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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十三話「追って追って、その先に」

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同期のコネ

「じゃあ、そいつらは先輩らと一緒に行動できるんですか?」


「いや、こいつらも戦闘系の依頼が入った場合は外れてもらってる。基本ついてきてもらうのは情報収集系の依頼の時だけだな」


「戦闘系って・・・そんなに戦闘メインの依頼なんてあるんですか?今時・・・」


「あるある。特に協会の中での派閥闘争だとか、護衛とか、あとはほかの魔術師と目的が異なってたりすると特に戦闘に発展しやすい。基本は問題行動を起こす魔術師を倒すのが多いかな?」


康太が今まで魔術師として活動してきた中で、戦闘を行わずに解決できた事件というのはかなり少ない。


というか今までなかったのではないかと思えるほどである。康太の戦闘能力を評価して協会、ひいては支部長などが戦って解決できるタイプの依頼を斡旋したと言えなくもないが、魔術師において戦闘というのは最終手段。その手段をとることが多いという康太が少し危険に思えてしまうのもまた無理のない話なのかもわからない。


「こいつの場合、結構問答無用で戦おうとするときもあれば話をするときもあるしね。相手を落ち着かせるために一度倒すっていうのもあるわよ?興奮してたり疑ってたり怒ってたり、パニックになってる人も結構いるから」


「なるほど、気付けって感じなんですか・・・ていうかそれなら俺がついていっても・・・」


「ダメだ。ぶっちゃけ足手まとい。ここにいるメイとハレは自分で逃げることができる。どれだけ危ないかとかを判断できるけど、トール君はできないだろ」


相手の戦力を正確に把握する。晴と明の二人もまだそれらが完璧にこなせるわけではないが、予知の魔術によって戦闘が始まるか否か程度は判別できる。


それができるかどうかで康太たちの負担はかなり変わるのだ。いくら何でも、晴と明の二人を守りながら戦うというのはなかなか苦労する。


守る対象は少ないほうがいい。戦闘に集中できなくなってしまう。


以前文と倉敷のもとに敵を向かわせないようにしていただけでもかなり集中力を割かれていたのだ。なるべくすべての意識は攻撃と回避だけに向けておきたいために足手まといは可能な限り少なくしたいのである。


「私たちも、まだ戦闘がある戦いの場合は退避することに専念してます。戦いになったら邪魔でしかないので・・・」


「一緒についていった場合は、私がこの子たちのお守りをしてる感じかしらね。あんまりにも危ない場合は撤退させるけど・・・」


「・・・先輩らでもそんなに危ない戦いってあるんですか?」


「あるある。ぶっちゃけ撤退したこともあるしな。勝てないって判断したら逃げることも戦いの一つだ。あの状況で逃げなかったらたぶん俺細切れになってただろうし」


康太は呪いのビデオを守っていた時のことを思い出す。明らかに自分より格上、しかも消耗している状態で満足に戦えるとは思えなかった。


相手の戦闘能力も未知数だったこともあり、康太は即座に撤退を視野に入れ、隙を見て実行に移した。


あの状況では足手まといもおらず、康太と文に加えて倉敷も一緒にいたというのに勝てる気がしなかったのだ。


消耗していたからというのもあるが、ほとんどダメージらしいダメージを与えることができなかったのも事実。


「魔術師の依頼っていうのは何が起きるかわからないのよ。依頼遂行のために行動していても、逆にその依頼を妨害しようと活動する魔術師もいる。そうなったら戦うしかない。いつ戦いが起きるかわからないから、ほとんど戦えない人間を連れていくのは無謀なの」


「・・・そいつらは逃げられるから大丈夫ってことですか」


「そういうことね・・・まぁトール君にもそういう特技があればいいんだけど、そういうわけでもないでしょ?」


「・・・弾除けくらいにはなりますよ?」


「それ、こいつにとっては邪魔なだけよ。勝手に突っ込んで勝手にやられるレベルの無意味さね。実戦でやられるとたぶんすごい迷惑」


基本攻撃をよけて行動する康太と、魔術で対応する文にとっていきなり射線に現れて盾になられるほど邪魔なものはない。


視界をふさぐうえに移動範囲も限られることになる。そんなことをしたらまず最初に船越が始末されることになってしまうだろう。


もっとも、康太と文は絶対に船越を実戦には連れて行かないだろうが。


船越としてはこの扱いに不満があるのだろう。自分の弱さを実感したとはいえ、明らかに足手まとい、なおかつついてきても邪魔をするだけという認識を持たれているのは面白くないようだった。


実際の魔術師の活動そのものを把握していないために、自分がついていっても問題ないのではないかと思ってしまっているのである。


「とにかくだ、俺らの依頼についてきたいのであれば・・・そうだな・・・協会の依頼を十回以上こなして、評価を上げてからにしろ。それまではお前の同期と一緒に行動しろ」


「・・・あいつとですか・・・?」


「あの子に戦い方を教えながら、なおかつ依頼もこなせば私たちが言っていることがわかると思うわ。そのあたりは経験よ」


こういっておけば船越としては従うしかなくなる。船越の魔術師としての経験を積ませるだけではなく佐々木の戦闘能力の向上も見込める良い考えだ。


そして何より康太たちに苦労がかからない。


おそらく佐々木が行っている魔術師としての活動は事務、あるいは裏方の仕事が多いだろう。協会とのコネを作るのにも苦労しないと思われる。


我ながら良いことを思いついたものだと康太と文は互いに頷きあっていた。


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