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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十三話「追って追って、その先に」

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繋がる先にはまだ

後日、康太は手紙で渡された通り本部からの召集を受けていた。近くには当然のようにアリスも控えている。


彼女の目的は単純に康太の通訳が目的だった。今日もいつも通りというべきか、康太のために通訳を買って出てくれたのである。


「悪いなアリス、この間の今日で無理言っちゃって」


「構わん。久々に本部の空気というものを感じるチャンスだ。最近はずっと引きこもっておったからの」


引きこもっていたというのは何も謙遜や冗談で言っているわけではなく、アリスは本当の意味で長い間引きこもっていたのである。


小百合の店や康太の家にいる時も、基本的には部屋の中にいる。そしてたいていが趣味に走っている時なのだ。


漫画やアニメ、ゲームに小説、最近ではドラマなどにもはまっている様子。日々の生活だけ見ていればニートと変わりないような自堕落な生活を送っているのである。


「まぁ、こうして外に出てくれるのはありがたく思うけどな・・・最近神加のやつがお前の真似してだらだらしそうで嫌なんだよ・・・」


「相変わらず弟弟子には甘いことだ・・・あ奴も少しずつ回復しておるのだからそこまで気にする必要もないと思うがの」


そんなことを話しながら康太とアリスは本部に続く協会の門をくぐる。すると康太の目の前に康太が知っている人物が立っていた。


「おや・・・君たちも来たのかい」


「あれ、マウ・フォウさん。お久しぶりです。その節はお世話になりました」


そこにいたのは今回の騒動の切っ掛け、というか騒動にまで発展させるために調査を続けた調査系魔術師のマウ・フォウがいた。


類まれなる調査能力を持つ彼のことを康太は素直に尊敬している。康太のような戦闘能力は持っていないが、彼のもつ技術や実力は確かなものだ。


何か調べたいことなどがあったら彼に頼めば何とかなるというのが康太の考えでもある。


「今回は大変でしたね・・・長い間中国にいたとか?」


「って言っても実際は協会を経由して日本と行き来してたけどね。なかなかに面倒な案件だったよ。その分懐は温まったけどね」


どうやら今回の調査で本部か支部からかなり大きな額の謝礼をもらったようだった。それも当然の話だろう。これだけの調査結果を出されては本部としても謝礼をたっぷり与えないと今後のモチベーションに関わるというものだ。


「すいませんでした、いろんな意味で面倒に巻き込んでしまいまして」


「いやいや、こちらとしてはそれを飯の種にしているからね。むしろありがたいくらいだよ。君のおかげで協会の評価の足掛かりができた・・・本当にありがとう」


「・・・そういっていただけるといくらか気が楽です」


マウ・フォウと初めて会った時とは違い、今回は康太が関わった案件にマウ・フォウを巻き込んだ結果となる。


しかもその調査内容がとてつもなく面倒だったのだから謝罪もしたくなるというものである。


マウ・フォウ自身はそんな風には受け止めていないようだったが、外国での調べものとなると勝手が違う分大変だっただろうと、康太は少しだけマウ・フォウの苦労を理解しようとしていた。


「ところでなぜあなたがここに?ひょっとして本部に栄転ですか?」


「あはは、一応日本から離れるつもりはないんだけどね。きっと君と同じ理由だと思うよ?こっちも呼び出しを受けたのさ。連日報告書とか調査結果の伝達とかでまともに寝てないんだけどね」


