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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
九話「康太とDの夏休み」

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接触の申し込み

部屋で話をしながら休んでいると康太の携帯が突如震えだす。


康太にとって見覚えのない番号が表示されたことで、二人はそれがマネージャーからの連絡であるという事を察することができた。


「はいもしもし、八篠です」


『あ・・・えっと・・・八篠康太君?昼間の件だけど・・・今からホテルのロビーで会えるかな?森本と引き合わせたいんだけど』


康太はその言葉を聞いて文に手で合図をする。移動するという合図でもありこれから行動を開始するという意思表示でもあった。


文はそれを理解したのかすぐに立ち上がり準備を始めていた。


「わかりました。今から向かいます。あとマネージャーさんに幾つかお聞きしたいことがあるんですが、構いませんか?」


『え?森本にじゃなくて?』


「えぇ、あなたの方がいろいろと事情を知ってるでしょうから、その時には森本さんは同席しなくても構いません・・・いえむしろ同席しない方がいいでしょうか」


一体自分に何を確認しようというのか。そのことを聞き返そうとした瞬間彼は康太たちが自分たちの上司のさらに上である奏と個人的につながりがあるという事を思い出す。


もしかしたら自分に聞くというのは会社の内容に関することなのだろうかと康太の言葉を深読みしたのだ。


もしかしたら個人的に見ることができない部分をこうして関係者ではない第三者を使って視察しているのではないかという風に感じ取ったのである。


そういうことを奏がするかどうかはさておき、する可能性がある以上頭の片隅に入れておいて損はないだろうが、今回は大外れである。


『・・・わかった。森本に会うのは少しの間でいいのかい?』


「えぇ、その後は森本さん抜きでお話でもできれば。よければ一緒に食事でもしますか?」


『・・・わかった、ご一緒させてもらうよ。とりあえず来てくれ。君たちは僕の親戚ってことで話を通しておくから』


康太は電話を切るとすぐに文の方を向く。すでに彼女の準備はできておりあとは自分がその後に続くだけの状態になっていた。


「なんだって?アイドルと一緒にお食事でもするの?」


「いや目標とは別だ。マネージャーさんと一緒に楽しいお食事会。その時にいろいろと話をしよう。なんか向こうは勝手に勘違いしてるっぽいし」


「勘違い?」


「あぁ・・・会話の間に妙な沈黙があったからな、たぶん変なこと考えてるんだと思う。どんなこと考えてるかは知らん」


康太はマネージャーとの会話で、その会話のテンポとその声音から向こうが何かしら思考をしているという事を理解していた。


その思考がどの程度のものなのか、後ろめたいことなのかは康太にはわからない。だがアイドルである森本奈央ではなくマネージャーだけと話をしたいというのは相手にとってもいろいろと考えさせられることだったのだろう。


時間をとってくれるのであれば康太たちとしてはありがたい限りだ。無関係な事を話すふりをして別なことを目的にするようなふりをするのもいいかもしれない。


相手が勝手に勘違いして便宜を図ってくれるのであればこれほどありがたいことはない。


「で?場所は?」


「ホテルのロビーだそうだ。問題あるか?」


「ずいぶん目立つところね・・・向こうも変装くらいはしてるだろうけど・・・一応対策しておくわよ。無駄に騒がれるとこっちが面倒だし」


「了解。まぁ人を隠すなら人の中ってことだろ。服装変えて髪型変えれば早々ばれるものでもないんじゃないか?」


「さっきのライブのリハーサル見てもそう思える?」


「・・・一応対策しておいた方がいいかもな・・・」


康太と文は今日のリハーサルの様子をいくらか見ている。あれほど煌びやかな光景を見ておきながら変装程度で何とかなるとは正直思っていなかった。


しかもこのホテルにはそれなりの数の人間がいる。恐らくは明日のライブ目当てに宿泊している人間だ。


それがスタッフなのか観客なのかはわからないが、どちらにしろ今回の主役でもある森本奈央がその場にいて気づかれない可能性はどれほどのものだろうか。


文の魔術で気づかれにくくなるような工作を行っておいた方がいいかもしれない。大げさかもしれないが公的な場所の一般人も大勢いる中で面倒な騒ぎを起こすわけにはいかないのである。


しかもそれがアイドルならなおさらだ。


「最悪俺じゃなくてお前がすごく目標のファンだってことにしてしっかり握手してもらえ。そのくらいの時間で仕掛けはできるだろ?」


「問題ないわ。集中できる環境で数秒間触れ続けてれば間違いなくマーキングはできる。そしたら目標にはご退場願いましょ。疲れてるでしょうからね」


リハーサルとはいえ一日中活動し続けたのだ。十八歳の体には相当な負担になっているはずである。


そうなるとあまり無理をさせるわけにはいかない。ただでさえこの夏の暑さで体力を消耗しているのだ。


可能なら魔術的な回復効果のある対策でもしてやりたいところだが、さすがにそこまでする義理はない。


「それじゃあお仕事第二弾行きますか。しっかりファンっぽくしてろよ?」


「任せておきなさいって。猫被るのは慣れてるわ」


そこは演技が上手いというべきではないのだろうかと康太は眉をひそめたが、今回に関してはどちらでもいい。相手に不信感を抱かせなければそれでいいのだから。


活動報告にちょっと重要なお知らせを追加しました。

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