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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十五話「釣りをするのも大博打」

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安全運転

倉敷が水の壁でバイクの侵入を防いでいる中、康太は自分の近くまで後退させたバイク四台を相手に立ち回っていた。


遠隔動作の魔術で周りにいる四台のバイクのアクセルやブレーキを要所要所で操作することによって相手の動きを意図的に阻害し、なおかつ噴出の魔術を使って強引にバランスを著しく崩していく。


バイクは基本ハンドル操作と体重移動、そして速度によって車体を操る乗り物だ。遠隔動作の魔術によってハンドル操作、加速と減速、そして噴出によって車体の向きを強引に変えられると途端に操作が利かなくなる。


いやがらせレベルの妨害だが、かなり効果は絶大だった。


ただ気をつけなければいけないのは相手が体勢を持ちなおせないほどに妨害してはいけないということである。


今回の目的はあくまでこの魔術師たちの捕縛。バイクから落としてしまっては回収が難しくなってしまうため、トラックに向かうバイクを足止めしながらなおかつ相手の集中力を奪い疲弊させなければならない。


康太が一人で妨害していれば、トラックにいる文たちが楽になる。その間にあちらの攻略が終わってしまえば何人かを倒してもいいかもわからない。


とはいえ、さすがにこのまま四人を抱えているのは康太としてもあまり良い状況とは言えなかった。


四人の魔術師も康太を倒さなければトラックを追うことができないと学習したのだろうが、康太がバイクの動きを阻害し続けるせいもあって、使用する魔術はほとんど姿勢制御に回さなければいけなくなっている。


同時に発動できる魔術で康太に対して攻撃しているものの、康太自身もバイクを使って移動し続けているうえに姿勢を崩されている状態で放つ魔術は見当違いの場所にばかり放たれていた。


このまま魔術を放たれ続けるのは、魔術の隠匿という観点からあまり良い行動とは言えなかった。


いっそのこと分解の魔術でバイクごと壊してやろうかと考えた瞬間、康太はいいことを思いつく。


ヘルメットの下で笑みを浮かべながら近くにいた魔術師のバイクに向かって行く。


康太の体を覆っていたウィルが康太のもっていた竹箒改を構成し、その車体に思い切り刃を突き立てていく。


自分が攻撃対象になっているということを理解したのか、魔術師は何とか康太から距離を取ろうとするが、康太の遠隔動作や噴出の魔術によって強引にバイクを動かされ、距離を取ることができずにいた。


康太は十分以上に接近すると動作拡大の魔術を近距離で使って魔術師の体を思いっきり殴る。


強い衝撃によってバイクから弾き飛ばされた魔術師をウィルが捕まえ、そのまま地面に叩きつけた。


高速で移動し続けるバイクの上からたたきつけられたことで、まさに交通事故の様相を呈しているが、ウィルは魔術師の拘束を解いてはいなかった。


康太の体からまるでロープを伸ばしたかのように伸びて、地面を延々と引きずる形で魔術師一人を捕縛に成功していた。


「うん、このほうが楽だな、ウィル、死なせないように最低限防御しておいてやってくれよ」


康太の体にまとわりついているウィルは右腕の形を作って親指を立てる了解のポーズをとって見せた。


高速で動き続けているためにちょっとした凹凸で跳ね上がるように引きずられている魔術師だが、何とか体勢を整えたり、引きずられる中で地面との摩擦を減らそうとしたり逃げ出そうとしているらしく後方で魔術を使っているのが確認できる。


康太に攻撃するだけの余裕はないのだろう。悲鳴を上げながら周りの魔術師に助けを求めているようだった。


さすがに周りの魔術師もバイクで引きずり回されているのを黙ってみていることはできなかったのか、康太の体から延びているウィルの体を切断しようとしてくる。


だが硬化したウィルの体はそう易々と切断はできない。それは康太がいろいろ実体験しているから証明済みだ。そのあたりの魔術師に攻撃された程度ではびくともしないだろう。


「お、助けようとしてるのか?それならおんなじ目に遭ってもらおうか!」


引きずられている魔術師を助けようと近づいたバイクを確認したところで、康太は引きずられている魔術師の体に噴出の魔術をかける。


地面を引きずられ続けていた体がまるでバウンドするかの如く、近づいたバイクに向かって跳ね上がり、バイクに乗っていた魔術師の体に直撃する。


瞬間、ウィルがまとわりついて二人目の捕縛に成功する。そしてバイクから引きずり降ろして思い切り地面に叩きつけた。


「はい二人目ご案内!いいねこの方法。相手にダメージも与えられるし何より楽だ。バイクが乗り捨て状態になっちゃったけど」


なるべく路肩に駐車するような形で制動をかけたとはいえ、二台のバイクを放置したのだ。いろいろと問題になるかもわからない。


だが逆にチャンスでもある。捕縛した魔術師の個人的な詳細を把握することができるようになるため、バイクの情報はなるべく回収しておきたかった。


後で協会に連絡でもして回収してもらうかと考えていると、残った二台のバイクが康太の両側に配置し攻撃をしようとしていた。


「なんだ、もう助けようとしないのか?」


康太の声が聞こえているわけではなかった。だが二人の魔術師は同時に寒気を覚える。


「じゃあもういいか、そろそろ終わらせるぞ?」


康太の殺気が放たれる瞬間、その体にまとわりついているウィルが大きく活動を開始する。


康太はウィルに無属性のエンチャントの魔術を施すと二人の魔術師を捕縛した状態でその体を大きく宙に投げ出させる。


まるで鞭のように、その魔術師の体を鉄球のように見立てて暴れさせるように振り回していく。


ウィルの動きだけに依存せず、康太自身も噴出の魔術を駆使して振り回し、康太の左右に張り付こうとしていた二人の魔術師のバイクめがけて叩きつけた。


康太の妨害によって操作もおぼつかず、横薙ぎの攻撃をよけることもできないと判断したのだろう、障壁の魔術を展開するが鞭のように動くウィルにはその行動はほぼ無意味だった。


