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Another Century's Episode (後編)

 ACEの物語はノインから始まる。

 シナリオの冒頭、それは地球へ降下する難民船団を次々に破壊していくラー・カイラムの映像だった。ラー・カイラムが斯くも非道な事をしており、世間は彼等を極悪非道なテロリストとする。

 何故このような事になったかとノインが語り、数ヶ月前へと遡るのである。


「ふむふむ、ラアカイラムてめっちゃ悪い奴らなんだね、これも何かの作品なんだよね、敵なの?」


 そういえば寺崎は宇宙世紀ガンダムを観たことがないんだったか、ならあえて黙っていた方が楽しめるかもしれないな。


「いえ! ラー・カイラムはむしろみか……」

「ちょおっーーと!」


 ネタばらししようとする詩織の口を慌てて手で塞ぎ、顔を寄せる。


「わわ、近いですよぉ」


 途端に耳まで真っ赤にした彼女にしか聞こえないようヒソヒソと話し掛ける。


「寺崎さんは多分ダンバイン以外は観てないから、ほぼミリしらの初見プレイを見られるんだよ、余計な事はなるべく言わないようにしないと」

「は、はい……あの、そろそろ離れてくれないともたないかもです」

「え? あ、ごめん」


 言われて初めてようやく自分が大胆な行動をとっていたことに気付く、心臓が早鐘を打っているのを悟られないよう努めて平静を装い、ゆっくり離れた。詩織が何故顔を赤くしたのかわかっていなかったが、なるほど確かに異性と急接近すればこうもなろう。

 異性慣れしてないのはお互い様ゆえいかんともしがたい。

 そんなやり取りしてる間にも寺崎はチュートリアルを始めている。


「ええと、まずダッシュは×ボタンで、攻撃は□ボタン。距離で遠距離と近距離が変わるんだ」

「バーチャロンと同じで距離によって攻撃が変わるんだよ。そいや発売時期的にもまだバーチャロンが盛り上がってた時か、案外開発の時に意識してたのかもしれないね」

「ふぅん、バーチャロンは名前だけ聞いた事あるなあ。帰ったらお兄ちゃんに聞いてみよ…………とと、これ操作難しいね、攻撃当てるためにはこまめに旋回しないとだし、ダッシュし続けてもターゲット見失うし」


 ACEの一作目は確かに操作性に難がある。良く言えば癖があってやりごたえがあるのだが、ライトプレイヤー的には難しい。かく言う自分もそのクチで、慣れるまで随分イライラしたものだ。


「え、なんか出てきた」


 チュートリアルが終われば当然実戦、唐突に紫のロボットがやってきて部下に相手しておけと言って去って行く。


「ギャブレーじゃん、エルガイムが先に出るんだな」

「見条てエルガイム観たことあるんだ」

「義務教育だー、て親父に言われて見せられたんだよな」

「へぇ」

「よーし終わり!」


 あっという間に片付けてミッションをクリアしてしまった。あまりちゃんと見れていなかったが、気の所為か動きがめちゃくちゃ良かったような気がする。

 気がするではなく、ほんとに動きが良いと発覚するのは次のミッションで。


「よーし終わり!」


 と先程と同じセリフを残して二つ目のミッションもさくっとクリアしてしまう、しかもしれっとシークレットミッションも達成して。


「ていうかラアカイラムて味方だったの!? でもこいつらが難民船団を攻撃するんだよね、じゃあ後々裏切るってこと?」


 なんとまあ新鮮な反応。このゲームをプレイする人は大体宇宙世紀ガンダムを履修してるか、何かしらのゲームとかで触れて最低限の知識を得ているかしているので、ここまで何も知らない初見の反応はとてもニヤニヤできて気持ちいい、ずっと見てたい。寺崎のお兄ちゃんと弟が羨ましい、今から代わってもらえないかな。

 等と自分でも気持ち悪い事を考えながらプレイを見ていく。

 寺崎のプレイングスキルは相当に高く、初見プレイでありながら次々とミッションでエース評価、しかも難易度パイロット(他なゲームでいうノーマル難易度)で取っていく、また全部ではないが今のところ半分くらいシークレットミッションも達成してるので観察眼もある。

