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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十三話「追って追って、その先に」

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協会の内情

「そういうことだ。今回のそれに似たようなことがまた起きないとも限らん。現在金銭面での帳簿を発見したため本部の人間で調査しているところだ。マウ・フォウ、君には今後調査に参加してもらいたい」


「依頼・・・ということですか?」


「そうなる。正式な依頼書は後々発行するが、これは確定だと思ってくれていい。拒否権もあるが、我々としては君の手腕を高く買っている。受けてくれるとありがたい」


まさかの本部からの指名依頼に、マウ・フォウはかなり驚いているようだった。


評価への足掛かりなどといったが、本部からも高い評価を受けるほどに彼の実績は重いものだったらしい。


確かに金関係も含め、マフィアの背後関係、協力している組織などもすべて調べ上げる程度には今回の件に関わった。そういう意味では適任かもしれない。


「喜んでお受けいたしましょう。詳細などは後ほど詰めていけばよいかと」


「ありがとう。そういってくれると非常に助かる」


マウ・フォウに依頼を出すためにこの場所に呼んだのはまだわかる。康太としてもマウ・フォウが評価されるのはうれしいところだ。


だが少し気になっているのは康太をここに呼んだ理由だ。今回康太に先ほどの始まりの話を少しさせた程度であれば、書面でも事足りるはず。なぜこの場所に呼んだのかが少し気がかりだった。


「それで、俺を呼んだ理由は何ですか?まさかさっきの話をさせるだけ・・・なんてことはありませんよね?」


「・・・わかってくれていて何よりだブライトビー・・・今回はずいぶんと派手に動いたようだな」


「そりゃどうもお褒めに与り光栄です。それで?俺をこの場所に呼んだのはどういったご用向きで?」


康太が目を細め、警戒の色をあらわにすると康太とあまり関わりのなかった幹部連は康太からわずかに発せられる威圧感に冷や汗を流していた。


本部長と副本部長は全く意に介していないが、康太という存在が少し会わなかっただけでここまで変わるとは思っていなかったのか、少し動揺すらしているようである。


「君をここに呼んだ理由は二つ。一つはその身に宿す封印指定百七十二号についてだ。今回の報告を聞く限り、かなりコントロールができるようになってきているように思える」


「・・・まぁ、今回はかなりを気を遣って発動しましたからね・・・それなりに安全に配慮しました」


今回の作戦で構成員のほとんどを衰弱させたのは康太の発動したDの慟哭の効果が大きい。そのおかげで日本支部はかなり早い段階で制圧を完了することができたのだ。


その報告は本部にも届いていたのだろう。副本部長の視線が一瞬鋭くなるが、すぐにため息をついてその視線は緩和される。


「その力を扱えているようで何よりだが、暴走だけはさせるな。万が一にも暴走することがあれば、我々は実力行使に出ざるを得ない」


「・・・それは俺を亡き者にするとかそういう意味で?」


「君ごと封印指定を消滅させられるのであればそれに越したことはない・・・君が宿しているのはそれだけのものだということを自覚しろ」


康太と副本部長の間にある空気が張り詰めていく中、傍観し続けていたアリスがわずかに威圧感を放っていた。


「私の目の前で私の同盟相手を亡き者にするなどと・・・随分と大きく出たものだの・・・当代の本部はずいぶんと強気なようだ」


通訳に徹していたはずのアリスだが、康太が殺されるかもしれないとなれば黙っているつもりはないらしい。


康太としてはありがたいことだが、あまり康太とアリスが近しい関係にあると思われるのもよくないように思えた。


心配してくれる分にはうれしい限りではあるがそのあたりは複雑なところである。


「アリシア・メリノス、あくまで可能性の話をしただけだ。そう威圧しないでほしい」


「威圧されたくなければもう少し言葉に気をつけることだ。私を敵に回せばどうなるか、本部に教えてやってもいいのだぞ?一度見逃してやったからといって二度目があるとは思わんことだ」


一度目というのは康太と出会った時のアリス抹殺計画のことだろうか。アリスはわずかに殺気さえも含んだ視線を幹部連に向けている。


封印指定を身に宿す康太と、封印指定そのもののアリス。二人をこの場に呼んだ時点で平和な話し合いになるとは思っていなかったのだろうか、本部長と副本部長はすでに覚悟は決まっているのか堂々としている。


だが康太はこの警告を好意的にとらえていた。殺そうとするならば別に明言することもなく不意打ちも可能だったはずだ


あえてそれをしたのは、康太に対するちょっとした気遣いのようなものだろう。康太自身が上手く立ち回れるように、本部などの目があるところではあまり派手に動かないようにと釘を刺してくれているのだと康太は捉えていた。


「こいつの取り扱いに関しては注意することにしますよ・・・それでいいですか?」


「・・・そうしてくれると助かる。こちらとしても面倒は避けたくてな・・・封印指定の復活などということは可能な限り避けたい」


封印指定の復活。今封印指定百七十二号は康太が封じているという解釈なのだろうか。間違ってはいないのかもしれないが若干違うような気がする表現に康太は少し迷っていた。


とはいえ似たようなことだ。またデビットが一般人に向けて猛威を振るうようなことがあればそれこそ目も当てられない。多少行動が荒いとはいえ、康太一人許容してその被害を減らせるのであれば御の字と考えているのだろう。


