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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十三話「追って追って、その先に」

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経験不足

翌日の明と船越の戦いは康太と文の予想通りの展開となっていた。


早い段階で暗闇の魔術を発動した船越だったが、明の圧倒的な手数の前に暗闇の魔術を維持できなくなり防戦一方。


最終的に近接戦に望みを託そうとするも、明に近づくこともできずにノックアウトされてしまっていた。


「あー・・・やっぱ無理だったか・・・」


「素質の差がもろに出たわね・・・射撃戦だとやっぱり素質が上のほうが有利だわ・・・」


威力、手数、回復能力、防御能力、ありとあらゆる面で素質が上の魔術師が有利に事を運ぶことができる。


特に射撃戦はその傾向が顕著だ。圧倒的な差がつかなくとも、技術力が同じであれば徐々にその差が開いてくる。


「お疲れ様メイ、うまく戦えてたわね」


「ありがとうございます。ハレが苦戦したにしては少し手ごたえがなかったような・・・」


「相性の問題ね。今回の勝利は運がよかったと思いなさい」


「はい。今後とも精進していきます!」


文の言葉を正直に受け取り、明は小さくガッツポーズして見せる。そんな中康太は気絶してしまっている船越を起こしていた。


「はーいトール君、朝ですよー。寝坊するぞー」


「・・・うぅ・・・近づけもしなかった・・・」


「なんだ起きてたのか・・・今回は運が悪かったと思え。最適解を選び続ければ勝ち目も少しあったけど、今回はダメだ。相性が悪すぎる」


晴のようにその素質をまだうまく扱いきれていない魔術師ならばまだ勝ち目はあったが、明は良くも悪くもその素質を前面に押し出す形での戦闘を行った。


索敵を行った時点で船越のもつ素質がそこまで高くないことを把握したからこその対応だろう。


冷静に相手の戦力を把握できるという意味では、明のほうが冷静で正しい判断を下すことができたということでもある。


「双子でも全く戦闘スタイルが違うだろ。二種類の相手と戦えたのは運がいいぞ。これでいろいろと考えが進んだな」


「・・・なんか両方とも負けたからあんまりいい気分じゃないんですけど」


「何を言うか。敗北から学べ。負けたおかげで自分が何ができないかわかっただろう?そこから学ばないでどうするよ」


「・・・そういうもんですか・・・?」


「強くなりたいならそうするべきだ。俺はそうしたぞ」


康太も今まで自分よりも格上の相手に何度もぶつかった。そしてその中で苦戦し、自分にできないこと、自分がやりたいこと、向いていることなどを見つけていったのだ。


訓練のように自分の実力をただ高めていくだけでは強くなれない。いくつかの種類の相手と戦って、どの相手に対してはこのように戦うなどの自分なりの戦闘スタイルを見つけるほかないのである。


「トール君は残念だったわね。今回の戦いで何か掴めたかしら?」


「・・・俺が弱いってことはよくわかりました」


「そう、それがわかっただけでも上出来よ。逆に言えばまだまだ強くなれるってことじゃない。あなたの師匠や知り合いにいろいろと聞いて強くなれるように頑張りなさい」


「・・・うす・・・」


文たちはあくまでも先輩という立場、注意する立場ではあるかもしれないが指導する立場ではない。


船越の指導は船越の師匠がしっかりとするだろう。今回このような場を設けたのは土御門の双子のためと言うのが大きい。


船越はどうしたものかなと倒れたまま頭を悩ませていた。


師匠に教えを乞うのは第一に行うべきだ。だが船越の師匠もそこまで戦闘が得意な魔術師ではない。

具体的な指導などはあまりしてくれないかもわからない。


「・・・あの、先輩、協会のほうで俺にもできるような仕事とかってありますかね?」


「ん?ぶっちゃけ俺の周りの依頼は任せられないぞ?危ないのが多いし」


「・・・そういうのじゃなくて・・・もっとこう・・・コネクションとかができそうな感じの依頼なんすけど」


「そういうことなら私たちじゃなくてもっと聞くべき相手がいるんじゃないの?せっかく同級生に活動的な子がいるのに」


活動的な子。それが船越の同級生、佐々木加奈、魔術師であるアコ・オーカのことを指していることは船越にもすぐ理解できた。


彼女は協会に通って日々雑務をこなしているという。船越が言うところのコネクションもいくらか持っている。


何かしらの仕事をしたいのであれば、まずは彼女を頼るのが筋だろう。


「いや・・・先輩らが紹介してくれたほうが俺としては・・・」


「いきなり段階飛ばしてレベル高い依頼を受けても怪我するだけだぞ。最初は経験を積め。まぁ俺が言えた義理じゃないけど」


「あんたの場合はあんたの師匠の関係で面倒ごとが付いて回ったからね・・・でもこいつの言う通りよ。いきなり危ないことしないで、最初は経験を積みなさい。魔術師としての経験値はあの子のほうがずっと上よ?」


魔術師としての経験値は経験年数だけで決まるものではない。船越は実戦もほとんどこなしていないひよこのような存在なのだ。


康太たちの斡旋する仕事は単純に危険すぎるのである。


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