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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十五話「釣りをするのも大博打」

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限られた戦力

「可能なら二人、多くても四人に収めておいたほうがいいだろうね・・・あと、クラリスを連れていくのはやめたほうがいいね。彼女は強いってことがだいぶ知られてしまっているから」


「・・・この前の中国での宣伝の結果ですか」


「そう。良くも悪くも構成員の撃破数は彼女がダントツだったからね・・・もとより本部でもいいうわさは聞かなかったけど、たぶん仮面の情報とかと一緒に結構広まってるはずなんだよね」


「・・・それを言うなら俺も結構あれじゃないですか?一応本部からの依頼とか受けてますし」


小百合のいいうわさを聞かないというのは今に始まったことではない。彼女が大暴れしているというのは別に気にすることはないのだが、康太の場合は本部の依頼でかなり功績をあげている。


特に封印指定関係やこの間の呪いのビデオの一件、そして中国での戦いを知っている者も多いだろう。

康太に依頼自体が来るのがお門違いではないかと思える内容だったが、支部長は首を横に振る。


「君の場合、本部の方でその活躍の情報が意図的に情報操作されていることが多いんだよね、封印指定関係が原因で」


「それは・・・まぁ納得ですけど・・・」


知っている人間は知っているが、協会に顔をあまり出していない者や、Dの慟哭の大本、封印指定百七十二号に深くかかわっていなかったもの、そしてアリス、封印指定二十八号に関わっていなかったものは康太の実力の詳細はほとんど知らない。


功績をあげていることはわかっても、その詳細の情報が上がっていないという不自然な魔術師が出来上がるわけである。


「前回俺はビデオの運搬はしていたので、そのあたりで向こうに知られる可能性があると思いますけど?」


「うん、そういう意見ももちろん出た。向こうからすれば以前にも運搬を行っている魔術師だ、本部もそれを警戒されて囮の意味をなさないのではないかという意見が出たけど・・・それを埋める意味で今回は同時行動をするわけさ。むしろ前回の運搬に成功しているというところから餌としては良質なのではないかという意見も出た」


「・・・俺だけじゃなくて、同時に行動するから相手の出方によっては良くも悪くもなると・・・」


「引っかかればそれでよし、引っかからなければ他にかかる可能性が高くなるからそれでもよし・・・なんていうか本部らしいわね。それに振り回されるこっちの身にもなってほしいもんだけど」


本部からすれば康太の方に敵が来ても来なくてもよいように作戦を構成したらしい。以前のように相手の勢力を甘く見るようなつもりはないらしい。


複数戦力を投入して出るあたり、本気度がうかがえるというべきだろうか。


「ちなみに、俺以外で動く戦力っていうのは?すでに決まっている連中は強いんですか?」


「僕も詳しくはないけど、結構戦闘能力の高い魔術師が選ばれているらしいよ?僕は他支部の魔術師には詳しくないから何とも言えないけど」


「・・・まぁ、強すぎる人を選出したら襲われるっていう目的が果たせないか・・・師匠級の人たちより、そのワンランク下の人間を選んだ・・・あるいは師匠級でも目立たない人を選んだってところですか?」


「わかりやすく言えばそういうところかな。どうだろう、この依頼受けてくれるかな?」


康太と文は顔を見合わせた後でため息をつく。本部の副部長の直接指名ということはほとんど逃げ道はないに等しい。


それでも受けるかどうかを聞いてくれるあたり支部長は律儀だ。もしここで康太たちが断ればきっと本部に直接出向いて受けてくれなかったという話をしに行くのだろう。


本部の体裁などよりも、支部の魔術師を優先してくれるあたり、この支部長はまだ気を遣ってくれているほうだ。


「追加の人選を俺たちに任せてくれるのであれば、受けます。それに文句さえつけられなければ」


「構わないよ。誰を連れていくつもりだい?前にも一緒に行動したトゥトゥかな?」


「あいつにも一応話はしますけど、受けてくれるかはわかりません。あと、一応一人声をかけておきたい人がいるんですよ」


「合計人数が四人を超えなければ僕としては何かを言うつもりはないよ。君の師匠みたいなやばい人を連れてこない限りはね」


「師匠や姉さんは連れてくるつもりはないです。師匠はともかく、今姉さんはいろいろと忙しいですからね」


真理は今就職活動と卒業論文の真っただ中だ。そんな中魔術師の行動で危険にさらすわけにはいかない。


同じ理由で奏も不可能だ。社長業がただでさえ忙しい彼女をこんなことに連れまわすわけにはいかない。


そして文の師匠の春奈も同様である。最近仕事が忙しく、修業場にも仕事を持ち込んでいる人を連れまわすわけにはいかない。何より小百合と一緒に行動していたことがある彼女は敵側に情報があっても不思議はない。


そうなると康太が連れていける人員はかなり限られる。戦闘能力もあって、なおかつあまりその戦闘能力が表に出回っていない人間が好ましいのだ。


さらに言えばあまり忙しくない人物が好ましい。一般人としての仕事がある程度融通が利き、周りに戦闘狂であるような印象を受けていない人物と言われると、康太の中にはある人物しか当てはまらなかった。


