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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十三話「追って追って、その先に」

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現地へ

康太たちは協会の門がある程度すいた段階で中国の広州へと移動していた。


広州という都市は十一の行政区画からなる中国の一つの市である。人口は約千二百万。気温は基本的に暖かい。だがそれは日本と比べての話である。


都市中心における夜景は素晴らしいの一言に尽きるが、逆にその夜景が楽しめない場所も多く存在する。

優雅で煌びやかなのは一部のみ、それが広州市の一般的な評価である。


その証拠というべきか、治安の善し悪しもはっきりと明暗の如く分かれている。


高層ビルが立ち並ぶ新都市および一部区間では比較的治安もよく、多少運転の荒さが目立つが、それ以外は比較的治安は良い。あくまで日本と比べての話だが。


だが旧都市、そして北部では治安はお世辞にも良いとは言えない。悪く言えばスラム街などといえるような光景が広がることだろう。


康太たちが今回攻略する場所は旧都市にあった。治安は良くはない。だが治安が良くないほうが魔術師としては好都合というべきだろう。


康太たちは広州にやってくると、まずは新都市のビルの一角に集まっていた。中国支部に所属している魔術師が所有しているビルの一つ、そこを拠点として今後の詳細を詰めていくのである。


地図などを確認して攻略する場所は把握していても、やはり現地を見ていないとわからないことというものは多い。


そのためある程度詳細を詰めたら現地を確認しに行く必要も出てくるだろう。


「初めまして日本支部諸君。私は今回諸君の手伝いをさせていただく中国支部の指揮を任されている魔術師『ヤールベイ』だ。今回の作戦ではわからないこと、頼みたいことがあったら私に通達してほしい。可能な限り善処させていただく」


今回日本支部をフォローしてくれる魔術師の挨拶があったところで、康太たち魔術師は全員気を引き締める。


すでにアリスの翻訳が始まっているために全員が彼の言葉を理解することができている。おそらく彼自身は日本語ではなく中国語などで話しているのだろう。


アリスは今この部屋の一番後ろで集中している。というか話を聞く気がないのか聞く気があるのか腕を組んだ状態でうつむいてしまっている。


寝ているのではないだろうかと一瞬思ってしまうが、翻訳はされ続けているために一応起きてはいるのだろう。


康太たちが集まっているこの場所は広めの部屋に机と椅子が並べられ、すでに前衛中衛後衛の三班に分かれている。その三班それぞれで確認することや気をつけることが異なるために、中国支部との連携をしやすくするためあらかじめ分配しておいたのである。


「今回の攻略戦は日本支部が主力ということで、私たち中国支部はその周辺地域の閉鎖、および警戒に当たる予定だ。一般人が近寄らないように、そして周辺住民に気付かれないように手配する。雑多な路地裏などもあるためあらかじめ調査して人がどのあたりにいるのかも調査済みではあるが、作戦開始時には各々注意してもらいたい」


あまり治安のよくない場所というのはあらかじめ調べておいたために、どのようなことが起きるかはわからない。


特に見えにくい路地裏などからいきなり人が現れるということも十分に考えられる。索敵を密にしておかないと一般人に見られる可能性が出てきてしまうだろう。


「あらかじめ中国支部の方々には周辺一帯の浮浪者、一般人への対応をお願いしている。作戦開始まであと五時間ほど、各員は現場の状況を確認してもらいたい」


ヤールベイの説明を引き継いで支部長が全員に指示を飛ばす。現段階で必要なのは現場の把握だ。


あまり攻略目的の周辺をうろつくわけにはいかないが、良くも悪くも現場を把握しておかないと攻略することができない。


魔術を駆使して隠匿しながら必要な情報を収集し、中国支部に必要なもの、必要なことを洗い出してお願いしなければならないだろう。


「前衛、中衛、後衛それぞれみるべき場所も違うこともある。案内人をお願いしてそれぞれ動き出してほしい。ということでヤールベイ、各員の道案内の人員の配置をお願いできますか?」


「わかりました・・・ところで通訳なのですが、広範囲に広がっても問題はないのでしょうか?」


今こうして話ができているのはあくまでアリスが通訳しているからだ。逆に言えばアリスの通訳の範囲から外れてしまえば言葉が通じなくなる可能性が高い。


「ん・・・アリシア・メリノス、通訳なんだけれども、広範囲になってしまうが構わないかな?」


「あまり離れてくれるなといったはずだが・・・途中で通訳が粗末になっても問題ないということであれば請け負おう」


広範囲に広がればその分当然アリスの負担は増す。そういう意味ではあまり広く活動したくはないのだが、広く確認しなければ実戦で使い物にならないというのもまた事実。


「では一応、日本語の話すことができる人員を配置しましょうか?あるいは英語が話せれば・・・」


「こちらも何名か英語、中国語を話せる人員を用意しています。それぞれの班に何名か同行させましょう」


話としては各班に通訳用の人員を配置し、班で行動するということになりそうだった。


とはいってもこの大人数だ。全員で移動していては明らかに目立ってしまう。


人員の配置、そして現場の調査、あらかじめ動くのをなるべく控えるということが日本支部と中国支部の間である程度決められていたとはいえ、現地調査がほとんどできなかったのは少々痛い。


前衛にとってはそこまで問題ではないが、中衛と後衛にとってはそれなりに厳しい条件となりそうだった。


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