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Another Century's Episode (前編)

 明日からゴールデンウィークである。ゴールドなウィークなのである。

 社会人であれば昭和の日の翌日から憲法記念日まで有休をとり、我らが学生達は入学早々に訪れる自由な一週間をどう使うのかとワイワイ歓談していた。


「見条はさ、やっぱ連休はバスケなの?」


 HRも終わってすぐ、千歳は隣の見条友則へそう尋ねる。

 ちなみに千歳自身は見条がどう過ごそうと興味は無く、また世間話のつもりで話題を振った訳でもない。これは事前に見条から「女の子達から遊びに誘われるから断るために協力してくれ」と頼まれ渋々応じたまでの事。


 傍から聞いたら「なんだこの自惚れ野郎」と思いたくなるが、実際この見条友則という男は入学してから、いや噂によれば中学の頃からずっとモテ続けてきている。現に今も見条を誘おうとして何人かの女子がソワソワとこちらの様子を伺っていた。

 そんな光景を一瞥してから、見条は廊下まで聞こえそうなくらいわざと大きな声をあげて。


「連休だからな、朝から晩までみっちりバスケの練習をするつもりだ」と答えた。


 これだけで何人かの女子は肩を落として帰り支度をするのだから部活効果って凄い。残っているのは諦めの悪い子か先の話が聞こえなかった子だけだ。


「さっすが、入部から一ヶ月でレギュラーになるだけはあるね」

「いやいや、あくまでレギュラー候補ってだけ。いくら俺が強くてもバスケは団体競技だ、連携がとれないと勝つことはできないんだって」

「ならこの連休は先輩達や同輩と連携の練習をする『大事な』時期なんだね」

「ああ」


 わざと大きな声でその部分を強調する事で、連休中の練習にどれだけ気合い入ってるかを伝える。これでまた何人か帰った。

 残ってるのはほんの数人だ、これだけなら後はもう自分で何とかしてもらいたい。見条の方もそのつもりらしく、会話はそこで途切れた。

 さて、それでは誰かが話し掛けて来たタイミングで帰るとするか。


「あのさ」


 そら来た、後はお若い人達で盛り上がってもらって。自分は帰ろう。

 千歳はスクエアリュックを手に取って席を立った。


「いや無視して帰ろうとすんなし」


 後ろから肩を掴まれて椅子に押し戻された。


「あ、僕か」

「寺崎じゃん、チッス」

「よう見条、千歳とちょっといい?」

「いいぞ、てかいつの間に名前で呼び合う仲まで発展したんだよ」

「僕は寺崎さん呼びだよ」

「スパロボの攻略とか聞いてたらいつの間にか、そうだこれこないだ借りたUX」


 手渡されたのは丁度先週貸したスパロボUXだった。


「どうだった?」

「面白かった、二週しちゃった」

「ほほー、やりますね」

「やりながらダンバインとリーンの翼を観たんだけどさ、スパロボてめちゃくちゃ人が生き残るじゃんて驚いたよね」

「すげぇ、ダンバイン全部見たんだ。古い作品だから慣れてないと見るの辛いでしょ」

「まあ確かに、休み休み見て、所々お兄ちゃんと弟に説明されながら見たよ」


 お兄ちゃんと弟、布教できて楽しかっただろうな。

 なんとなく想像して微笑ましくなった。


「あれバーンが仲間になったの凄いよね、リーンの翼との絡みもあるし。トッドが生き残るスパロボはあるの?」

「あるよ」

「それはやってみたい、トッドが一番好きになれたから。あとデモンベインのとらぺ、とらぺどなんだっけ」

「トラペゾヘドロン?」

「そう、それ! リベルレギスのトラペゾヘドロンにデモンベインのトラペゾヘドロンで返したらフリーズしたんだけど、あれのせいでやり直しになっちゃった」

「仕様だから」

「え?」

「それはバグじゃなくて原作再現だから」

「でもフリーズ」

「いい再現だったよね」


 うんうんと頷いて無理矢理通した。顔を上げると見条もまた同様に頷いていた。

 これ以上は無駄と悟ったか、寺崎は「まあいいや」と締めてから、本題と言わんばかりにグイッと千歳へ顔を寄せる。

 急な距離感に驚いて心臓が跳ねる。


「あのさ、千歳ん家ってゲームショップなんだよね」

「うん……」

「これから家に寄っていい?」

「いいよ」


 クラスの女子から家に行ってもいいかと問われ、はいと答える。これだけであれば青春の香りがするのだが実態は客としてである。


「俺だけハブるなよ、俺も行くぞ! 部活も無いしな」

「いいよ、買ってけ買ってけ。寺崎さんは何か探してる?」

「ロボに興味あるからロボゲーがいいな、お兄ちゃんからロボゲーやるならPS2がいいて言ってPS2借りたから、PS2のゲームで」

「ほほお、選択肢が多いなあ」


 何せPS2には名作が多すぎる、スパロボGジェネもそうだが、ガンダムだけでも群雄割拠している。ボトムズやラーゼフォンのようなキャラゲーも捨てがたい。

 ここはあえてアーマードコアやメックスミスを出してもいいか、あらゆるロボゲーが頭の中をめまぐるしく駆け回っていく中、これだと決めれるものは無い。


「スパロボみたいに色んなロボが使えるアクションゲームとかあるかな」

「となると選択肢は一つだけだね、アナザーセンチュリーズエピソード」

「それってどんなゲーム?」

「ずばりスパロボでアクションゲームなのだよワトソン君」

「寺崎ミオだよ、好きなの? ホームズ」

「うん好き。じゃあ行こうか」


 目的が決まればあとは購入するのみ、三人は揃って鞄を取って席を立ち、そして。


「ちょおっっと待ってくださぁい!」


 と元気ハツラツな声で由良詩織が足止めをしてきた。

 いつの間に来たんだろうか。


「お待たせしました由良詩織です、私も千歳さんのお家に行きますよ」


 別に待ってはいない。

 

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