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スーパーロボット大戦UX (前編)

「中学の時からずっと好きです! 付き合ってください」


 四月の半ばを過ぎたある晴れた日の昼休み、園芸部が手がけた見事なネモフィラの青い花弁が咲き誇る花壇にて、隣のクラスの女の子から告白された。

 見条友則が。


「ごめん、気持ちは嬉しいけど応えられない」


 なんと即答である。しかも慣れた口調で柔らかく返しているあたり場数を踏んでいる事がよくわかる。


「うん、わかった……じゃあまた今度告白するね!」


 笑顔でその言葉を残した後、彼女は手を振りながら校舎へと戻って行った。

 この女、強い。


「ふぅ……で、千歳君はいつまで隠れてるつもりだい?」

「バレてたか」


 名前を呼ばれた千歳は、花壇の影からニョキっと生えるように顔をだした。


「覗き見とはいい趣味してるな、それともそういう性癖かな?」

「性癖は否定しないけど、ここでネモフィラを見てたら見条達が来て告白始まったから隠れたんだよ」

「それは悪い事したな、まさか千歳が花を好きとは思わなかったよ」

「結構お花好きだよ、まああんま詳しくないし、ガーデニングやった事ないから見るだけだけど」


 パシャリとネモフィラをスマホで一枚撮ってから、二人して教室へと戻る。


「にしても告白の場面なんて初めて見たよ、いつもこうなの?」

「大体月二ぐらいで告白されてるな、ほとんどはLINEで、今みたいな直接なのは珍しいわ。あと入学式とか文化祭前、夏休み前とクリスマス頃にはほぼ毎日になる」

「羨ましい通り越して大変だな、そんなに告白されてるのに誰とも付き合わないのか?」

「二回付き合った事あるけど長続きしなかったな、逆に女の子へのハードル上がってるまである」

「ふぅ~ん、そんなもんなんだ」

「いっそお前が女だったらいいのにな、そしたら俺から告白するわ」

「やめろよ気持ち悪い」


 その時、聞き耳立てていた女子達が一斉にギロッと千歳を睨みつけたのだが、生憎本人達はその事に気付く事もなく、ただ要注意人物として「津雲千歳」の名前が学校中の女子の間で広まっていっただけだった。

 ただそれだけの話。

 

 

 

 六時間目は急遽自習となった。何やら担当の教諭が体調を崩したらしく早退したらしい。

 突然の自由時間に沸き立つ我がクラスではあったが、その教諭は教育に真面目な先生であるらしく、早退する前に自習用の課題を用意していたのであった。

 結構な量の課題を見て沸き立ったクラス一同も、一斉にゲンナリしたのはいうまでもない。


「よし、終わり」


 最後の問題を終えて、課題をアプリで送信して一息つく。

 時計を見るとまだ三十分も時間がある。周りを見ると既に終わっている生徒がチラホラ見受けられる。隣の見条はといえば、課題の映されたタブレットを前に頭を唸らせている。

 さてこの余った時間をどうするか、ゲームする。

 ポケットから3DSを取り出してカパッと開く。イヤホンを着けてゲームを始める。

 始めに「UX」が出てきて「スーパーロボット大戦」が左に勢いよく付いてくるタイトル画面を抜けて続きから。


「そいや前回ランカスレイヤーされたんだった」


 マクロスFの再現シナリオで忍者戦士飛影によって容赦なくランカをスレイされてしまったのだ。二週目プレイなのにその事を忘れてまた繰り返してしまった。

 これは紛れもなくワザマエ。ゴウランガ、ニンジャは時としてマヤカシを操るのだ。前回の失敗をせぬよう配置を考えて速やかに敵を処理する、今度はニンジャに負けない。

 スパロボといえば作品を重ねる毎に進化する戦闘アニメーションは語り草の一つとなっており、千歳は基本的にこういった戦闘アニメは飛ばす方であるが、不思議とUXの戦闘アニメは一度も飛ばすことなく二週目を始めている。


「お、フォースインパルスじゃん」


 ビクッと肩が震える。それは後ろの席から聞こえたからだ。だが気のせいという事もある、気付かなかったフリをしてプレイを続けようとした矢先、肩をトントンと指で叩かれ、気のせいではなかったと悟る。

 イヤホンを外して振り返ろうとする寸前、耳元で


「ねぇそれガンダムSEED DESTINYのゲーム?」


 と囁かれた。少しハスキーながらも聞き取りやすい声、横を見れば彼女のクリっとした目がこちらを至近距離で見ていた。

 近い!


「あ、いや……その、ちがくて」


 しどろもどろになるのも仕方がない。後ろの席にいるのは寺崎ミオというギャルだ。あまり派手すぎず、メイクはナチュラルにネイルも主張は控えめの大人しめのギャル。

 二週間近く前の席にいたが、休み時間は友達とダベって過ごし、あまりハイテンションに騒ぐ事もない至って普通の性格のように思えた。


「なに照れてんの? ウケる」


 ケラケラと静かに笑う彼女は不覚にも可愛いと思ってしまった。至近距離なためかふんわりと香水の香りもする。


「香水?」

「あ、わかる? オードブルファンのホワイトリリー」

「銘柄とかは流石にわかんない、でもいい匂いだと思う」

「ありがと、でこれ何のゲーム? ガンダムかと思ったらマクロスもいるね」

「わかるんだ、ガンダムとマクロス」

「弟がロボットモノ好きでよく観るんだよ、ガンダムはSEED以降ならアニメ全部観たよ」


 萌え袖の中から指が二本、ちょこんとVサインをしていた。合わせて彼女自身もニコっと笑う。思っていたよりもノリのいい子らしい。

 それはそれとして近いのは変わらないのでずっと顔が赤いしドキドキするからどうにかしたい。助けを求めて見条の方を見るが。


「くそ、全然わからねぇ」


 まだ課題と格闘していたので邪魔できない。


「あ、これダブルオーじゃん」


 画面を指さす。どうやら知ってる機体を探して喜んでいるらしい。


「他にもファフナーとかデモンベインとかいるよ、これそういうロボットモノを集めて一つの世界観に集めたゲームでね、スーパーロボット大戦ていうんだけど」

 

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