障壁を迂回するような形で体に直撃すると、人間二人分の質量を持ったその攻撃を受けたせいでに体は容易に吹っ飛んでしまう。


もう一人は僅かに宙に浮いて回避しようとするが、捕縛しているウィルが腕を伸ばしその体に絡みつく。


何とか対応しようとするも、一度絡みついてしまえばもはや外すことは不可能だった。康太は噴出の魔術を駆使し、宙に浮いた体を強引に地面に叩きつけることで魔術師に確実にダメージを与えていく。


地面への直撃に加え、高速で動き続ける地面に引きずられる痛み、そしてすでに移動手段を欠如しているという状態、さらに言えば捕縛されたという精神的な圧力。すでに四人の魔術師は戦意を失いつつあった。


だが攻撃の手をやめるわけではなかった。


むしろこれからが本番だというがごとく、康太は意図的にバイクを加速させたり減速させたりして四人の魔術師に圧力を加えていった。


だが、四人もの人間を引きずっていることもあって前を進むトラックからはずいぶんと距離が開いてしまっていた。


このままでは置いていかれかねないなと、康太はバイクの後方のパーツを開き、噴出孔をあらわにする。


「後ろの四人!これから加速するから!死なないように防御しておけよ!」


康太の声が聞こえているのかいないのか、魔術師たちは現在進行形で防御態勢をとっている。宙を浮こうとすればすぐに康太に叩き落されるために、ただ引きずられるしかないというのが情けないところではあるが、康太の加速するという言葉に彼らが身を強張らせたのは仕方のない話だろう。


「ベル、トゥトゥ、今からそっちに向かう。片づけた四人を収容したいから拘束の用意頼めるか?」


『こっちもいっぱいいっぱいだ!さっさと後ろの連中を片づけてくれ!』


『早く合流しなさい、車に乗っているのが主力っぽいわ』


倉敷はかなり焦っているようだったが、文の声音は穏やかだ。まだ問題なくリスク管理は行えているようだなと少し安心する。


「よしよし、持ちこたえてるみたいだな・・・アフターバーナー起動!」


別に言う必要はないのだが、そういったほうが加速が速くなるかもしれないという思い込みを含めて噴出の魔術を発動する。


魔術とは思いこみや呪文によって発動の際の出力や処理が増減する。今回のそれも同じようなものである。


康太の噴出の魔術によって、バイクは一気に加速していく。急な加速により引きずられている魔術師たちは地面や互いと何度も激突し悲鳴を上げている。


だが康太はそんなことは知らんというかのように加速を続ける。魔術師なのだから自分の身は自分で守ることができるだろうという想定で動いているのだ。


前方に文たちの乗っているトラックが見えると、すでに激しい魔術戦が行われているようだった。


倉敷が水で防御とバイクの進行方向の阻害、文が電撃や物理的な射撃攻撃によって相手への攻撃を繰り返しているようだった。


「なかなか頑張ってるな・・・車の連中がメインで攻撃しまくってるか・・・ちょっとご挨拶しましょうかね!」


康太はそういってバイクの側面のフレームを開く。次の瞬間噴出の魔術によって収められていた鉄の杭が空中へと飛翔していく。狙いは車の真上である。


車に乗っていた魔術師もその攻撃に気付いたのか、車の上部に障壁を展開するが、康太もその行動は予想済みだった。


障壁に杭が着弾する瞬間、杭に込められた蓄積の魔術を解放する。


噴出の魔術だけならば突破できなかったであろう障壁を、蓄積の魔術との組み合わせによって容易に突破していき、車の天井にいくつも穴をあけ、杭は車内に次々と突き刺さっていった。


中から悲鳴のような声が上がるが、康太はそれを無視してトラックの中にいる倉敷に目を向けた。


「援護する!時間は作ってやるからその間にこいつらの捕縛を頼むぞ!」


「無茶苦茶いいやがって・・・!わかったよ!さっさとやってくれ!」


「あいよ!安全運転強化月間にご協力ください!」


康太はそういいながら加速していき、車の右側に回り込むと運転席を確認して遠隔動作の魔術を発動し、ハンドルを強引に操作する。


ハンドルを勝手に動かされたせいで、車はコントロールを失っていく。さらに康太は車の中のサイドブレーキを作動させて強引にその速度を落とさせた。


トラックと車の距離が作られた段階で、バイクが康太の存在に気が付き、攻撃を仕掛けてくる中、康太は引きずってきた魔術師四人を盾にしてその攻撃を防いでいく。


さすがに仲間を攻撃するのは気が引けるのか、バイクに乗ったままの魔術師は攻撃をかなり控えめにしていた。


そして先ほどまでと同じように遠隔動作と噴出の魔術を駆使して相手のバランスを崩し強引に距離を作っていく。


日曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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