「それでもう一つの用件は?」


「ん・・・今回の件を含め、協会は君たち二人を高く評価するとともに、今後、今回の件に類する事件や事象が起きた時、君たちに依頼を出そうと思う」


すでに調査依頼を出されているマウ・フォウはさておいて、康太の場合は何か問題があった時、具体的には武力を持って解決しなければいけない時に関係してくる。


それはつまり、面倒ごとが起きたらお前の力を貸せと言っているようなものだ。かかわる必要がないと思っていた面倒ごとに関わらなければならないことも出てくるだろう。


康太は仮面の下で思い切りいやそうな顔をしていたが、仮面をつけているせいで相手にはそれが伝わらなかったようである。


「ちなみに確認しておきたいんですけど、拒否権は?」


「基本的にはないと思ってもらいたい。貴重な戦力を遊ばせておくほどこちらにも余裕があるわけではないのでな」


副本部長からすれば康太は比較的動かしやすい戦力なのだろう。康太の性格的にも、そして立場的にも動かすのはそこまで難しくはない。


そして何より康太を動かせば一緒に動いてくれる戦力が何人も一緒についてくる。一粒で二度おいしいなどというレベルではなく、康太を動かすと得なことがある。


また同時に面倒な輩も呼び込む可能性が高いが。


「少々強引なのではないのか?いくらこやつが支部所属とはいえ、本部がいいように使っていいはずもないだろう」


アリスの言葉に、副本部長は目を細めていた。


思わぬ援護に康太は内心アリスを全力で応援していたが、本部としての立場も理解できるアリスからすればこの反論に意味がないことを知っていてなお告げたことだった。


こうしてアリスが口を出せば、康太の価値が上がると思ったのである。封印指定である自分が康太を守っているようなそぶりを見せれば、康太がそれだけ重要人物に該当するのではないかと考え、あえて反論しているのだ。


「アリシア・メリノスの言うことももっともではあるが・・・今回の件に関わるものであり、なおかつある程度実績のあるものというと数が限られる。今回のことで、本部はある懸念を抱えたのだ」


「・・・懸念・・・?」


「そうだ。本部、あるいは支部の中に今回の事柄を扇動、ないし実行に移したものがいると考えている」


「・・・協会内部に犯人がいると?」


どのような過程を経てそのような考えに至ったのかは不明だが、少なくとも何の確信もなしにそのような話をしているわけではないらしい。


他の幹部たちを見ても何も驚いていない。おそらくすでに何度も話し合った結果なのだろうことがうかがえる。


「それで・・・ある程度信頼できる人間を使おうということですか?」


「そういうことだ。あいにく君の場合は御しやすさと、日本支部の中での評判、そして私の個人的な見解で適用した」


個人的な見解というのが非常に気になるところではあるが、康太は一応本部の中ではある程度の地位を築いていると思っていいのだろうかと少しだけ悩んでしまっていた。


体よく利用されているだけな気もするだけに複雑な気分だった。


「だからと言って、こやつを好きなように使うのとは話が別だ。こやつはまだ学生だぞ。大人の都合に巻き込むには少々子供すぎる」


「子供であろうと実力は確かだ。使えるものは何でも使うのが魔術師としての在り方だろう」


「子供に頼らなければいけないほどに本部は衰退していたとは・・・嘆かわしい限りだ・・・初代が聞いたら何というかな・・・」


康太が子ども扱いされるのは珍しく、康太自身もあまり子ども扱いされた覚えがないために非常にむずがゆくなってしまっていた。


というかアリスの本当の姿を知っている康太からすれば、お前に子ども扱いされたくないよと言い返したいところなのだが、そのあたりは数百年は生きた魔術師だ。反論したところで鼻で笑われるのがおちだろう。


「俺を挟んで俺を子ども扱いするのはやめてくれないか?子供であるのは事実かもしれないだけにちょっと複雑だけどさ・・・本部からすれば俺への依頼はどういう形で出すつもりなんです?強制的に連れていかれる感じですか?」


「さすがにいきなり連れて行ったりはしない。きちんと筋を通して依頼書を作らせてもらう。もっとも、急を要する話だった場合はその限りではないかもしれないが」


いつどこで誰に呼び出されるか分かったものではないと言っているようなものだ。康太からすれば軽くめまいを覚えるような内容なだけにため息しか出なかった。


「子供を無理やり連れていく・・・まるで拉致だな・・・警察に通報したら助けてくれるかね」


「やめておけって・・・っていうか、まだ俺の力が必要かどうかもわからないんでしょう?それならまだそんな話はしなくても・・・」


「間違いなく必要になる。これだけ組織的に動いていることが見え隠れしているのだ。おそらく相手にするのは一人や二人ではない。大多数の戦闘になった時、戦力は多いに越したことはない」


「ちなみに聞いておきたいんですけど、俺以外の戦力は具体的には?」


「何人か候補はいる。だが教えることはできん」


内部に裏切者がいることを想定しているということもあって、誰を信頼しているのかを明かすようなことはしないようだった。


この話もきっと表に出してはいけないのだろうなと考えながら康太は少し悩んでいた。


日曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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