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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十五話「釣りをするのも大博打」

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指導と将来

「ちなみに、分解の魔術で位置を細かく指定する場合はどうするんですか?勝手に脳が処理しちゃうんじゃ微妙にずれるのが面倒ですけど・・・」


「特に移動中に良く発生するずれですね。移動し続けていることによって常に座標が変わり続けるのに対し、脳の処理が追い付かないんです。そういう場合は自分と相手の相対速度を意識するといいですよ」


「相対速度ですか・・・相手と自分の速度差を考えろってことですよね?」


「えぇ、あんまり意識しすぎると発動時、微妙に誤差が生まれることがあるんですが・・・まぁ移動中にだけ意識するといいですよ?」


移動中と真理は言ったが、常に座標が動き続けているのは康太と相手が停止し続けている状態でも同じことだ。


星規模で言えば、常に地球の自転と公転によって座標は変わり続けている。


康太は常に自分自身との相対速度によって座標を決めている。意識的にそれを行わせることによってさらに詳細な座標指定が可能になるというのが真理の考えであるらしい。


だが逆に、相対速度を意識しすぎることで座標にずれが生じることもあるという。


そのあたりは匙加減としか言いようがないのだが、そのあたりはやってみるほかない。


「ですが注意です。今までずっと同じような形でやってきた座標指定や発動の仕方、それをいきなり変えると普段できていた発動もできなくなる可能性もあります。そのあたりは注意が必要ですよ?」


「わかってます。走り方変えるといきなりタイムが落ちるのと同じですね」


「そういえば康太君は陸上競技をやっていましたね。理屈は同じです。今まで慣れた方法からの変化に体がついていかないんですね。体を動かす筋肉と違い、この場合は癖のようなものになるでしょうが」


「そのあたりは今後調整していかなきゃいけないですね・・・今度の依頼までには間に合わないかなぁ・・・」


「まず間に合わないでしょうね。最初からそのやり方をやっているのならまだしも。もともとやっていたものを矯正するのは容易ではありませんから。今度の依頼ではそのあたりを意識せず、徐々に矯正していくといいですよ」


魔術の発動方法の変化というのは容易なことではない。癖を矯正するのと同じで長い時間がかかるのだ。

今度の依頼は期限が差し迫っているということもあってそのようなことをしている時間的余裕はない。


「はぁ・・・師匠がもうちょっとしっかり指導するタイプの人だったら良かったんですけどね・・・こういう時は文がうらやましいですよ」


「ははは。うちの師匠にそういうことを期待するだけ無駄ということです。精進したかったら自分から誰かに教えてもらうなり、努力するしかないのですよ。今まで康太君だってそうしてきたでしょう?」


「・・・まぁそうなんですけど・・・」


今まで康太が小百合から魔術的に教わったことはほとんどないといってもいい。新しく魔術を教えてもらう時も、もうほとんどが術式を紙に書いての伝達だ。


最近も新しい魔術を覚え、ようやく実戦で使えるようになったのだが、その時の言葉が


『お前は放っておいても勝手にやるだろう。教える魔術は用意しておいてやるからあとは勝手にやれ』


というものだった。


この人はなんで弟子なんてとっているんだろうかと疑いたくなるほどに師匠らしくない人物である。


「俺らはまだいいんですけど、神加にはちゃんと指導してあげてほしいんですよね・・・そうじゃないとまた俺みたいな危ない魔術師が出来上がりそうで・・・」


「ふふ・・・今は師匠が直々に指導してあげているみたいですし・・・小さい子供にはちゃんと教えると思いますよ?今はアリスさんが?」


「えぇ、アリスとウィルに見張ってもらってます。何かあれば止めてくれるでしょう・・・そうでもしないと師匠の指導は厳しすぎて・・・」


「少々過保護になってしまっている気もしますが・・・小学校一年生で魔術師になるというのは・・・普通はこういうことなのかもしれませんね」


「文なんかはもっと小さいころから魔術師だったみたいですし・・・どうなんでしょうね、あいつ曰くもう魔術を使えるのはだいぶ珍しいらしいですよ?」


「神加さんの場合、精霊たちがたくさん中にいて、なおかつ何度か不完全な形で術式の発動をしていたらしいですから、体が覚えているというのもあるのかもしれません・・・今は無属性だけですが、属性魔術を覚えたら、彼女は化けますよ」


化ける。その言葉の意味を康太はほぼ正確に理解していた。


「俺や姉さんより強くなりますか?」


「私たちなんか目じゃありません。師匠すらも越える逸材です。おそらくは・・・戦闘能力だけならば、比類するもののいない魔術師になるでしょう」


「・・・それは師匠が育てたらってことですよね」


「当然です。あの人が育てて武闘派に育たないわけがありません」


小百合に指導を受けたものはたいてい武闘派になる。その理由は単純だ。小百合の指導が実戦的であるが故なのだ。


普通の魔術師のそれとは違う訓練であるが、だからこそ強みになる。


康太は身をもってそれを学んでいる。


「それに、神加さんの周りにはいろいろと教えることのできる人材がそろっています。康太君もそうですが複数の技能を使いこなすというのはなかなか強みになるんですよ?」


康太も近接肉弾戦、近接武器使用、近距離魔術、中距離魔術と徐々にできることを増やしてきている。


指導できる人間が必要になるが、そういった技術を全て使えるとできることは広がる。


よく言えば万能。悪く言えば器用貧乏だが、できるようになって損はないのだ。


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