 初期機体のゲシュペンストでここまでやれるとは驚きである。


「もしかして寺崎さんてゲームめちゃくちゃ上手くないですか? わ、私より上手いかも」

「安心して、確実に由良さんよりは上手いよ」

「なにをー!」

「なんかこうやって見てると俺もやりたくなってきたなあ」

「見条はPS2持ってるの?」

「親父が持ってたと思う」

「因みにうちの店でアナザーセンチュリーズエピソードは五百円で売ってるよ」

「てめぇ、買うわ」

「あ、あたしも」

「私も私も!」

「毎度ありぃ」


 こうして実家のお店に貢献する。我ながら、なんて出来た孫だろう。

 ふと窓の外を見ればすっかり夜の帳というものが空を埋めつくしていた。時計を見れば十九時すぎ、そろそろ解散した方がいい。


「もう夜も更けたしここで終わろうか、そのメモリーカードは持っていってもいいよ」

「ありがと、じゃあこれも買ってくよ」


 別にあげるつもりだったが、本人が買うと言っているのだから尊重しよう。売上にもなる。

 一旦お店に戻り、三人がそれぞれソフトを買ってから店を出ていった。在庫があるのか気になったが、丁度三本だけ残っていたらしく、在庫が吐けたとおじいちゃんも喜んでいた。

 

 

 数日後、三人ともゲームをクリアしたというので、アナザーセンチュリーズエピソード対戦会なるものを電脳遊戯部で開く事となり、ただ今決勝戦が始まろうとしていた。


「ふふ、やはり寺崎さんが勝ち上がってきましたね!」

「ミオでいいよ、あたしもしおっちて呼ぶから」

「しおっち!? 新しいですね」


 そう、決勝に上がったのは寺崎ミオと由良詩織の二人。男二人は無惨にも敗北したのである。

 いや待ってほしい、言い訳をさせて欲しい。僕が負けたのはブランクのせいだ。アナザーセンチュリーズエピソードをプレイしたのは小学六年生以来であるからして、約三年のブランクもある。

 だから負けるのは致し方ないのだ、致し方ない。ないのだが、それはそれとして負けたのは素直に悔しい。やはり使いやすいネリーブレンで行くべきだったかもしれない。ちなみに詩織に負けた。


「おかしいんだよ、寺崎強すぎんだよ。なんでゲシュペンストであんな強いんだよ」


 見条もゲームクリアした手前、動きは良かったのだが、それ以上に寺崎が強かった。彼女が使うのは初期機体であり最弱機体とも言われるゲシュペンスト、確かに装甲も高めでスペックだけなら扱い易いが、武装が貧弱で近接の射程も短い。

 シナリオモードなら改造で短所もある程度補えるが、対戦モードでは初期スペックで統一される。

 それなのにバカ強い。


「それじゃ勝負ですよミオさん」

「OK、しおっち」


 寺崎が選ぶのは当然ゲシュペンスト。後に聞いたところではゲシュペンストをえらく気に入ったらしく、弟からゲシュペンストのプラモデルを貰って作ってるそうだ。

 対して詩織の選ぶ機体は。


「オージです!」

「「なにぃ!?」」


 思わず見条と声がハモる。

 オージは今作最強の機体、その強みはなんと言っても高威力のバスターランチャーを移動しながらチャージして放てること。これがあればエース評価もシークレットミッション達成もサクサクラクラクなまである。それだけ強い、そして入手難度も高い。


「なんて奴だ、ゲシュペンストにオージでいくなんて」

「勝つためには手段を選ばないっていうんですか!」

「ブシドーブレードの時、容赦なく斬り捨ててきた千歳君に言われたくありませんけどね!!」


 ぐうの音も出ない。

 そして。

 

 

「いえぇーい! 勝利ー!」

「負けましたわぁ!!」


 寺崎ミオの圧勝であった。

 

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