↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十三話「追って追って、その先に」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1014/1515

支部同士の考え

「現段階で質問はあるだろうか?各支部ごとまとめてくれるとありがたい」


進行役の魔術師の言葉に、周りの魔術師たちはどうしようかと話し始める。ある程度疑問や質問などは考えてきていたのだろうが、用意されている資料の完成度が高く、たいていの疑問はこれを見ることで解決できるようなものばかりだったのだ。


ないのであればということで康太は支部長に耳打ちする。


「支部長、もし仮に制圧がつつがなく終わった場合、他の支部の手助けに入るべきでしょうか?」


「ん・・・そのあたりは微妙なところだね・・・他支部が介入することでかえって連携が難しくなる場合もある・・・それに他支部からすれば、横から口出しされるのはあまり良い気はしないだろうね」


支部ごとの攻略と最初から決まっている中で、他の支部の手助けを受けるということはすなわち、他の支部よりも劣っているという証明になりかねない。


無論攻略対象の難易度にもよるのだろうが、手助けをされたという結果が残る時点でその支部からすれば強い劣等感を抱かされることになるだろう。


組織というものは良くも悪くもメンツにこだわる。他の支部がらくらくこなしていることができないなどとは思われたくないのだろう。


「ブライトビーとしては、今回はどうするつもりなんだい?封印指定の力を借りるつもりなのかな?」


「・・・本部が関わってるってこともありますから・・・一度しっかりこの力をコントロールできてるってところを見せるのもいいかと思ってます・・・ただ相手が魔術師ではなく一般人ってところが難しいですね・・・一気に吸い上げるくらいならできるんですけど・・・あんまり数が多いと調整が難しいかもです」


康太はDの慟哭の制御が完璧にできているというわけではない。康太が使えているDの慟哭の力はあくまで一部でしかない。そのためなのか康太自身の技量が足りないのか精密な操作はあまりできないのである。


もとより康太は魔術の細かい操作などはあまり得意ではない。広範囲に瘴気をまき散らして吸うか吸わないかを決めることくらいはできるが、個人単位で吸う量を調整するといった微調整ができるとは思えなかった。


最低でも感知できる範囲にいなければ、数量を調整することは難しい。遠くになればなるほど操作も難しくなるのだ。


「なるほどね・・・まぁそのあたりは任せるよ。ぶっちゃけ今回は殺傷も視野に入れているからね。無関係な一般人を巻き込まなければそれで構わない」


「まぁ・・・俺としては非常に複雑なんですけど・・・」


封印指定百七十二号として多くの人間の命を奪い、その過程を見てきた康太からすればDの慟哭で人間の命を奪うというのは強い抵抗がある。


おそらく康太の中にいるデビットも同様だろう。殺すつもりはないとはいえ活動ぎりぎりのところまで吸い取るつもりではいた。


「いいだろうか、もし早い段階でけりがついた場合、他の支部の援護に回るべきか?」


「お、他の支部も同じようなこと考えてたみたいだね・・・質問する手間が省けた」


「あえて質問したのは他の支部への牽制ってこともあり得ますよ?あの支部はどこの支部ですか?」


「ロシア支部だね・・・近くの国のこととあって、向こうは結構気が気じゃないんじゃないかな?」


ロシアは中国のほぼ隣国だ。中国と同じく広大な大地があるために万が一面倒な組織や魔術師が自国内に逃げ込んでくると面倒が増えると考えていても不思議はない。


多少ほかの支部を牽制、あるいは奮起させる意味合いでもこのような質問をするのも少し納得できる話だった。


「他支部への協力に関しては問題はないが、本部に連絡を取ってから行動するように。なお実際に戦力的に不足しているならば現場投入も検討するが、基本的には中国支部や本部の補佐に回ってもらいたい」


「・・・了解した。本部と中国支部に楽をさせてやれるよう努力しよう」


その場に勢い良く座り込むロシア支部の人間に視線が集まる中、康太と支部長はその人物と周りの様子を見比べながら目を細めていた。


「・・・随分と強気発言ですね・・・自信満々なんでしょうか・・・?」


「いや、どっちかっていうと中国支部への当てつけじゃないかな?一応今回の事件、中国支部が原因になってるし・・・いや、正確には原因の拠点が中国だったってだけなんだけどさ・・・」


「そう考えると不憫ではありますけど・・・支部の監督がしっかりしてなかったともいえますよ?」


「そうは言うけどさ、日本の何十倍もある国土ですべてを把握しろっていうのは酷だよ・・・こっちみたいに転移できる門もそうあるわけじゃない・・・そう考えると向こうの支部長はかわいそうだなぁ」


日本はある程度国土が狭く、街自体も比較的分散している場所が多い。北海道のように都市とそうでない場所がはっきり分かれていたとしても、たいていはすぐに移動できてしまう。


