↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界恋愛無双帝国 ~勇者が建国したらドラゴン300匹が国民になった~  作者: 4ランクは下の人間


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/12

第十一話 帝国、帝国領爆誕す

「必殺:アルス・アターーーーーック」


 ズバァッ!

 黒い霧が、激しく渦巻き、四散する。


「馬鹿な……」


 ヴェルムが胸元を見下ろした。


「なぜ……」


 光の剣により一刀両断にされた。


「我が……人間ごときに……」


 ヴェルムの膝が崩れた。

 その体から、黒い霧が溢れ出す。

 やがて。

 霧は空へ昇り、風に散っていった。


 次の瞬間。

 アルバートは、その場に倒れた。


 そして。

 ヴェルムが倒された、その瞬間。

 王都全体を覆っていた黒い霧が消えた。

 倒れていた人々が、一斉に息を吹き返す。


「……あれ?」

「私は……」

「何が起きたんだ?」

「魔神は!?」


 兵士たちが起き上がる。

 商人たちが周囲を見回す。

 子供たちが泣き出し、親たちが抱きしめる。


 そして、竜王もゆっくりと立ち上がった。


「……まだ終わってはおらぬ」


 竜王の体が、光に包まれる。

 巨大な影が膨れ上がった。

 人型の姿が崩れ、鱗が現れ、翼が広がる。

 真の姿。

 竜王は、空を覆うほど巨大なドラゴンへと変貌した。


「竜王様!?」


「なんだ、あれは!」


「ドラゴンだ!」


 竜王が大きく息を吸い込んだ。

 その口元に、赤い光が集まる。


「――全力バースト・ブレス!」


 轟音。


 灼熱の光が、四散したヴェルムを包み込んだ。

 地面が震える。

 空気が焼ける。

 黒い霧の残滓が、一瞬ですべて消し飛んだ。


 やがて。

 竜王は息を吐き、地面へ降り立った。


「……敵の総大将は、この竜王が倒した!」


 竜王が、魔軍へ向かって叫ぶ。


「退け!」


 魔軍が動きを止めた。


「さもなくば、竜王のブレスがお前たちを焼き尽くすことになるぞ!」


 魔軍は、互いに顔を見合わせた。


 そして。

 誰かが逃げ出した。


 一人。

 二人。

 十人。

 百人。


 やがて魔軍は、一斉に退却を始めた。


「……」


 竜王は、威厳たっぷりにその背中を見送った。

 そして、小さく呟いた。


「……もう一発も撃てぬ」


 その場に、どさりと座り込む。

 誰にも聞こえないように。


「……危なかった」


 そのとき。


「竜王様!」


「竜王様が魔神を倒したぞ!」


「王都を救った英雄だ!」

 民衆の歓声が上がった。


「竜王!!」

「竜王!!」

「竜王!!」


 大合唱が王都を包む。


 誰もが、竜王を見上げていた。

 そして、その少し離れた場所。

 瓦礫の中で倒れているアルバートの左手。

 小指に、見慣れないものが現れていた。

 黒い金属の輪が、一瞬だけ光る。

 誰も、それに気づかなかった。


 こうして。

 七大魔神の一柱、ヴェルムは倒された。

 そして、その手柄は竜王のものになった。


* * *


 三日後の昼。

 恋愛無双帝国。


「アルバートさーん! 大変です!」


「借金取りか!?」

「違います!」


「裁判所か!?」

「違います!」


「では帰ってもらえ!」

「話を聞いてください!」


 アルバートは丸太の上に寝転がっていた。


「余は病人じゃぞ」

「昨日まで元気に牛を食べていたでしょう!」


「セシリアが約束を守らんからじゃ!」

「意味がわかりません!」


「それより、王国から使者が来ています!」

「何じゃと!?」


「領土をいただけるそうです!」

「いらん!!」


「えっ!?」

「余は領土のために戦ったのではない! セシリアからの特別な褒美のためじゃ!」


「領土を断る理由がそれですか……」


「まあ、そう言わないで……」

 セシリアが現れた。


「セシリア王女が、わざわざ来てくださったんですよ」

「サプライズにしようと思って、黙っていたのにー」


「それより、領土の件は本当ですか?」

「ええ。オーク将軍もドラゴンちゃんたちも、みんな頑張りましたものね」


「知らん! そんなことはどうでもよい!」

 アルバートは勢いよく起き上がった。


「それよりセシリア! 約束の件じゃ!」

「はい。覚えておりますわ」


「おお! では、ついに約束の『初めての〇〇』を――!」


「ええ。こちらですわ」

 セシリアは、一本の筒を差し出した。


「……筒?」

「開けてみてください」


 アルバートは震える手で筒を開いた。

 中から出てきたのは、一枚の立派な賞状だった。


「…………賞状?」

「ええ。私からの、初めての賞状ですわ」


「…………」


「約束、守りましたわよ」


「…………」


「まあ……私の初めてを、アルバート様に捧げてしまいましたわ……!」


 セシリアは頬を赤らめ、両手で顔を覆った。


「……これで私たちも、初めてを分かち合った仲ですわね?」


 その指は、しっかり開いていた。


「…………」


 アルバートの魂が抜けた。


「アルバートさーーーん!」


「魔神のソウル・ドレインにさえ耐えたアルバートの魂が……!」


 竜王が呆然とつぶやいた。


「魔神との戦いでも死ななかったのに……」

「賞状一枚で死なないでくださーい!」


 

 人口、人間二人。オーク一匹。竜王一匹。ドラゴン三百匹。

 国土、森の一部(正式認定)。

 国家予算、パン三個。

 軍事力、元魔王軍幹部のオーク将軍とドラゴン族。

 外交関係、レグナード王国。

 国家元首、魂が帰ってこない皇帝。


 こうして恋愛無双帝国は、ほんの少しだけ帝国らしくなった。

 ――借金と裁判を除けば。


 そして、アルバートの小指には、黒い輪が静かに光っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。