男の子はたいていこんな感じ
「おぉ、これが康太君たちのバイクだね・・・結構カスタムしてるのかい?」
「俺のやつは戦闘用に外装をちょっといじってあります。それ以外は普通のバイクと同じですよ」
「いいねぇ、こういうカスタム見ると俺のもいじりたくなるなぁ・・・八篠、これ自分でやったのか?」
「いや、協会の方で武器とかを頼んでる人にお願いした。たいてい何でも作ってくれるからなあの人たち」
「マジでか、今度俺にも紹介してくれよ」
康太たちは今日の本題であるバイクを見に一階のガレージにやってきていた。そこには康太と文のバイクと倉敷の原付が並んでいる。康太のバイクだけ妙にごつくなってしまっているのは、康太が言うところのカスタムの結果に他ならない。
武器などを収納しておけるようにある程度フレーム部分に改造を施しているのである。
今まで実戦で使うことがなかったが、ようやく使うことができるということで康太もかなりテンションが上がっているようだった。
自分のバイクにどのような改造が施されているのかを幸彦や倉敷に見せていく。
そしてそれを見せられた二人も、こういった改造などが嫌いではないのか、康太の話に耳を傾けては食い入るようにその改造部分を見ていた。
「男ってそういうの好きよね・・・改造とかチューニングとか」
「自分専用っていうのがいいんだよ。なんていうか・・・こう・・・熱くなるものがあるんだよ!ここのフレームが開くところの機構なんて最高じゃね?」
康太はそういいながらフレームの一部を動かす。その中にはいろいろと入れるものがあるのだろう、空間ができている。おそらく康太の装備品をそこに入れて即座に発動できるようにしているのだろうが、文にとっては無駄空間のようにしか見えなかった。
「いいなこれ・・・!やっべ!ミサイル?ミサイルとか出んの!?」
「俺特製の攻撃手段を入れようと思ってる。魔術と併用すればミサイルもどきの完成よ・・・そしてこれ!これが最近つけてもらった改造だ」
そういって康太はバイクの後方部分のフレームを開く。
そこにはバイクのメインフレームに直接接続する形で、何かの噴出口のようなものが取り付けられていた。
「なんだいこれ?戦闘機の噴出孔に似てるね・・・ってまさか」
「そのまさかです。こいつと俺の噴出の魔術を併用してジェットの再現ですよ!バイクなのに超高速移動!」
「おぉぉ!すげえ!見てみてえ!ちょっとここで固定してやってみてくれよ」
「オッケー。固定具持ってくるからちょい待ち」
「ねぇ・・・今度の依頼のためにバイク確認するのよね?そのために来たのよね?」
本来の目的そっちのけで男子らしい会話を繰り広げている康太たちは文の言葉など聞こえていないかのようにバイクを完全に固定し、バイクの後方から噴出の魔術を発動していた。
まるでジェット機のように後方から炎を出すその姿に興奮し、康太、幸彦、倉敷のテンションはかなり上がっていた。
文はそんな三人を見ながらため息をついてしまう。
「なぁ、今の炎赤かったけどさ、青くすることってできないのか?」
「え?なんで?」
「いやだってジェット機の炎って青いだろ?あれっぽくすればさらにらしくなるのかなって思って」
青い炎と言われて康太はどうすればそれができるのか何度か掌で炎を出してみるが、どれもいつも出すオレンジ色の炎ばかりだった。
文の方をちらりと見ると、彼女はため息をついて自分の掌にも炎を出す。それは康太と同じオレンジ色の炎だった。
「炎の色は、まぁ温度によって違うっていうのもあるけど、ジェット機の炎が青く見えるのは燃やしてるものが原因だったと思ったわよ?」
「へぇ・・・じゃあいろんなものをたくさん加えればその分色が変わるのか?」
「一概には言えないけど大体そういうことね・・・単純に炎の色を変えるってなると燃やすものを変えればいいけど、炎の温度によっても色は変えられる。酸素を多く入れて燃焼率を上げたりするけど・・・これはかなり難しいわ」
私もちょっとしかできないしねと言いながら、文は自分の掌にある炎をどんどんと小さくしていき、そこに風を送り込んでいく。
すると炎が揺らめいてわずかに大きくなったかと思えば徐々に色が変化していく。
文は集中を維持しようと手のひらに意識を集中し始めている。だがその炎の色がオレンジから白へと変わり始めた段階でその炎は弾けるように消えてしまった。
「ダメね・・・やっぱり私は炎属性はうまくいかないわ・・・色を変えたいなら、バイクの後ろにそういうガスっぽいものでも搭載すればいいのよ」
推進力を単に得たいのであれば、ニトロなどを搭載する方法がある。だがそれは本格的な改造を施さないといけないためになかなか手が出ない。
康太のように手軽に噴出の魔術によって加速できるものと違って、機構として組み込むのはなかなか難易度が高いのである。
「いやでも結構いいなこれ・・・俺もちゃんとしたバイク買おうかな・・・結構金も入ってるし」
「買っちゃえ買っちゃえ、せっかく依頼に連れて行ったのに原付じゃ情けないだろ。これを機にいいバイク買っちゃえって」
「僕の知り合いにバイク関係の会社の人がいるから紹介してあげようか?多少安くなるかもしれないよ?」
「本当ですか?やべ、買っちゃおうかな・・・?」
「・・・あんたたち今日の目的わかってるわよね?何しに来たと思ってるのよ」
