自分でもわからない。

 平成の時代は、昭和の頃は活気があったものじゃと嘆いてみるが生まれる前の時代なので無意味だ。


「ん? 氷室さん?」


 コンビニの前を通りかかった時、ちょうどバイクを停めてメットを外した氷室玲花を見かけた。ボディにピタッと張り付くライディングパンツがスラリと伸びた美脚を強調しておりうら若き男子高校生にはやや刺激が強い。

 上は白のライダージャケットで、身体のラインが出ないタイプ。だが知っている、彼女はかなり「ある」人だ。

 氷室は祖父が経営しているジョイゲームの常連である。

 祖父との付き合いは長く、十年の付き合いになるのだとか。千歳とは店で会うと少し挨拶する程度なのでそこまで仲が良いとは言えないが、顔見知り程度には知っている。

 仕事は由良家の使用人をしているらしい。


「お休みかな、挨拶しなくてもいいか」


 と見なかった事にしてコンビニを素通りしようとしたら。不意に肩をがっと捕まれた。玲花だ。


「ちょっと少年、アタシの事無視したでしょ」

「どうも氷室さん、こんにちは。無視とかしてませんて、まあ話しかけなくてもいっかって思っただけで」

「いやそれ普通に傷つくからね。そこは嘘でも気付かなかったって言っときなさい」

「すみません氷室さんだと気付かなかったんです」

「もう遅いわ」


 せっかくなのでそのまま一緒にコンビニでお買い物。


「氷室さんもこれからゲーセンに?」

「そ、いい穴場があるんだよねぇ」

「へぇ、格ゲーが盛んとか?」

「この街で格ゲーが盛んなゲーセンは駅近のとこだよ、アタシが今から行くところはレトロアーケードが充実したゲーセン」

「お供してもよろしいですか?」

「うむ、付いてくるが良い」


 聞くところによるとすぐ近くらしい。バイクにタンデムしようかと提案してくれたが、生憎メットを一つしか用意していなかったので断念した。こちらとしても美人の腰に手を回すのは心臓に悪いので助かる。

 マップにピンを刺して貰ったので、一人で行くことに。氷室は先に行って駐輪場に停めてくる。


「ここか」


 マップの通りならここだ。看板の文字は掠れて読めない。店名は不明だ……本当にここか?


「ごめんごめんお待たせ」

「あ、氷室さん。ここですか?」


 後ろ手に指さす場所は薄暗い店、入口は地下にあるようで階段を降りていく事になる。


「そうここ、地下のゲームセンター。略して地下セン」

「まんまじゃん!」


 まあまあと流されながら地下へ、何やら怪しい雰囲気の扉を開けて中に入れば。


「お、おおー!」


 耳が痛くなる程のピコピコ音、見渡す限り古い筐体が肩を並べている。

 あそこにあるのはストリートファイターIIの筐体だ、その隣は月華の剣士か。餓狼伝説もヴァンパイアもある。格ゲー以外だと、テトリスに源平討魔伝、ワンダーモモにベラボーマン。

 あれはまさか電車でGO!? バーチャロンもある。ミュータントタートルズってアーケードゲームあったんだ。それにあれは、まさか。


「脱衣麻雀……ごくり」

「こらこら青少年はまだ早い」

「ご無体な!!」


 それはそれとして。


「ここはなんですか、天国ですか?」

「有り体にいえばレトロアーケード専門店てところ、意外と探せばあるのよね」


 需要があるからか、来店客も相当数見かける。これまた意外なのだが、客層は中年以上に偏ってるのかと思いきや、なんと若年層の方が多いらしく、中には幼い子供を連れて遊びに来る親もいるのだとか。


「ちょっと感動してる、日本もまだ捨てたもんじゃないなって」

「こんな事で感動してもねぇ、せっかくだから一緒に遊ばない?」

「いいですね、何やります?」

「あれとかどう?」


 と指さすのはファイナルファイト。カプコンから出たアーケードゲームであり、ベルトスクロールアクションゲームの礎を築いた名作だ。


「やりましょ」

「誰使う?」

「せーので同時に言おう!」


 ファイナルファイトの使用キャラは三体、バランスが良く初心者向けのコーディー、同じく初心者向けだが知識が必要なガイ、ムキムキのハガー。

 選ぶのは当然。


「「ハガー!」」

「……」

「……」


 被った。


「「最初はグー! ジャンケンホイ!」」

「負けたァ!!」

「やったアタシの勝ちぃ!!」


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