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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十五話「釣りをするのも大博打」

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交渉は大事

「ということでまた呪いのビデオ案件だ。頼めないか?」


「・・・頼むからもうちょっと説明してくれないか?雑なんだよいろいろと」


「まぁ一年近くこのやり取りやってたからね・・・今更って気もするけど・・・そういうわけで呪いのビデオの運搬の二回目なのよ。またお願いできない?」


いつものように屋上に倉敷を呼び出した康太と文、いつものように倉敷はため息をつきながらあきれた表情を作っている。


かなり説明を省いた交渉ではあったが、倉敷ももう慣れたもので、しかも同じような依頼を以前受けたことがあるためにそこまで動揺することもなく、話を受け入れることができていた。


「えっと・・・呪いのビデオの運搬っていうとあれか・・・前に撤退した時のやつか」


「そうそう。今度は本部が本腰を入れてビデオを奪おうとしたやつらをひっ捕まえようとしているらしくてさ、大々的に囮作戦を決行するんだとさ」


「それで私たちに白羽の矢が立ったのよ。良くも悪くもいい囮だからね」


「褒められてる気が全然しないな。いい囮って・・・囮にされてるじゃん」


「同時にいろんなところで動いてダミーを持った状態で移動するんだとさ。その中のどれに本物を持たせるのか・・・っていうかそもそも行動する人たちに本物を持たせるのかどうかは不明だけどね」


倉敷としては囮扱いされているということはあまり褒められているとは思えないのか複雑な表情をしている。


危ない目に遭うとわかっている依頼であるために、簡単に承諾はできないところだった。


「一応聞いておくけど、拒否権はあるんだよな」


「あるぞ。もうお前とは自由契約だ。危ないから嫌だって思うならそれでもいいし、無理強いはしたくないし」


「一年以上無理やり連れて行った奴の言うこととは思えないな・・・まぁありがたいけどさ・・・」


倉敷としても悩むところなのだろう。腕を組んだ状態でどうしたものかと考え始めていた。


「ちなみにさ・・・戦力は俺らだけか?」


「いやもう一人いる。師匠の兄弟子が一人ついてきてくれることになった」


「へぇ・・・それは心強いかな」


「でもその人は基本的に車の運転を担当するから戦力になるかは微妙なところよ?」


「結局俺らで迎撃・・・?うあぁぁぁ・・・どうしよ・・・また前みたいに大量に来るんだろ?あんなのもう二度とごめんなんだけど」


「どうだろうな・・・今回は複数カ所で同時に運搬するからぶっちゃけ戦力が集まるかってところだし・・・各所に強い人が派遣されるんじゃないかと思ってるんだよね。前俺が撤退するときにちょっと会った感じの」


「それってお前の師匠クラスの人間が来るってことだろ?なおさらやりたくないんだけど・・・」


倉敷としては拒否する方向で思考が進んでいるようだった。こうなってしまっては仕方がないなと康太と文は互いに頷いて大きくため息をついていた。


「そうか・・・ダメか・・・いやしょうがないよな。お前だって危ない目には遭いたくないよな・・・」


「そうね・・・その分私たちの負担が激増するだけだからね・・・別に断られたって気にしないわよ?私たちがその分苦労するだけだから」


「おいやめろよ、なんか俺が悪者みたいになってないか?精神攻撃やめろよ」


「気にすんなって、俺らが死にかけている間にお前はのほほんと修業をしていればいいさ。血みどろでやられかけてる間にお前は新しい術式でも試していればいいさ」


「うちの修業場、そろそろ掃除する時期だからきちんと掃除してくれればいいわよ?私はもう戻れるかどうか怪しいから・・・お願いね・・・」


康太と文の息の合った精神攻撃に、倉敷は歯を食いしばりながら葛藤していた。


断りたいというのが正直なところだ。だが康太たちがここまで言うということはおそらく本当に危ない依頼なのだろう。


戦力は可能な限りいたほうがいい。しかも量より質を求められている。そんな中で自分に声をかけてくれたというのは素直にうれしい。


だがそれだけ危険な依頼、可能な限り受けたくないというのが正直なところである。


「せっかく新しい拠点も手に入れたんだけどな・・・俺らはもう使うことがないのか・・・あぁ、辛いな」


「大勢に囲まれて何もできないまま死んでいくのね・・・あぁ、辛いわね」


「あー!もうわかったよ!やりゃいいんだろやりゃ!手伝うよ!その代り報酬は弾めよ?絶対だからな!」


倉敷のやけくそ気味な叫びに、その言葉を待っていたといわんばかりに康太と文はその肩を掴む。


「そういってくれると思っていたよ倉敷君、やはり君は頼りになるな!」


「あんたがそう言ってくれてうれしいわ。これで私たちはだいぶ楽になるもの!」


「くっそ!こいつらマジむかつく!殺したい!殺してやりたい!」


急変した態度に倉敷は憤慨しているが、一度了承してしまった手前覆すわけにもいかない。それに以前関わった事件の延長戦ということもあって多少やる気があったのも確かなのだ。


「ところで、車で移動っぽいこと言ってたけど、そんなに遠くに動くのか?前は飛んだけど」


「今回は車だな。詳しい移動ルートはもうできてるからあとで教えるよ。体だけで移動してもいいんだけど、車のほうが楽だからな」


すでに本部の方から移動ルートに関しては提示されているためにそのルートを移動するだけなのだが移動手段に関しては各自の自由という形をとっている。


そんなことを考えたときに、康太はふと思い出す。


「そういえばお前バイクの免許は?」


「あるぞ。この間とった。なんで?」


「バイクは持ってるのか?」


「原付だけどな」


意外にもきちんと移動手段を持っていたということに康太と文は驚くが、倉敷は康太たちと一緒に行動することが多いために、報酬をもらい続けていたため案外金持ちなのだ。


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