ファイナルファンタジーⅡ (後編)
FF2を始めたのはスターウォーズを見終わってから一眠りした後、正午を過ぎたくらいからだった。
「お、おぉ……色んな所で聞くファイナルファンタジーの曲だ」
「プレリュードだったかな、作品の顔みたいな曲よね」
タイトル画面で流れてくるあの曲にちょっとした感動を覚えて、スタートする。
物語は主人公フリオニール達が帝国兵に襲撃されるところから始まる。
「いきなりバトルですわ! しかも勝てません!」
「ボッコボコだぁ」
詩織は手元において置いた千歳の日記……もとい攻略ノートを開いた。
「えっーと、いきなり負けイベ始まるのって当時だと斬新だった……と書いてありますね」
「あぁー、確かに。それにストーリー重視なゲームもまだ少なかっただろうから尚更新しく感じたかもしれないわねぇ」
それからストーリーは進み、フリオニール達は帝国に攻め滅ぼされたフィン王国の王女に助けられる。なんとその王女は反乱軍を指揮しているのだ。
「帝国! 反乱軍! 亡国の王女!」
「「まさにスターウォーズ!」」
あからさまな共通点が続々と出てきてテンションがやたらと上がってしまった。
「この王女ヒルダがレイア姫ですよね」
「という事はやはりフリオニールがルークで、つまりフリオニールとヒルダは姉弟という事ね!」
「その流れでいくとガイさんとマリアがC3-POとR2D2という事になりますかね」
「このゲーム、シナリオの先が見えてきたわね」
「ええ!」
結果的にこの推論は全くの見当違いである事に気付くのは、愚かにも後半に入ってからとなる。
ゲームはまだ続き、いよいよ町を出てワールドマップへ。
広大な大陸、野を超え森を抜けてフィン王国首都を目指す。
「BGMがどこか切なげで否応なしに自分達が不利な状況にいるって思い知らされますね」
「詩織ちゃんのそういう感受性が素直なところ好きよ」
時々戦闘を重ねながらマップを北へ北へと進む。FF2の戦闘はシリーズでもキワモノな部類で、まず何よりレベルの概念がない。
攻撃をすれば攻撃が上がり、ダメージを受ければHPと防御力が上がる。後に発売されたSAGAシリーズに近いシステムなのだ。
また戦闘以外もキワモノで。
「ぎゃぁー!? この敵強すぎですわ!」
「調べたら、ちょっとでもルートを外れると序盤から鬼強なザコ敵とエンカウントするみたい」
「鬼畜ですわ! 無情ですわ! 製作者はドSですわ!」
やり直してもう一度、今度は途中にある湖の湖岸に沿って移動する。詩織はどうやらさっきのがトラウマになったらしく移動がえらく慎重になっていた。
フィンの街に入ると帝国兵がひしめいていた。
「これ、触れたら強制戦闘ですかね」
「あとは目の前通るとか」
「どっちも大丈夫でしたね、思いきって話しかけて見ましょう」
そういう事となり入口付近にいた帝国兵に話しかける。
『きさまら、反乱軍だな』
「へ?」
強制戦闘後、三ターンでキルされました。
「理不尽!」
キャプテンという名の帝国兵、あまりの強さに手も足も出なかった。
やり直して、今度はちゃんと帝国兵からコソコソと逃げ回りながら街を探索してイベントを進める。その後紆余曲折を経て反乱軍入りをし、パーティにミンウという白魔道士が加入した。
「このミンウさんめちゃくちゃステータス高いですよ!」
「覚えてる魔法のアンチを使えば味方のMP上げられそうじゃない?」
「確かに、テレポはダンジョンから帰る魔法ですかね。いっそ戦闘中に敵に使えたら面白そうなのに」
「いやいや、流石にそれは無いでしょ」
できました。即死でした。
「できるんだ」
「驚きです」
シナリオを進めると、ミンウの人となりがわかってきてだんだん好きになってくる。
ミンウはパーティの保護者みたいなポジションで、まだ若いフリオニール達を導いてくれる、更に先のアンチとかでステータス上げたりするなど完全に師匠ポジでもある。
この立ち振る舞い、まさしく。
「オビワンケノービ!」
「ヨーダ!」
「「え?」」
お互い顔を見合せて。
「いや詩織ちゃん、ここはオビワンケノービでしょ」
「いえいえヨーダですよ!」
埒が明かないので。
「では二人という事で」
「決着です」
そういう事になった。
日曜日は生憎朝から稽古があり、夜は授業の予習のためにゲームは中断していた。
休日が開けて月曜日の事、放課後になって詩織は電脳遊戯部の部室で、千歳へFF2を始めた事を告げる。
千歳は一瞬驚いたような表情を見せた後、給湯室で挿れたインスタントの紅茶を飲みながら「どこまで進んだの?」と尋ねた。
「闘技場に入ったところで止まってます!」
「お、じゃあもう折り返してるんだね」
「仲間がどんどん死んでってちょっと辛いですよ」