大きなあくびをしながらも、意識だけははっきりしているようだ。なぜ自分の周りにはこう過労死しそうな人間が多いのだろうかと康太は眉をひそめていた。


奏といいマウ・フォウといい、なぜ優秀な人間ほど過労死寸前になるまで働くのだろうかと、日本の闇を垣間見ながら康太はマウ・フォウの視線に気が付いてアリスの方を見る。


「あぁ、そういえば紹介してませんでしたっけ。彼女はアリス。俺と最近行動を共にしてる魔術師です。アリス、この人が前話してたマウ・フォウだ」


「あぁ、話は聞いている。凄腕の探偵ということだったな」


「凄腕だなんて、大したことはないよ。初めましてアリスさん。マウ・フォウだ。よろしくね」


アリスとマウ・フォウはそれぞれ手を出してしっかりと握手する。アリスが子供の外見だからか、それとも康太の紹介だからか全く警戒していないようだった。


「ブライトビー、君にはいろいろと恩がある。もし今後何か君が困ることがあれば頼ってほしい。少しは力になれるだろうから」


「ありがとうございます・・・でもそんなにたいしたことは・・・」


「いいや、君は確かに私を助けてくれたよ。君はそういう自覚はないかもしれないけれどね」


マウ・フォウが発端となって康太が関わった事件では、康太のおかげで事件が解決したといってもいい。

そういう意味でも、彼は康太に強い恩義を感じているようだった。


そんな必要はないと康太は言いたかったが、それはお互い様のようだった。


「まぁ、君の場合強いだろうからたいてい何とかなってしまうのかもしれないけど、どうにもならなくなったら頼ってほしい。そのほうが嬉しいからね」


「・・・わかりました。いざという時には頼りにさせてもらいます」


「うん、そうしてくれ。最優先で請け負うよ。今なら三十パーセントオフ」


商売上手だなと康太は笑いながらマウ・フォウを伴って集合場所になっている会議室までやってくる。

その部屋には本部長を始めとする本部の幹部たちがそろっていた。


「来たか・・・アリシア・メリノスがいるのはいつものことか」


「通訳代わりに連れてきました。おまけだと思っていてください」


「ふふん・・・五つ集めると金のアリスに交換できるぞ」


「お前元から金色っぽいだろうが。それはさておき、俺とマウ・フォウに何の用件で召集を?」


そう聞きながらも康太は大まかにではあるが何を目的にしているのか察しはついていた。


今回の事件、日本の九州地方において発生した魔術師の過密地帯を皮切りに発覚した魔術師による情報漏洩。


康太は始まりの事件に、マウ・フォウは情報漏洩に至るまでの過程に関わってきた魔術師だ。何かしら聴取があることは容易に想像できた。


康太とマウ・フォウが幹部連の前に立つと、副本部長が康太の方に視線を向けてから口を開く。


「まずは今回の件、ご苦労だった。二人の活躍によって魔術の隠匿はつつがなく終了した。まずは感謝を」


心にもないことを言っているなと康太は副本部長の方を見ながら目を細める。あまり副本部長とかかわっていないマウ・フォウはその言葉をまともに受け止めているようだが、今はそのことは置いておくことにする。


「君たちも予想できていると思うが、今回の件に関しての情報をまとめておきたい。報告書である程度把握はしているが君たちの意見を含めて聞いておきたい」


報告書はあくまで事実しか記載されていない。現場にいた人間の個人的な意見も聞きたいというのは珍しい意見だ。


こういう報告に関しては個人における主観性を排除したものの方が信頼性が増すと思うのだが、副本部長を始め、他の幹部連も康太やマウ・フォウの私見を聞きたいという考えのようだった。


もっとも、幹部連の興味は康太よりもマウ・フォウの調べた情報にあるのだろうことは康太も予想できていた。


「まず事の発端から話してほしい。ブライトビーから頼む」


「・・・報告書に挙げた通りですが・・・日本支部の依頼で日本のとある都市において魔術師の活動がいやに活発になっているという情報を得たということで調査したのが始まりです。調査結果は報告書の通り、かなりの魔術師が拠点をその場所に移していました」


「確か、魔術によって認識を操作されていたんだったか?」


「はい。まず間違いなく。明らかに居住地と離れている場所にもかかわらず、その場所を妙に気に入っているような者が多すぎました。そしてそれを行っている魔術師が中国支部を拠点にしている魔術師であるということを日本支部の魔術師との協力で判明させました」


「それも確認している。右足を引きずっている白黒の仮面をつけた魔術師という報告を受けている。そしてその魔術師も確保してある・・・だが問題はそこだ」


問題はそこ。康太から聞きたいことがいったい何なのかは不明だが、今回のことの始まりともいうべき魔術師を捕えているのだから問題はないのではないかと思ってしまった。


「君の話では、認識操作、人間の価値観を操作、所謂一種の洗脳に近いだろうが、そういった魔術を扱える人間が裏で手を引いていたと考えるのが自然だろう」


「そうですね・・・俺らはその白黒の魔術師がそうなのではと考えていましたが」


「先日、本部の方でその魔術師を少々調査させてもらったのだが・・・その魔術師はそういった魔術を覚えていなかった」


副本部長の言葉に康太は眉を顰める。てっきりそのパンダな魔術師が裏で手を引いていたと考えていたのだが、そういうわけでもなかったらしい。


「ちなみに、その調べ方っていうのは?」


「薬物投与、精神操作魔術等、相手に自白を強要する類の方法だと思ってくれればいい」


一般人ならば法に触れるような方法ではあるが、康太たちは魔術師だ。目的のためには手段など選んでいられない。


そういう意味では適切な対応だと言わざるを得ないだろう。良くも悪くも魔術師という生き物は実を取る生き物であるということである。


「その魔術師が今回マフィアに情報を流してたんですよね?流してたっていうか情報を扱わせていたというべきですか」


「そうだ。そういう意味では今回の隠匿作戦自体は成功なのだが・・・事の始まりを考えると、まだ終わっていないと考えるのが自然だろう」


まだ終わっていない。康太は眉をひそめていた。あの大量に魔術師がいた状況を作り出した魔術師はまだどこかにいる。


中国のマフィアとつながっていた魔術師は、あくまでつなぎ役、あるいはパトロン的な意味合いしかなかったのだろうか。


ここまで考えて康太はようやくマウ・フォウが呼び出された理由を正確に理解していた。


「ここまで話せばわかるだろう。マウ・フォウ、君も呼んだのは今回壊滅させたマフィアの金銭面における情報の詳細を確認したかった。おそらくあのマフィアはあくまで実行の補助と金銭面におけるフォローをしていただけだ。我々としては同様の行動がまた引き起こされるのではないかと考えている」


今回のマフィア自体が今まで各国で起こっていた魔術師の密集を引き起こしたのではなく、マフィアはあくまでその協力をしていただけと本部の人間は考えているようだった。


今の話を聞けば納得もできる話である。


「なるほど・・・そのマフィアが援助をしていた、あるいは協力していた組織がほかにいると考えたわけですね」


マウ・フォウの言葉に本部長を含め幹部連の人間は面倒くさそうにため息をつく。彼らにとってもこの手の面倒ごとは嫌なようだった。そしてすべての幹部連の視線が副本部長のもとへ向かう。


この中でこの案件を担当しているのは副本部長なのだろうか、幹部連の中でも副本部長が一番面倒くさいオーラを出しているように思える。


土曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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