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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」

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あきらめは

「わかった・・・君の身内には手を出さないと私の名をかけて誓おう。もっとも私とて本部のすべてを把握しているわけではないのは覚えておいてほしい」


「わかっていますよ。ですがあなたの部下に関してはしっかり統括しておいてください。手を出さなければ俺の方から手を出すことはしませんから」


副本部長との間に停戦協定が制定されたことで康太はとりあえず安堵の息を吐く。


副本部長が今後本部の中でどのような立場になるのかは不明だが、本部のナンバーツーと停戦協定を結ぶことができたのは大きい。


「では話を先に進めよう。先の件だが・・・私が副本部長という立場から封印指定にさせないように言及することで、周りの動揺を誘うというのが目的、ということでいいのだな?」


「えぇ、副本部長という立場なら間違いなく封印指定にしろっていう風に言及すると思うんですよね。ただ副本部長が俺とつながりを持っていたことを理由にすれば、おそらく向こうはそれに付け込んでくる」


「向こうが君が人ではなくなったということを知っていることが前提の話だな。そのあたりは公表すればいいだけの話だが」


「えぇ。つまり条件はすべてクリアされているわけですよ。あとは副本部長が首を縦に振ればいいだけです」


「いや、まだ問題はあるぞ。仮に議論になったとして、その裏切り者をどうする?その場で捕縛するのか、泳がせるのか」


「そのあたりは少し迷っているところです。向こうに意図的に間違った情報を流すこともできるという意味で泳がせておくのも手だと思います。ただ他にもスパイがいるのであれば、いっそのこと捕縛しておくのも手です。あいつはばれたけどこっちはまだばれてないとそう思わせることができれば」


「相手は手に入れる情報をさらに信じる・・・か。どちらがいいのか・・・確かに迷うところだ」


これに関しては協会本部に入り込んでいるスパイの数によるために今対応を完全に決めることはできそうになかった。


ある程度決めておくことはできるだろうが、多少は泳がせなければならなくなる。


「副本部長から見て、完全にこいつは信用できるという魔術師を集めておいてください。そういった裏切者に探りを入れたいです」


「なら私の部下を使おう。あれらなら心配はいらない」


「大丈夫なんですか?人を見る目には自信が?」


「正直に言えば、人を見る目にはあまり自信がないが・・・少なくとも私が信じるに値すると思っている部下だ。問題はない」


副本部長がここまで言うのであれば康太としては何も言うことはない。そのあたりは副本部長の人選に任せるべきだと康太は考えていた。


「じゃあ、とりあえずオーケーしてもらえますか?」


「・・・くどいようだがもう一度言っておく。私がたとえ君を封印指定にさせない様に発言したとしても、おそらくだが君は封印指定に登録される。そのあたりは覚悟しておきなさい」


「わかっていますよ。この体になった時点で、何となくそうなるだろうなとは思ってますから。もうあきらめてます」


「・・・そうか・・・時に、もし仮に君がアリシア・メリノスと同じ・・・長い寿命を手に入れたのだとしたら、どうする?」


「どうする・・・とは?」


あまりにも曖昧な問いに康太は首をかしげてしまっていた。どうするといわれても今まで通りに過ごすとしか言いようがないのだが、副本部長が求めているのはそういう答えではないだろう。


「いずれ君は、一般人の社会から弾き出されてしまうだろう。長く生きすぎているというのはそういうことだ。その時、君はどうするのだ?」


ここまで聞いて康太はようやく副本部長が聞きたいことを理解していた。


数十年程度生きるのであれば問題ない。だがアリスのように数百年生きるとなると、同じ場所にとどまることはまず無理だ。


人が死なない。それだけで多くのものが違和感を抱き、時には恐怖心さえ持つだろう。


不信感は魔術の存在の露呈にもつながる。康太も一応魔術師として魔術の存在を大っぴらにするつもりはなかった。


「そうなったら・・・アリスと一緒に旅にでも出ますかね。一つの場所にとどまれないのであれば、どこかに行くしかないでしょう」


「・・・君に家族は?」


「います。これから新しく作るつもりもあります」


「そういった者たちを捨て置けるのか?」


「その時にならないとわかりませんけど・・・まぁ、何とかなると思いますよ。老いて死ぬことができれば最高ですけどね」


一緒に死ねたら。そんなことを文が言っていたのを思い出す。まったくもってその通りだと康太も思う。


一緒に過ごして一緒に苦労して一緒に楽しんで、そして一緒に死ぬ。そんなことができたのであれば最高だと。そんな風になれたらいいなと。


だがそれも難しいかもしれない。ならばあきらめるほかない。


「君の老いが確認できれば、封印指定から外すことも強く進言できるだろう。問題は、それが確認できるかどうかだが」


「まぁ、ただでさえこういうのとかも入れてますから難しいでしょうね。そのあたりは気にしませんよ」


そういって康太は黒い瘴気を出す。


すでに康太は封印指定百七十二号と同化してしまっている。そういう意味では封印指定にならざるを得ない状況だ。


すでにあきらめている。だがただで封印指定になるのではなく、少しでも敵にダメージを与えながらなってやると康太は決めていた。


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