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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
九話「康太とDの夏休み」

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独り立ちのために

「でもなんで真理さんに声かけなかったわけ?あんたたち仲良いんだから協力してもらえばよかったじゃない」


「それなんだけどさ・・・今回は言わなくて正解だったとも思ってるんだよ・・・まぁ今となってはちょっといてほしかったって気もあるんだけど」


「どっちなのよ・・・でもどうして?戦力としてあの人は凄く貴重よ?実力も経験も私達とは比べ物にならないじゃない」


真理は今まで小百合の弟子として多くの事件に関わってきた。文のいうようにその実力も経験も康太たちとは比べ物にならないだろう。


今回の状況でもきっと真理は康太たちの力になってくれただろう。話を通してきちんと手順を踏めば一緒に来るくらいはしてくれただろうことは容易に想像できる。


だがだからこそ、康太は真理に話をしにくかったのだ。そして結局その話をしないことにした。


結果的にそれが不便さを際立たせているわけだが、康太の中にはこれでよかったという気持ちもあった。


「いやさ、俺って今まで基本的に姉さんに頼りきりじゃん?そりゃ姉さんはいろいろ知ってるし強いし経験あるしで頼りたくなるけどそればっかじゃいけないと思ったわけなんだよ」


「・・・あぁなるほど、独り立ちするための準備みたいなものね」


「独り立ちっていうとちょっと語弊あるかもだけどまぁそう言う事だ。毎回毎回あの人に負担かけさせるわけにもいかんだろ。ただでさえ夏休みは忙しいってのにこっちの都合まで押し付けるのはちょっとな・・・」


文としては康太のいいたいことも十分に理解できる。だが当の真理としては弟弟子に慕われ頼りにされるのもまたいいものだと言っていた記憶がある。


頼りにされるのは嬉しいだろうし力になることができるのならなお嬉しいだろう。そう言う意味では康太が頼りにするのもいいことだと思ったのだが、康太のいうようにあまり真理に頼りすぎるというのもよくない。


特に今回の奏の依頼を皮切りに、康太個人に対して依頼が来ることも少なからずあるかもしれない。


そういう時に常に真理のことを頼りにできるかわからないのだ。そう考えると康太のこの行動は正しいものであるように思う。


「でもいいんじゃない?あんたがそうしたいっていうならそうするのが正解よ。真理さんだって真理さんの都合があるわけだし、もしかしたら用事があってこれなかったかもしれないしね」


「そりゃそうだけど・・・やっぱあの人がいないっていうのは戦力的に心もとないよなぁ・・・文はよくても俺が役に立てないってのはなんかこう申し訳ないというか」


「そう思うなら魔術の鍛錬をしなさい。私と同じ実力になるまでは相当時間かかるわよ?まずは索敵用の魔術でも覚える事ね」


「そうだな・・・魔力がもうちょっと安定して供給できれば少しはましになるんだけどな・・・こればっかりは仕方ないか」


先のデビットの一件のおかげで、Dの慟哭という魔術を覚えることができた。もっとも覚えていると言ってもそれを完璧に操ることができているわけではない。


しかもこの魔術は近くに魔力を奪う対象が居なければほとんど意味がない。対魔術師戦闘においては非常に役に立つのだろうが単なる索敵や探索などの基本一人で行うような事柄に関しては今までと同じように弱い供給口で我慢するしかなくなってしまう。


「私が一緒に行動してる時は私の魔力を吸ってもいいけど・・・それじゃダメなの?」


「んー・・・それでもいいんだけどなんか申し訳なくてな・・・もう少し別な方法で魔力を安定して供給する方法を考えないと満足に活動できないし・・・」


康太の魔術師としての素質は安定しているとは言えない。魔力の補充に非常に時間がかかってしまうために長時間、そして広範囲にわたって使用するような大魔術は基本的に使用することすらできない。


魔力の貯蔵や放出に関しては一定以上の素質を持っているのにもかかわらず供給口だけ弱いとこういうことになる。


「索敵と言ってもものによっては短時間での発動のものもあるわよ?例えばソナーみたいに魔術の力を飛ばして今どういう状況なのかを把握するようなのもあるし。そう言うのを調べてみたら?」


「おぉ・・・んじゃ今度エアリスさんのところで探してみるか。それができるかできないかで随分変わってくるもんな」


文の使うような継続的な索敵ではなく、断続的、あるいは瞬間的な索敵であれば消費魔力も少なくて済む。


もちろん得られる情報もその分少なくなるがないよりはましだ。


今回のような状況で役に立つとは思えないがこれからの行動で役に立つ可能性はある。覚えておいて損はないだろう。


「あとはそうね・・・追跡用にマーキングの魔術も覚えておいて損はないと思うわ。これは継続的に魔力を消費するけど・・・たぶん一人二人だったらまだあんたの供給する魔力の方が多くなると思う」


「へぇ・・・そんな少なくて済むのか?」


「数を多くすればするほど消費量は多くなっていくけどね。一つ二つ程度であれば問題ないわ。あんたもそう言うの覚えておきたいでしょ?」


「そうだな・・・いやぁまだまだ覚えるものが山積みだよ・・・ただでさえまだ練習中なのがたくさんあるのに」


康太としては成長したつもりでもまだまだ魔術師として必要な魔術は山ほど存在する。


今年中に何とか少しはまともになりたいものだと康太は意気込んでいた。


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