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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十三話「追って追って、その先に」

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自慢(笑)

具体的に何をするというのが決まっていないために、マウ・フォウと違って明確に答えを出しにくい。


とはいえ、本部が考えを変えないことは今までの経験上間違いない。小百合も言っていたが、こういう場合はいかに待遇をよくするかで今後の面倒な部分を緩和することができる。多少は康太も意見を出して待遇の改善を申し出るべきだろう。


「ちなみに、依頼を出されたら本部の命令には絶対とかあります?」


「・・・君のような魔術師にそういうことを言っても無駄なことはよくわかっている。依頼を遂行してくれるのであれば手段や過程は口出ししないことを約束しよう」


あらかじめコントロールできないことがわかっていてなおかつフリーにさせるあたりさすがというべきだろうか、副本部長からわずかに苦労人のにおいが漂ってきた気がする。


支部長と案外仲良くやれるかもしれないなと思いながら、自分が本部の中でもかなり面倒くさいタイプの魔術師だと思われているということに少しだけショックを受けてしまっていた。


なるべく普通の、平和的な魔術師を目指していたというのにいつの間にこんな風になってしまったのかと康太は心の中で嘆く。


もっとも、そんな嘆きをしようものなら相方の文から非常に手厳しい指摘を受けることになるだろうが、そのあたりは置いておくことにする。


「俺が連れて行きたいって言ったら仲間を連れていくことは可能?」


「・・・正直に言えばやめてほしい。こちらが情報を統制していても君の交友関係を発端に情報が洩れかねない」


「・・・それは暗に俺の仲間が信用できないと・・・?」


「そういっているつもりだ。君自身はそこまで疑ってないが、君の周りの人間はどうだか測りかねる。約一名例外はいるが・・・」


例外。それがいったい誰のことを言っているのか康太は少しだけ考えて自分の師匠である小百合のことを思い出す。


良くも悪くも感情の赴くまま、やりたいようにやりたいことをやっている魔術師である小百合。彼女を疑ったらおそらくこの世界のほとんどの人間を疑わなければいけなくなるだろう。


何せあれほどわかりやすく理不尽な存在はほかにいないのだから。


「じゃあ師匠なら連れて行っても構いませんね。師匠と一緒に大暴れしますよ」


「・・・できるならそれもやめてほしい。今回はそれが良い形に収まったのかもしれないが・・・次がどのような結果になるかはわからない・・・正直彼女には本部の案件にはかかわってほしくないんだ」


副本部長の割と本気のため息を前に、康太は少しだけ不安になってしまう。


自分の師匠はいったい今まで何をやらかしていたのだろうかと。


「・・・参考までに、師匠は今まで本部の依頼では何をやったんですか?いや・・・何をやらかしたんですか?」


「・・・世界遺産を一つ破壊してな・・・後始末が大変だったのを覚えている。あれで実力が確かだというのだから性質が悪い」


小百合は良くも悪くも優秀だ。人間的な性格は全く褒められたものではないが、少なくとも魔術師としては一流の部類に入るだろう。


本人は否定しそうではあるが。


「とにかく、君の師匠との一緒の行動は可能な限り控えるように、今回のように日本支部が直接話をもっていったのであれば仕方がないが・・・君が積極的に彼女を参加させようとするのはやめてほしい」


「・・・ほう・・・ほうほう・・・師匠は嫌ですか、俺の自慢の師匠なのにずいぶんと毛嫌いするんですね」


「・・・心にもないことを言いよる・・・」


普段からして師匠である小百合に対して何の敬意も抱いていない様子を見ているアリスからすれば失笑ものだっただろう。


実際他に康太と小百合の関係を知るものがいたら今の言葉を聞いたら何を企んでいるのかと怪しむところだろう。


良くも悪くも康太と小百合の関係は通常の師弟のそれではないのだ。


「毛嫌いしているわけではない・・・これ以上被害を出さないでほしいだけだ」


「・・・ちなみに聞いていいかわかりませんけど・・・今まで師匠が出した物的被害って金額に直すとどれくらいですか?」


「・・・そうだな・・・私は直接その帳簿を見たわけではないから何とも言えんが・・・数字だけで言えば十桁は軽くいくだろうな」


十桁。要するに十億レベルでいろいろと破壊しているということになる。


壊すことよりも直すことの方が大変で金のかかることとはいえこれは目に余る。小百合が稼いだ金はいつの間にか本部に回っていてもおかしくはない。


「それが本当なら師匠は今頃借金生活ですね」


「そうはならん。彼女は体よく被害の総額を相手に押し付けてきている。彼女にとっては敵は壊したものを任せる相手程度にしか見えていないのだろう」


世の中の人間が全員財布代わりというのはなかなかに恐ろしい話である。


いっそのこと全て任せてしまったほうが楽だと考えたのだろうが、小百合を起用した時いろんな意味で覚悟しなければならない事案が増えることは目に見えている。


身の危険という意味でもそうだが、財布や銀行口座という意味でもかなり厳しいことになるのは避けられない。


小百合の戦い方にはそういう意味もあったのだなと、康太はすこしだけ学習したが、それを真似しようとは思えなかった。


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