もはや本来の目的を忘れかけている男子たちに文は何度目かもわからない大きなため息をついてしまっていた。
「さて、まじめな話このくらいの大きさであれば十分積載可能だね。二つくらいなら中型のトラックでも積載できると思うけど、二つとも積んでおくかい?」
「俺の原付はさすがに今回の依頼にはあれだから、鐘子のを積んでおいたほうがいいですかね。ていうか八篠のバイクがあれば事足りるでしょ。八篠が外で頑張って攻撃してくれれば何とかなる」
「俺頼みかよ。お前にもだいぶ頑張ってもらうんだからな?」
幸彦がバイクの寸法を測っている間に、康太は自分のバイクの中に装備を次々と入れていく。
収納スペースにあらかじめ入れて置く予定だった装備をどんどんと入れていくと、バイクの様相は明らかに先ほどのものとは異なるものに変貌していた。
「なんていうか、世紀末とかにありそうなバイクのスタイルになってるよな。バイオハザードでこんな感じのバイクあったぞ?」
「映画版の話?あんなにとげとげしくないでしょ。これの場合はしまわれてるわけだしさ」
「でもこれを一気に解放したら格好良くないか?さすがに全部は難しいかもしれないけど」
全ての装備を一斉に放つようなことをすれば、攻撃手段が激減するのは目に見えているのだが、すべての装備を一気に放出するという演出をやってみたいというのが康太の本音なのだろう。
男の子的に、機体から一気に攻撃が飛んでくるような光景は一種の夢なのだ。
「装備を入れてもそこまでの重量にならなければ問題はないだろうね。飛び出る時に注意が必要かな?」
「そのあたりは何とかしますよ。幸彦さんには車の運転をしてもらって・・・倉敷は防御担当、文が攻撃と援護担当ってところか」
「妥当なところじゃない?倉敷の術は防御にも長けてるし」
「逆に攻撃はしにくいからな・・・移動し続けてるような相手だと機動力で負けるからどうしようもない」
倉敷の水を操る術は機動力に欠けるのが難点である。康太のように素早い相手を捕えるには、水そのものの総量を減らして素早く攻撃する必要があるが、水の総量が減っていればその分避けられやすくなってしまう。
大質量の水を用意すればその分覆いやすくなるが、水そのものの動きは遅くなってしまうために素早く動く相手には当てにくい。
倉敷の最大攻撃である水圧カッターにも似た攻撃ならば、一種の射撃系の攻撃にも似たダメージを与えられるだろうが、あれは継続して相手に当てなければ真価を発揮しないためにこれも移動しながらでは効果を発揮しにくい。
対して水の防御性能は比較的高い。物理的な攻撃は減衰し、現象系の攻撃にも対処可能である。
唯一危険なのは冷気、水を凍らされてしまうと倉敷は操ることができなくなってしまう。
防御が同時に拘束にもなってしまう。
だが水属性を扱って長い倉敷のことだ、そのあたりはよくわかっている。
「移動中に攻撃っていうけどさ・・・私はどうやって攻撃すればいいわけ。助手席のところから?」
「いや?トラックの屋根の上から」
「は?待って待って待って、なに?走ってる車の屋根の上に行けと?そこから攻撃しろと?」
「うん。俺はそうやったぞ?その時は師匠の運転だったけど」
「・・・道路交通法を勉強してほしくなるわね・・・こんなのが免許持ちだなんて・・・」
「何とかなるって。文ならトラックの上に乗るとか余裕だろ?」
「・・・そりゃあ・・・まぁ・・・」
文の魔術を使えばトラックの屋根に自分を固定するくらいのことは問題なく可能である。
磁力でも念動力でも、方法はいくらでもあるためにそこまで苦労はしないだろう。問題なのは屋根の上に上るという行為そのものだった。
「普通に考えてよ、不安定な足場でしかも相手は移動中、そんな状態でねらいをつけろってかなり難しいわよ?私の攻撃って電撃が多いんだからさ」
文の電撃は基本的に水を使って道を作り、そこから電撃を通すようにして相手に当てるスタンスだ。
移動中では水の道は作れないために命中率は極端に低くなってしまう。
電撃の弾丸などの魔術も覚えてはいるが、威力が低いため文はあまり多用していなかった。
磁力を纏わせる攻撃もあるし、設置型の攻撃もある。定点発動型の魔術も覚えてはいるが、文はそういったものをあまり使ってこなかった。
文は移動しながらの戦闘というものを経験したことがないために、そういった魔術には不慣れなのである。
「これを機に苦手克服してくれよ。これから移動しながらの戦いってあると思うぜ?いろんな意味で」
「そんなこと言われたって・・・移動しながら・・・移動しながらねぇ・・・どうしろってのよ・・・」
文の射撃系攻撃の中でもっとも単純かつ、移動しながらでも使えるものは磁力を用いた射出である。
これを使えば確かに問題なく射撃系攻撃を使えるが、残弾に限りが出てくる。制限のある攻撃をあまり良しとしない文としてはあまり使いたい攻撃ではなかった。
「電撃をそのまま使ってたらうまくいかないだろうし・・・何かいい方法があればいいんだけど・・・」
「そもそも移動中にも戦うっていう想定をしてるこいつがおかしいんだと思うけどな。戦いのことばっかり考えてるじゃん」
倉敷の言葉に康太としては返す言葉がないのか苦笑いしてしまっていた。
日曜日なので二回分投稿
これからもお楽しみいただければ幸いです




