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Another Century's Episode (中編)

 道すがら、詩織は見条と寺崎へ自己紹介を済ませる。


「というわけでして、私と千歳君はただならぬ関係性を築いているのですよ」

「そうなのかい? 千歳君」

「いや、ただの関係だよ」


 家に着いた、店は開店しているがお客さんはいないようだ。既に夕方だが、店先に置いてある看板は灯りが着いていない、故障したか蛍光灯が切れたか。

 寺崎がまじまじとその看板を見つめていた。店の人間としては故障してる看板をじっくり見られると恥ずかしいものがあるのだが、当然そのような事を彼女が思う訳もなく。


「ジョイゲーム」


 寺崎がゆっくり噛み締めるように店名を読み上げた。

 少し前までは個人経営の店だったのだが、一昨年に買収され、ゲーム販売を全国展開するジョイゲームの系列店となった背景がある。

 誘ったのは自分だが、こうしてクラスメイトに自分のお店を紹介するのは気恥しいものがある。気にしないフリをして扉を開いた。

 カランと古びた鈴が乾いた音を立てた。

 遅れて「いらっしゃい」としゃがれた声がカウンターから聞こえてきた。


「爺ちゃんただいまー」

「なんじゃ千歳か、そちらは…………ほう、孫が女を連れてきおったわい。やるのう」


 カウンター奥の棚から初老の男性が出てくる。まだ六十にもなっておらず、お爺さんと言う割には少し若すぎる見た目だった。髪はまだフサフサしているが白髪が半分を占めていた。


「いやそんなんじゃないから」

「そうなんです、私はもう身も心も千歳君のモノになってしまって」

「さっきからなんで由良さんは僕と既成事実を作ろうとしてるの!?」

「乙女の口から言わせないでくださいよ、きゃっ」

「ていうか爺ちゃんも由良さんの事は知ってるでしょ! 常連なんだから!」


 これは知り合って間もなく知った事だが、詩織は週一でここへ立ち寄るのだそうだ。その際にゲームを買ったり攻略本を買ったり、または攻略情報を聞いたりしているという。

 話を聞いた時はまるで平成初期のゲーマーみたいだと思った。

 

 

 三人のやり取りを蚊帳の外から見ていた見条と寺崎は、お互いにしか聞こえない程度の声量でこそっと耳打ちする。


「なあ寺崎、同じ女として由良さんはガチだと思うか?」

「ウチとしてはガチだと思う、そっちは? 同じ男として千歳はガチだと思う?」

「いやあれはガチじゃないな、興味はありそうだが。だからまだ寺崎にもワンチャンあるぜ」

「なんでウチに振るん」

「違うのか?」

「うん、今のところ」

 

 

 カウンター横の勝手口から住居スペースに入る事ができる。

 靴を脱いで上がり廊下を進む、右を見れば玄関があるのだが、大体いつも店から出入りしているため千歳はここを使う事があまり無い。

 居間に四人が集まり、千歳がPS2とアナザーセンチュリーズエピソードをセットした。

 寺崎が設置されているTVを見て少し驚いた様子を見せた。


「大きなテレビだね、こんな箱みたいなテレビ初めて見た」

「ブラウン管テレビだよ、昔は今みたいな薄いやつじゃなくてこんなデカイTV使ってたんだよね、確か仕組みも結構違ってたんだけど、どんなだったかな」


 お爺ちゃんから聞いた事があるのだが、どうにも思い出せない。


「電子銃から発射されたビームを偏向コイルで曲げながらRGB蛍光体にぶつけて色をだして、画面に描写してるんですよね、簡単に言えば、フラスコの入口から筆ペン突っ込んで底に絵を高速で描いてる感じです」


 詩織がざっくりとまとめてくれたが、確かにそのような話をお爺ちゃんから聞いた覚えはあるが、改めて聞いてもやはりイメージが湧かない。

 それは寺崎も見条も同様なようで、ピンと来ていないようだ。


「まあブラウン管テレビなんて僕達が生まれる前の物だから、知らなくても仕方ないよ。うん」


 強引に締めておいた。


「でもなんでブラウン管テレビを使うの? PS2の三色端子って薄い方には無いの?」

「ああー、最近のは三色端子が無い奴の方が多いよな、一応変換コンバーター使えばいけるけど」

「そうなんですよ、今ってレトロハードやるハードルが、本体を買う以外でも高くて」

「というわけで我が家では三色端子使うハードは大体このブラウン管テレビなんだよ、それにPS2までのゲームハードはむしろブラウン管テレビでやった方が映像が綺麗に見えたりするからね」

「そうなんだ、それはまたなんで」

「ざっくり言えばブラウン管テレビ前提の画面作りだからなんだけど、説明は今度で!」


 思えばブラウン管テレビの話題だけで随分時間を使ってしまった。

 本題であるアナザーセンチュリーズエピソードのディスクを入れて本体を起動、メモリーカードは空っぽの新しいのを差し込んでおく。

 

 


 アナザーセンチュリーズエピソード(略称はACE)とは二〇〇五年に発売されたロボットアクションゲーム、制作は後にダークソウルやエルデンリングなどの死にゲーで一世を風靡するフロム・ソフトウェア。

 様々なロボットアニメの機体を操作してミッションをクリアしていくクロスオーバー作品であり、まさにアクションゲーム版スーパーロボット大戦なのである。

 今となっては、いや今も昔も夢のゲームといえる。


「アナザーセンチュリーズエピソードといえばやはりOPは外せないよね!」

「俺もACEはやった事ないけどこのOPは見た事あるんだよな」

「へぇ、CGなんだね」

「当時としてはオーパーツ気味なクオリティのCG……もとい実写なんですよね」

「え?」


 寺崎が詩織の零した一言で頭に疑問符を浮かべた。状況を理解した千歳と見条はここぞとばかりに乗っかり始める。


「そうそう、フロムってすぐ手抜きで実写使うんだよね」

「え? え?」

「ここのドラグナーが発艦するシーン、わざわざ自衛隊を出動させたらしいぜ」

「え! そうなんですか、私てっきりこれもフロムの社員が自腹でやったのかと」

「序盤のダンバインやブラックサレナが飛んでるとこも自社の敷地らしいよね」


 もちろんこれはよく言われるフロムネタと言われるやり取りなのだが、そういうお約束を知らない寺崎はただただ頭のおかしな人を見る目で三人を見つめていた。

 OPは既に終わっている。

 

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