今回の作戦は重要だ。失敗しないためには実力者を連れていくしかないと康太は意気込んでいた。
















「ということなんです。お願いできませんか?」


「ははは、康太君が僕を頼ってくれるのは久しぶりだね。うん、僕でよければいくらでも力になるよ」


康太が今回の件を相談したのは小百合の兄弟子の幸彦だった。


幸彦は協会で主に仕事をしているが、本人の性格故か表立って行動することが少ないために戦闘能力に関しては噂をほとんど聞かない。


今回のような作戦にはうってつけだと思ったのである。


協会で仕事をしていたところを見つけたので声をかけたところ、幸彦は快諾してくれていた。


「でも僕で役に立てるかな?ビーがてこずるような相手がいたんだろう?」


「全力でやれば何とかなりますよ。それに前の時とは違います」


「ははは、なんだかやる気満々だね。わかった、当日移動するときは車があったほうがいいのかな?」


「どうなんでしょう・・・移動する状態のことは考えてなかったけど・・・そのほうがいいのかしら・・・?」


実際に協会の門を出て全く違う場所へ移動するのであれば、その場所への移動手段を考えておいたほうがいいだろう。


その場合幸彦の言うように車があったほうが楽は楽だ。装備を積んでいくという意味でも、運搬という意味でも車があれば移動は相当楽になる。


「どうせならちょっと大きめの車を用意しておくよ。運搬ってくらいだったらトラックのほうがいいかもしれないね・・・うん、こっちで用意しておこう。日程と場所が決まればその場所に移動させておくよ?」


「ありがとうございます。でも敵がどんなタイプかもわからないんですよ・・・以前来た奴らは主に射撃タイプだったんですけど」


前回呪いのビデオを運搬した際に襲ってきた魔術師たちは基本的に射撃系の魔術を多用する者たちばかりだった。


中にはゴーレムを使うようなものもいたが、たいていは遠距離攻撃をメインにするものばかりだ。


幸彦の得意な戦いは近距離の肉弾戦。まず近づけるかどうかが重要になってくるわけだがあれだけの攻撃密度をかいくぐるのは康太でも難しかった。


思えば幸彦が本気で戦っているところはほとんど見たことがないなと康太は思い出す。一緒に何度か協力したことはあるが、その時もほとんど幸彦が戦っているところは見ていないのだ。


移動しながら戦うとなれば射撃系の攻撃のほうが有利ではあるが、幸彦が射撃系の攻撃を有しているのかは不明である。


「ん、まぁ相手が普通の魔術師であれば大丈夫だよ。一気に近づいて殴り倒せばいいだけの話さ」


「車動かしながら戦う場合はどうするんですか?俺らは車の免許は持ってないですし・・・」


「その時はビーやベルに迎撃を任せるよ。運転は任せてくれればあとは何とかするよ。状況次第でどう動くかは決めるさ」


この辺りは経験豊富であるが故か、幸彦は自信満々に胸を叩いて朗らかに笑う。仮面がついているためにその表情までは見えないが、きっといつものような笑顔を浮かべていることだろう。


「それに、前に聞いたけどビーはトラックの上からの防衛戦はやったことがあるんだろう?」


「えっと・・・一度だけ・・・京都に行った時に師匠や姉さんと」


「なら大丈夫さ。やることは変わらない。その時は大型のトラックだったんだろう?今回は中型で済ませるから、もうちょっと小回りは利くけどね」


車の大きさ以前に、移動しながら戦うという経験は康太はかなり少なかった。文に至ってはほとんどないに等しい。


たいてい相手も自分も一定の場所にいるのが魔術師の戦いであるために、常に移動し続けている中で戦うというのはかなり難しい。


康太もかつてやったことがあるからわかるが、座標の指定そのものが難しくなるのである。


「もし移動中に襲われたら、ベルがトラックの上で、ビーは飛び回るなりして対処って感じになりそうだね」


「あ、一応バイクの運転はできるのでトラックにバイクを積み込めば移動しながら戦えますよ?」


「お、格好いいじゃないか。それでいこう。どんな奴が襲ってくるかはさておき移動手段が多いに越したことはないからね」


康太の提案に幸彦は思った以上に乗り気だった。やはり年を取っていても男の子の思考回路をしているのか、こういうことは乗り気のようだった。


わかりやすくて何よりだと思いながらも、文はどうしたものかと悩んでしまっていた。


「ビー、今回ウィルも連れていくのよね?」


「あぁ、全力で戦うならウィルが必要不可欠だからな」


「私、ビー、バズさん、トゥトゥ・・・四人に加えてウィルもか・・・結構大人数っていうか・・・体積的に多い?」


「トゥトゥの場合は来てくれるか微妙だけどな。とりあえず話だけはしておかないとダメだろ」


以前のように強制的に連れて行けたなら話は早かったのだが、今はそういう関係ではないためにきちんと話をしなければいけない。


誤字報告を五件分受けたので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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