ただ中国はそういうわけにはいかない。そもそも街自体の規模も安定しておらず、門の設置された教会なども数が限られる。


大きな都市部にはもちろん存在しているだろうが、細かい村落などにはないために細かな移動が難しい。

そして支部長が言ったように国土の広さがあるせいで完全に把握しきれないというのも原因の一つだ。


人口の多さと国土の広さ、この二つがネックとなって問題を起こそうとする魔術師からすればよい拠点となってしまっているのかもわからない。


「そういう意味じゃロシアやアメリカ、アフリカ支部なんかも結構危ないかもね・・・アメリカとアフリカの場合、第一支部と第二支部って形で分けてるみたいだけど」


「そうなんですか・・・でもそれって意味あるんですか?」


「あるといえばあるし、ないと言えばないかな。結局管理の問題になってくるとそのあたりは曖昧になってくるしね・・・隠れようと思えばどこだって隠れられるし・・・それは日本も同じだよ」


隠れる気になればそれこそどこだって隠れられる。魔術師としての活動を一時的にやめてしまえばそれまでだ。


支部長の言うように隠れようと思えば日本だろうとアメリカだろうと中国だろうとどこでも隠れられるのだ。


今回中国支部にその隠れ先があったというだけで、中国支部が悪いというわけではないのだ。


「他に質問はあるか?」


「この組織の幹部連中はどのように対処する?中国側の組織だから、万が一中国の政府や民間の企業ともつながっていた場合、こちらで判断するのは難しいと思う・・・中国側からの意見を聞きたい」


今回の依頼内容に即した質問が出たことで全員の視線が質問をしてきた魔術師のほうに移る。


確かに中国の非合法組織ということもあって、中国国内の別組織とのつながりが多少あっても不思議はない。


完全な協力関係ではなくとも、暗黙の了解や何かがあったときの補助関係を取っている可能性は十分にある。


各拠点のトップ、あるいは組織の幹部連中がそのような情報を持っていた場合、中国の経済状況や政治関係にも多少なりとも影響を与える可能性は十分にある。


特に提携していた、連携していたなどという文書が見つかった場合はそういったことになる場合が多い。


今回はあくまで構成員の排除と書類面での消去が目的である。だが万が一何かの契約書や政府に関する不正を見つけた場合どのようにするべきか、一応外国の人間である康太たちがどれほど介入するべきなのか判断に迷うのだ。


特に幹部に関してはかなり重要な情報を持っていると思っていい。その幹部たちをどのように対処するのか。


全ての魔術師の視線が質問してきた魔術師から中国支部の支部長へと移っていく。この質問に対してどのように対処するのか、どのような決断を下すのか。それによって現場の行動は大きく変わってくるのだ。


殺していいのか、それとも捕縛するべきなのか。この二つは似て非なるものだ。難易度も攻略の仕方も変わってくる。


全員の視線の集まる中、中国支部の支部長は立ち上がって全員のほうを見渡すとゆっくりと口を開いた。


「先の質問に対してだが、例外はないものとしたい。今回の目的はあくまで魔術の存在の漏洩の防止・・・中国の経済、政治などとは無関係な案件だ。そのため組織の幹部だろうと新人だろうと、基本的には区別はしないものと思ってほしい」


「・・・では、保管されている文書に関しても?」


「同様である。いかなる文書が見つかろうと、すべて廃棄処分となる。これはすでに本部とも話をつけている、所謂決定事項となる。全員それを基本方針として今回の作戦に参加してもらいたい」


中国支部全体としても、そして本部としての見解としても、今回は一つの例外もなく排除するというのが決定事項であるらしい。


その言葉に支部長は口元に手を当てて何やら考え始めていた。


「何か気になることでも?」


「いや・・・随分と思い切ったなと思ってね・・・組織のトップ、幹部くらいはある程度情報源になるから、生かして情報を引き出してからのほうが中国支部としてはありがたいんじゃないかと思ったんだけれど・・・」


「中国支部の利益よりも協会全体の利益を優先したってことですか?」


「・・・いやいや、彼はそんな立派な人物じゃないよ・・・本部からの圧力か・・・あるいはその組織にはあまり良くない情報が眠っているかのどちらか・・・ってところかな?」


「・・・なるほど・・・公表される前に消してしまえ・・・ってことですか」


「それが支部長としてのものなのか、中国支部にとってのものなのか、それとも彼個人としてのものなのか・・・それはわからないけどね」


支部長の考えは康太も理解できる。何かしらの関係があってその幹部たちに余計なことを話してほしくないから皆殺しを提案しているのか、ただ単に協会全体の目的のためにそのように提案しているのか、この場では判断しにくい。


「どちらにせよだ。こちらがやることがはっきりしているのであればわかりやすい。加減をする必要がなくなったという意味ではやりやすくなった」


「そりゃ師匠からはそうでしょうけど・・・っていうかわかってます?銃で仕留めるか記憶削除ですよ?」


「馬鹿にするな。お前と違って銃の心得はある・・・それに、とどめを銃にすればいいというだけの話だ・・・難しく考える必要はない」


とどめを銃にするというなんとも無茶苦茶な論法に康太は眉をひそめてしまうが、確かに小百合の言うとおりだなと思っていた。


死因が銃であれば不自然さはあまりない。そういったところでの調整も必要なのだと康太は学習していた。


「質問はほかにないか?・・・・・・・・・・・それでは合同の打ち合わせはこれにて終了とする。また何か質問があった場合は書面で本部に送れ。作戦決行日時は一週間後の同じ日時とする。以上、解散!」


日曜日なので二回分投稿


読者の方よりイラストをいただきました!活動報告に掲載しておりますのでご覧いただければと思います


これからもお楽しみいただければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。