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異世界恋愛無双帝国 ~勇者が建国したらドラゴン300匹が国民になった~  作者: 4ランクは下の人間


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第四話 帝国、外交す

 翌朝


 恋愛無双帝国に、ドラゴンが三百匹やってきた。

 問題は、住む場所がなかった。


 ちなみに、王国騎士団はすでに母国へ帰っていた。


「狭い」

 ドラゴンが言った。


「うむ」

 アルバートが言った。


「狭いな」


「どうするんだ」

「国を広げる」


「どうやって」

「隣の国をもらう」


「戦争になるぞ」

「では」

 アルバートは考えた。


「外交じゃ!」

 リリアが嫌な顔をした。


「外交って、どうするんです?」


「簡単じゃ」

 アルバートは紙を取り出した。


「手紙を書く」


「なんて?」


「『土地をください』」


「断られますよ」


「では」


 アルバートは紙に何か書いた。


「『土地をください。ドラゴン三百匹より』」


「脅迫じゃないですか」


「違う」


「何が違うんです」


「お願いじゃ」


「ドラゴン三百匹を連れて言うお願いは、普通お願いとは言わないんです」


 その日の昼。


 隣国レグナード王国から使者がやってきた。

 騎士十人。

 魔術師三人。

 そして豪華な馬車。


「恋愛無双帝国の代表者は誰だ!」


「余じゃ!」

 アルバートが現れた。


 王冠。

 マント。

 そしてパンツ一枚。


 使者は固まった。


「……」


「……」


「……」


 リリアが小声で言う。


「服を着てください」


「なぜじゃ」


「王としての威厳がありません」

「王とは服ではない」


「では何です?」

「心じゃ!」


「心がパンツなんですよ」


「うむ!」


「認めないでください」


 使者が震えながら口を開いた。


「……我が国王より伝言を預かっている」


「申せ」


「貴国の国境付近に、これほど多数のドラゴンが集結している理由を説明せよ」


「国民じゃ」


「……は?」


「余の国民」


「ドラゴンが?」


「うむ」


「なぜ?」


「恋愛無双だから」


「意味が分かりません」


 アルバートは誇らしげに胸を張った。


「余は勇者じゃ」

「知っています」


「そして皇帝じゃ」

「聞いています」


「さらに恋愛無双じゃ」

「それは聞いていません」


「ドラゴンもわしの威光に靡いた!」

「……」


 使者はリリアを見る。


「あなたは本当に、この男についていくのですか?」


「私もよく分かりません」


 そのとき。

 空から巨大な影が落ちてきた。


 ドドドドド……。


 ドラゴンが一匹、着地した。


「我が王」


「なんじゃ」

「腹が減った」


「何が食べたい」


「牛を百頭」


「……」


 アルバートは使者を見た。


「見たか」


「何をです?」


「国民の食糧問題じゃ」


「それはあなたの問題でしょう」


「そうじゃ」

「どうするんです?」


「外交じゃ!」

「さっきからそれしか言ってませんよ」


 アルバートは使者に近づいた。


「貴国には牛が何頭おる?」


「……おそらく数万頭は」


「では百頭くれ」


「嫌です」

「なぜじゃ!」


「普通に嫌でしょう!」


「ならば交換じゃ」

「何と?」


 アルバートは少し考えた。


「ドラゴン」


「何を交換するんですか!」


「一頭貸す」


「絶対いりません!」


「では二頭」


「増やさないでください!」


「三頭!」


「数の問題じゃありません!」


 すると、使者の後ろから声がした。


「面白い話をしているわね」


 全員が振り返った。


 馬車から一人の少女が降りてきた。

 長い金髪。白いドレス。頭には小さな王冠。

 見るからに王族だった。


 アルバートの目が輝く。


「……!」


 リリアが顔をしかめる。


「また始まった」


「姫じゃ!」

「はい」


「本物の姫じゃ!」

「そうですね」


「リリア!」

「何です?」


「余は今日、人生の目的を達成した!」

「早いですよ」


 アルバートは姫の前に走っていった。

「余はアルバート!」


「存じています」

「勇者!」


「存じています」

「皇帝!」


「それも存じています」

「そして!」


 アルバートは胸を張った。

「独身!」


「……」


 姫が微笑んだ。

「それは良かったですね」


「よし!」


「何がです?」

「脈ありじゃ!」


「どこにありました!?」


 姫は名乗った。

「私はレグナード王国第一王女、セシリア・レグナードです」


「セシリア!」

「はい」


「余の妃になれ!」

「嫌です」


「なにィーッ!」

 アルバートが膝から崩れ落ちた。


「即答じゃと……」

「当然です」


「余は勇者じゃぞ」

「知っています」


「皇帝じゃぞ」

「それも知っています」


「ドラゴン三百匹じゃぞ」

「むしろ嫌です」


「なぜじゃ!」


 セシリアは静かに答えた。

「あなたの国、怖いもの」


「……」


「王様はパンツ一枚」

「これは事情がある」


「国民はドラゴン」

「強いぞ」


「軍事力だけ異常に高い」

「褒めておるな?」


「褒めてません」


「城は?」

「ありません」


「予算は?」

「ありません」


「外交は?」

「今しています」


「国名は?」

「恋愛無双帝国」


「…………」


 セシリアは少し考えた。


「帰っていいですか?」

「待て!」


 アルバートが立ち上がる。

「余は分かったぞ!」


「何がです?」

「この国には足りないものがある!」


 全員が注目する。


「城!」


 オーク将軍が頷いた。

「確かにないな」


「兵舎!」

「必要だ」


「食糧庫!」

「必要だ」


「財務省!」

「金がない」


「そして!」

 アルバートは姫を指差した。


「王妃!」

「いりません」


「なぜじゃー!」


 その瞬間。

 ドラゴンたちが一斉に空へ飛び立った。

 巨大な翼が空を覆う。


 ドドドドドドド……!


 レグナード王国の使者たちが怯える。


「何をするつもりだ!」

 アルバートは笑った。


「建国じゃ」

「三日前にしましたよ!」


「本当の建国じゃ!」

 アルバートは剣を掲げた。


「今日から我が国は!」


 ドラゴン三百匹。

 勇者一人。

 魔法使い一人。

 オーク一人。


 そして、なぜか隣国の王女を巻き込んで。


「ちゃんとした国になるのじゃー!」


 セシリアが呟く。

「……絶対ろくな国にならないわ」


 リリアが答えた。

「私もそう思います」


 その頃。

 レグナード王国の王宮では。

 一人の老人が報告を聞いていた。


「ドラゴン三百匹……?」

「はい」


「勇者アルバート……?」

「はい」


「そして、あの男が国を作った?」

「はい」


 老人はしばらく黙っていた。

 やがて。


「……ついに現れたか」

「何がです?」


「予言の男が」

 老人は窓の外を見た。


「世界を救う男――」

「はい」


「あるいは」

 老人は顔をしかめた。


「世界をめちゃくちゃにする男が」


 その頃アルバートは。

「リリア!」

「はい」


「城の名前を考えたぞ!」

「何です?」


「恋人いっぱい城!」


「却下です」


「なぜじゃー!」


 世界はまだ平和だった。


 たぶん。



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