「まあそういう話だしね。シリーズでも死人が多い方だと思うよ」
「ヨーゼフさん結構好きだったんですよ、あの方のおかげで素手でも戦えると知りましたし」
「魔法使いとかは結局素手が一番良かったりするからなあ」
「そうなんですか?」
「魔法干渉ていうのがあってさ」
「それステータス画面でよく見ます!」
「じゃあピクセルリマスターやってるんだ」
ステータス画面に魔法干渉があるのはピクセルリマスター版だけである。
「はいそうですよ」
「で魔法干渉なんだけど、これが高いと与える魔法ダメージが下がるんだよ」
「なるほどだから魔法干渉」
「最終的に装備品をつけない全裸スタイルが魔法使いてわけ」
「風邪ひきますよ」
「マジレスやめて」
それから夜になり、玲香と共にプレイを再開する。
物語も折り返しになると通常戦闘曲も変化してどこか慌ただしくなる。いかにも後半戦て感じで緊張感も高まってきた。
「アルテマをゲットですわ!」
「最強魔法アルテマ、果たしてどんなものか」
いざ胸を踊らせながら最強魔法アルテマを使って見ると。
「「よっわ」」
弱い、弱すぎる。こんなのが最強魔法だなんて。肩透かしにも程がある、逆に怒りが湧いたので、勢い余って詩織はそのまま千歳へメッセージを送った。
『アルテマが弱すぎなんですけどぉ!』
なんとこれが初メッセージである。こないだのドキドキな甘酸っぱい展開はなんだったのかと、後に玲香は頭を抱えたという。
『アルテマ以外の魔法全部消して、アルテマ含めて残った魔法と武器と盾の習熟度を全部レベルマックスにすると面白いことがおこるよ』
そのメッセージ画面を見つめ、詩織と玲香はお互い見つめ合った後深く頷いた。
レベリングの日々が始まった。ピクセルリマスターに追加されたオートバトル機能を駆使して空き時間に、詩織が学校に行っている間は玲香が仕事中にこっそりオートバトルを設定して、己を高めるための特訓が始まった。
辛く苦しい日々だった、三日で終わったけども。
「終わりました、ついに全てマックスに!」
「一体何が起こるのかしら!」
「せっかくだからラスボスで試しましょうか!」
「ええ!」
流石にレベリングだけのプレイは虚無が来るので、ストーリーも進めながらレベリング作業をこなしていた。おかげで退屈する事はなかったが、ラストダンジョンがなんだか簡単に見えてきた。
おやおや、無謀にも挑戦してくる敵がエンカウントしてきた。
「敵は、デスライダーですか。やれやれ物騒な名前ですね」
「今の私達に恐れるものは無いわ、やっておしまいなさい」
「あいあいさー」
そして、フリオニール達は全滅した。
「なんで!!」
という嘆きの言葉をそのまま千歳へ送り付けた。
『デスライダーは割合ダメージだからHP高いと逆に狩られるよ、先手を取るかブリンクで回避するか、逃げるかしないと』
何とも的確なアドバイス、ここまで具体的に話せるということはそれなりにやり込んでいると玲香は推測した。
もう一度挑戦し、今度はザコ敵にも油断する事なく慎重に進む、一番奥で待ち受けるは本作のラスボス。
いよいよ準備してきたアルテマを発動する時が来た。
「いざ! アルテマ!」
派手なエフェクトと共に大爆発が起こり画面全体がチカチカと光る。光が収まって出てきたダメージは脅威の9999。
「わお」「ひゅー」
それまで使ってきた魔法の威力は大体1000ぐらいだったので一気に十倍近い数字が出てきて変な声が出てしまう。
更にそこへパーティメンバーがそれぞれ最強技を当てれば、あら不思議、ラスボスを2キル、つまり2ターンで倒してしまった。
「「ウボァー」」
ラスボスの有名なセリフを一緒に口ずさんでエンディングを迎える。
「この去っていくフリオニール達を見送る死んでいったかつての仲間達の構図」
「エピソード6のあのシーンですよね、私あそこで泣いちゃったんですよね」
「今も泣いてるね」
「涙腺が弱いので」
FF2、元々は千歳の好みを知りたいから始まったのだが、気付けばこんなにものめり込んでしまっていた。流石は名作と呼ばれるだけの事はある。キワモノのシステムだからこそ夢中になるものがあるのだ。
「早速千歳君にもメッセージを送りましたわ! 習熟度を全てマックスにしてラスボスを2ターンキルしました! 面白かった! ていう内容で」
「なんて返ってくるかしらね」
しばらく待ってから返信が来た。
『ホントに初見で習熟度全部マックスにしたんだ、それやり込み勢のプレイじゃん……こわ』
…………
……
続けて青い顔をしていかにも引いてますみたいなキャラのスタンプが送られてきた。
…………
……
「いや、千歳君が振ったんですけど!」
「いや、お前がやれ言ったんだろ!!」




