誰の味方かブライトビー
「あれか・・・例の建物は」
「あれですね・・・ぶっちゃけ周りより少し大きいだけのただのビルに見えますけど」
康太と小百合、そして前衛組の魔術師は各所に散らばって今回攻略する建物を確認していた。
建物の屋上などから攻略する建物を確認して外観からその状態を確認する。前衛の人間にできることといえばその程度なのである。
建物の中の見取り図はわかっているために、あとは中の人間をすべて排除するだけ。無論非番の人間などもいるが、そのあたりは中にあるであろう資料から割り出して中国支部に殲滅してもらうしかない。
「あれくらいの建物ならどれくらい詰めてますかね?百人くらい?」
「まぁ百人から五百人の間といったところか・・・少なくともあそこに千人は無理だな。常にいる人間としては百人、外回りで百人、交代要員で百人くらいか?」
「だいぶ大雑把な計算ですね・・・で、師匠はやっぱり正面突破ですか」
「ん・・・まぁそうだな・・・せっかくだからちょっとマフィアっぽい戦い方でもしてやるか・・・本当だったらあの建物を爆破するくらいのことはしたいんだが」
「それだとマフィアってよりはコマンドーよりですよね・・・まぁそのほうが圧倒的に早くて楽なんでしょうけど」
建物を攻略するとき、建物の中にいる人間と戦うよりも建物を壊す方向で進めたほうが圧倒的に早い。
建物の爆破解体と同じ要領で建物ごと中にいる人間を殺してしまえばいいのだ。はっきり言っていちいち攻略するよりずっと簡単である。
そうしないのはひとえに建物の中にあるであろう情報が重要なのである。たいていのものはパソコンなどで保管しているであろうそれらを回収するには、やはり一度中に入って確認しなければならない。
情報だけを綺麗に消去するにはどうしても中を調べる必要がある。
そのためにも中にいる人間はいない方が助かるのだ。なんとも恐ろしい内容なのだがこれも魔術師の仕事とあきらめるしかない。
「ブライトビー、頼むからちゃんとお前のところの師匠の手綱握っててくれよ?戦ってていきなり建物崩壊とか笑えないからな」
「わかってますよ。というわけで師匠、壊すのは結構ですけど壊しすぎないように注意してくださいよ?」
「お前は一体どっちの味方だ。協会か、それとも私か」
「俺が師匠の味方になったことなんて一度もありませんよ。まったく失礼な」
「よし分かった。日本に帰ったら覚えていろよ」
前衛の人間は康太と小百合のやり取りに慣れてきたのか、それともあれも一種の師弟関係の形なのかと思い始めたのか、殺伐とした会話を聞きながらも拠点を観察するだけの余裕ができ始めている。
ちなみに当たり前ではあるが、街に出た時点で康太たちは仮面を外している。康太が学生であるということ、そして小百合の目つきがすごく悪いということを初めて見た者もいるだろう。
良くも悪くも魔術師というのは素顔を隠す。そのためこうして二人で歩いていると姉弟のように思えなくもない。
「で、師匠ぶっちゃけどうするんですか?マフィアらしい戦いって俺イメージできないんですけど」
「日本のやくざと同じようなものじゃないのか?とりあえず奇声を上げながら突っ込めばいいんだろう?」
「めちゃくちゃ目立つじゃないですか。明かに忍ぶ気ゼロですよ」
「忍者じゃないんだからいいだろう。そもそも私は隠れるとか隠すとか騙すとかいうことが苦手だ」
「よく知ってますよ・・・周りの道からは見えないですね・・・大通りからも少し離れてる感じですか」
「うむ、いい感じの立地だ。あれなら多少派手に動いても問題はないな」
「さすがに火事とかがあると面倒でしょうけど・・・っていうか中国のそういうのってどうなってるんですかね?救急車とか消防とか」
「気にする必要はないだろう。何せ私たちは気づかれる前につぶす必要があるんだ。火をつける必要があるかは微妙なところだが、そういうのが到着したころにはすべて手遅れという形が好ましいな」
言ってることは明らかに犯罪者だなと康太は眉をひそめながら双眼鏡で目的の建物の周辺を確認していく。
自分もこれからその犯罪の片棒を担ぐことになるんだなと康太としては非常に複雑な気分ではあったが、少なくともやらなければいけないことは間違いない。
こんなことをやらかした魔術師には強い殺意を覚えるが、すでに捕まっているということもあって康太がどうこうすることはできないだろう。
「今のところ魔術師っぽい人間はいないですけど・・・本当にいますかね?」
「・・・どうだろうな・・・いやな予感は抜けない・・・たぶんいる」
「・・・師匠の勘は当たりますからね・・・」
「お前は何も感じないのか?いやな予感だのなんだのは」
「俺のはまだそんなには・・・たぶん直前になったらわかるんじゃないですか?師匠ほど俺の勘は鋭くないんで」
「まったく・・・ダメな弟子だ・・・少しは私を見習え」
「絶対に嫌です」
この二人は本当に師弟関係なのかなと周りにいた前衛の魔術師たちは眉をひそめていた。これが普段の二人の会話だということは知るものはほとんどいない。




