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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十三話「追って追って、その先に」

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いやな予感ほど

「拍子抜けしたか?一般人相手の戦いなどこんなものだ。どんなに武装しようがそれはあくまで武器だ。本人の実力じゃない」


「・・・武器や道具を使うのはその人の強さではないってことですか?」


「武器を扱うのがすべてと思うなということだ。武器はあくまで武器でしかない。自分を強くしたいのであれば武器だけではないところも鍛えなければならない」


襲い掛かる構成員を撃ちぬきながら、小百合は小さくため息をつく。そろそろ弾丸が尽きそうなのか、腰についた予備の弾倉に入れ替えていく。


手慣れた手つきに驚きながらも、康太はリロード中の小百合を守るべく周囲を警戒する。だがやはりというべきか、さすがというべきか、周囲にまともに動ける敵が全くいない。


攻撃によって相手を全員行動不能にしたうえでリロードする。これを意識してやっているのかそれとも無意識でやっているのか、少し気になるところではあったが、少なくとも小百合は攻撃されることはないだろうと高をくくっているようだった。


リロードを終えた小百合は止まることなく建物を上へ上へと進んでいく。そんな中、小百合の弾丸を受け止めるものがいた。


警察や機動隊などが所有している防弾用の盾。いったいどこから持ち出したのだろうか、ここから先に進ませたくないのだろうか、意識も朦朧としているだろうにふらふらしながら盾を持ち、その隙間から小百合を狙っていた。


一人盾一枚、それを横に並ぶように展開することで弾丸を通さない物理的な壁を作り出していた。


「あぁ・・・あぁいう努力は認めてやるべきだな。明らかに無駄な努力でも足掻こうとしている根性のある奴らだ」


「無駄なんですね」


「あぁ無駄だ」


そういいながら小百合は盾の隙間を狙い撃ちぬく。盾と盾の隙間を割って進むかのように弾丸は盾の向こう側に吸い込まれた。


僅かにうめき声が聞こえる中、小百合はわざと照準を外し、明後日の方向へと弾丸を放つ。


小百合の放った弾丸は壁や床に当たり軌道を変えていく。跳弾と呼ばれるその現象を小百合は巧みに使い、わずかに存在する盾の隙間を縫って向こう側の人間に弾丸を命中させていた。


「この程度のものだ、数発撃てば片が付く。それに結局のところこちらは無傷で済む・・・警戒するべきはトラップくらいか」


「トラップ・・・ですか」


「私もトラップの類の知識はあるが、一流の人間が作ったトラップを見抜ける自信はない。殺気もくそもないただの道具なら一撃を受けることは十分にあり得る」


「・・・でもそういうのって索敵で発見できますよね?俺今常に索敵発動してますからたぶん万が一にも引っかかりませんよ?」


小百合のような人間には、ただの道具による自動的な、システム的な攻撃こそ攻略の対象となるのだろう。


人間の放つ殺気や気配などを感じ取って相手の動きを察知する小百合にとって、ただの道具や機械は相性が悪いのだろう。


もっともただの道具や機械であればたいてい小百合はバラバラにできてしまうのだが。


「それは重畳。私の安全はもはや守られたといっても過言ではないわけだな」


「若干過言な気がしますけど・・・まぁいいです・・・それで師匠、このまま倒していくのはいいんですけ・・・っ!?」


康太が小百合の後に続いて進もうとした瞬間、康太はそれを感じ取った。小百合もすでにそれを感じ取り、銃口を向けているがそれよりも早くその攻撃が小百合へと向かっていった。


小百合の体めがけて放たれた無数の針。明らかにただの弾丸などではない。ボウガンの類でもないため、これが何らかの罠、あるいは魔術であることははっきりしていた。


康太が前に躍り出ると同時に外套に擬態させていたウィルを変化させて鎧を顕現させる。


襲い掛かる無数の針はウィルの鎧によってすべて防がれていく。康太が攻撃を防ぐのと同時に小百合は二発弾丸を放つ。壁や床を跳弾して針が飛んできたであろう方角へと向かって行ったが、苦悶の声は聞こえてこなかった。


