精霊との付き合い
「こいつは精霊じゃなくて人の魂っていうか、意志で動いてるからな。精霊のとは全く別物だぞ?」
「でも似たような技術があれば、精霊を物体に宿すこともできるだろ?」
『そうなると・・・たぶん禁術でしょうね。精霊に過剰に干渉するとそれだけ自然にも影響を及ぼすから・・・支部か、あるいは本部の禁術保管庫にしまってある可能性はあるけど・・・存在するかはわからないわよ?』
「わかってるよ。あくまで師匠に聞いただけの知識だ。はっきり言って眉唾物だからな・・・あればいいなって思っただけで」
精霊を媒体に宿らせる。物質的なかかわりを持とうとするというのは精霊とのかかわりが深かったからだろうか。
それにしても自らの精霊をずいぶんと慕っているようだった。
「お前の精霊ってどれくらい頭いいんだ?基本精霊って自我があるギリギリレベルっていうだろ?」
「昔はそうだったけどな、最近は話くらいならできるようになってきてるぞ。俺と一緒にいろいろ勉強してきたからな」
「精霊って成長するのか・・・そのあたりどうなんだいベルさんや」
康太は精霊に関してははっきり言って門外漢であるためにすぐさま文に助け舟を求める。
『精霊が勉強をするっていうのはちょっと聞いたことがなかったわね・・・たぶんあんたの勉強で得た知識を精霊も共有したってところじゃない?それか、精霊としての格が上がったかのどちらかでしょ』
「精霊の格ってそんな簡単に上がるのか?」
『さぁ?少なくとも私は精霊の格が上がるところとかは見たことがないわね。バズさんはどうですか?』
『僕もないね。でも精霊にだって成長するような余地があっても不思議はないさ。特にそれだけ長く一緒にいれば、人間社会に適応しても不思議はないね』
精霊だってある種の生き物だ。存在そのものは生物とは言えないが、決してただの物体ではない。
状況によって変化もするし影響もうける。康太の体の中にいる雷の精霊だって同じような理由で地縛霊のような形になってしまっていたのだから、体に宿すことによって精霊が変化を起こすこともおかしな話ではない。
「じゃあ俺の中にいる精霊も教えたら言葉をしゃべるようになるのか」
「っていうか俺お前の精霊見たことがないんだけど。どんなの?」
「鳥の姿をした雷の精霊なんだけどさ・・・こいつ何の反応もしないんだよ・・・もう体に入れてから結構時間経つっていうのに・・・」
『普通とは少し違う精霊だったものね・・・でも最近は発作もなくなったじゃない?だいぶ安定してきているとは思うわよ?』
「発作?」
「あぁ、精霊に引っ張られていきなり泣き出すことがあるんだよ」
「なるほどそういうのか。俺も昔何度かあったよそういうの」
「あ、やっぱ精霊と一緒にいるとそういうことあるのか」
「あるある、こいつら基本は単純だからな。喜怒哀楽がはっきりしてるっていうか何っていうか・・・」
精霊あるあるを話していると倉敷の体から出ていた青い光が急に動き出して倉敷の体の中に入っていった。
拗ねたのか、へそを曲げたのか、倉敷は苦笑している。
「こっちの言葉もある程度わかるからどうしてもこうなっちゃうな・・・あとでご機嫌取りしておかないと」
「お前の場合精霊は生命線だからな・・・っていうかお前は精霊何体入れてるんだ?」
「俺は二体だな。一つはさっき言った昔からの付き合いのやつ。もう一つは小学校卒業するタイミングで入れたやつだ。相性がいいから助かってる」
「両方とも水?」
「あぁ。たぶん俺は水以外の適性はほぼないに等しいな・・・他の属性の精霊もよってこないし」
特定の属性との適合率が高いことは魔術師でも精霊術師でもよくあることらしい。そしてそれは精霊にも適応される。
康太の場合は少々特殊な事例だが、大体の魔術師は自分の得意とする属性の精霊を入れておくことで万が一の時のための予備魔力貯蔵庫などに割り当てている。
文などもそのようにしているため、割と一般的で康太も知っている。
もっとも康太の場合、精霊を入れていても予備の魔力貯蔵庫としての使用は不可能だし、そもそも雷属性の魔術を覚えていないために無用の長物なのだが。
「精霊とちゃんと向き合えてるやつはうらやましいよな・・・俺のなんて明らかにおかしい面子ばっかりだぞ」
そういって康太は体の中から黒い瘴気を、そして近くにいたウィルを軽くなでる。
おかしい面子と言われればそうかもしれない。確かに普通の魔術師ではありえないようなものを康太は引き連れている。
それをうらやましいととるかは人によるだろうが、康太としてはもう少し普通の戦力に恵まれたかったと思ってしまうのである。
「いいじゃねえか、そいつらすごい役立つだろ?ていうかそいつを使ってる時のお前ってえげつないから近づきたくないんだけど」
「なんだよそれ。鎧姿とか騎士みたいだろ?」
「いや、狂戦士って感じがする」
ウィルを纏った状態の康太は見た目こそ鎧を着こんだ騎士だが、実際はめちゃくちゃな戦い方をする。
狂戦士というのもあながち間違いではないのかもしれない。