「あぁ・・・予想通りか・・・やはりいたな」


「これだから師匠の勘は嫌なんですよ・・・悪いことばっかり的中するんですから」


「私が悪いような言い方をするな。私が言わなくてもこいつはいただろうよ」


「そうかもしれませんけど・・・ったく・・・そこ!」


康太は通り過ぎようとした壁に向けて、ウィルの体の一部を腕に集め、噴出の魔術と合わせて強力なパンチを繰り出す。


康太のパンチが壁に直撃するその直前に壁は砕け、その向こう側にいた人間の姿が康太と小百合の前に現れた。


康太は奇襲のつもりだったのだが、どうやら同じことを考えていたのか、壁を砕きながらこちらへと攻撃してきた魔術師の攻撃と康太とウィルの合わせ技が衝突する。


それは周囲の金属を集めて作られた拳だった。ウィルを硬質化させて作り出された拳とは対照的に、歪さと醜悪さが目立つ。


その異様な姿、そして索敵に引っかかるその魔力によって、康太はこの人間が魔術師であるという確証を持つ。


「ビー、話していた通りだ・・・掃除は任せた」


「了解しました。先に行っててください。とっとと片づけますから」


康太は腰から槍を取り出すと同時に構築の魔術を発動し竹箒改をその手に取る。


康太のその姿を見ようともせず、小百合は先ほどと同じペースで歩みを進める。


小百合を止めようとする魔術師の前に康太が槍で斬りかかりそれを阻止する。


「お前の相手は俺だってさ。お相手してくれよジャンクマン」


舌打ちが聞こえる中、康太は仮面の下で薄く笑みを作っていた。やはりこの師匠と行動を共にするとこうなるのだなと、内心ため息をつきながら。














建物の外で待機している中衛の魔術師たちは徐々に内部への干渉を始めていた。


実際に戦っている魔術師たちのフォローを行うべく、常に建物の中を索敵し、その情報を内部にいる味方へと伝達し続けている。


もちろんその中に文もいた。文は主に康太のフォローを行うべく、康太の状態を把握し続けていた。

もちろん、康太が魔術師と遭遇し戦闘を開始したこともすでに把握できていた。


「支部長に伝えてください、相手側にも魔術師がいます。ビーが接触しました。一人とは限りませんので全員に魔術師がいることを伝達してください」


「了解した。ブライトビーが対応しているのであれば問題はなさそうだな・・・デブリス・クラリスは?」


「ビーを置いてさっさと先に行ったようです。今は別行動を」


「弟子の心配も一切なしか・・・全く・・・ブライトビーが不憫だ」


康太の実情をあまり知らない魔術師からすれば、師匠から見捨てられた弟子のように映るのかもしれないが、実際はそのようなことはない。


小百合は康太の実力を把握し、信頼してあの場を任せたのだと文は理解していた。


康太と相手の戦闘をつぶさに把握している文だが、相手は康太より少し格上の魔術師であると感じていた。


実際に対峙している康太がどのように感じているのかまでは文も把握できないが、少なくとも油断できるような状況ではないのは間違いない。


「他にも魔術師がいるかもしれません。索敵を密にして警戒を怠らないように。増援の可能性も十分にあり得ます。後衛の人間も急襲されるかも」


「了解した、支部長に伝達しておこう。何人か後方の援護に回れ!背後を突かれるかもしれないぞ!」


中衛のリーダー格の人間が何人かに指示を出して後衛の護衛に人員を回す中、文は康太の戦いを観察していた。


相手は周囲にある金属を操って攻撃している節がある。康太が所有している金属がその効果を受けていないことから、おそらく何かしらの仕掛けをしないと発動しないタイプの魔術を使っているのだろう。


だがその金属の量はかなりのものだ。建物内部にある金属の中で、使えそうなものにはすべてマーキングをしてあったのだろう。


康太がウィルを使って攻撃と防御を行うように、相手は金属片を大量に用いて攻撃と防御を行うようだった。


ウィルを使っての打撃、槍を使っての斬撃、それらは魔術師が纏う金属片によって阻まれてしまっていた。


康太との相性は悪くはない。互いに距離を詰めての戦いを得意としているようだ。


索敵によって把握できるその素質は康太よりも上。今はDの慟哭をその魔術師に集中して発動しているとはいえ、それでも相手のほうが魔力の供給量は多いようだった。


長期戦は不利。康太と文の考えは離れていても一致していた。


「大丈夫か?ブライトビーも苦戦しているようだが」


「問題なさそうです。危ないようなら私がフォローします。皆さんはほかのチームの援護をしてください」


傍から見れば苦戦しているように見えるだろう。ウィルの攻撃をことごとく防がれ、相手の攻撃を少なからず受け止めている。


とはいえダメージはない。康太の動きから文はそれを察知していた。


苦戦というより、攻略法を未だ見いだせていないだけの話だ。康太と種類こそ違えど相手も機動力はそれなりにあるらしく、康太の噴出の魔術でも捕まえ切れていない。


だがそれも時間の問題だ。すでに康太は相手の動きに慣れつつある。


急加速急減速する康太の噴出の魔術に対して、相手は地面を滑るように移動する。文はそれを見て床にちりばめられている鉄の欠片などを用いて磁力で滑走しているのだなと分析していた。


おそらくは雷属性の魔術を使い、磁力を操ることで戦っているのだ。


文の戦い方に近いが、また少し趣が異なる。


「どうしようもなくなったら言ってくれ、援軍を差し向ける」


「必要ありませんよ。今近くに行っても邪魔になるだけです・・・たぶんそろそろ・・・」


文の言葉を肯定するかのように、康太は魔術師の懐に潜り込むとウィルの体を巨大な拳に変化させ、魔術師めがけて噴出の魔術と組み合わせて振りぬいた。


その体に金属片を完全に展開するよりも早くぶつけたその攻撃は魔術師の体を壁にたたきつけ、その壁を突き抜けて屋外へと追いやった。


「あぁもう・・・室内で戦えって言ってるのに」


「周囲に一般人はいない。屋外に出てくれたほうが援護はしやすいが・・・」


「私の方でフォローします。他のチームへの援護はお任せします」


文は自らのうちにある魔力を高めていつでも康太の援護ができるように集中力を高めていた。


必要ないと言いつつも文としても援護の一つはしてやったほうが効率よく進むと考えていた。


心配というのとは少し違うかもしれないが、力になりたいと思っていることに変わりはない。


そして魔術師を追いかけるように康太が穴の開いた壁から飛び出してくる。その体にウィルの鎧をまとい、魔術師めがけて突進する中、魔術師も迎撃しようとその体にまとっている金属片を活性化させる。


勢いよく周囲を舞う金属片は、あたりにある鉄パイプや釘、落ちているごみなども巻き込んでその体の一部に変えていく。


奥の手を出してきたのだなと感じたのか、康太はウィルの形を変化させていく。防御よりも攻撃を優先したその姿は、鎧というよりは武器と形容したほうが正しそうだった。


日曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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