仮面の素性
お久しぶりです。
PCが治ったので、ぼちぼち再開していこうかと思います。
翌朝。
なめし終えた毛皮を二枚、丁寧に布で包む。
手触りは滑らかで、余計な臭みもない。昨日までただの獣皮だったものが、商品へと変わっている。
――問題ないだろう。
俺はフードを被り、街へ向かった。
ギルドに入ると、相変わらずの喧騒。
だが今日は迷わず買取カウンターへ向かう。
「毛皮の売却をお願いしたいのですが」
自然と、少しだけ口調を整える。
前世の記憶が、森での言葉遣いのままでは、
余計な軋轢を招くかもしれないと告げたからだ。
受付の女性が視線を上げる。
「登録証はお持ちですか?」
「いえ。まだ登録はしておりません。今回は毛皮のみの持ち込みですが、大丈夫でしょうか。」
「問題ありません。鑑定させていただきますが、よろしいですね?」
「はい」
俺は布を広げ、毛皮を差し出した。
受付は手袋をはめ、丁寧に毛皮を確認する。
縁、裏面、厚み、均一さ。手慣れている。
「……かなり状態がいいですね。ご自身でなめされたのですか?」
一瞬だけ間を置く。
「はい。村で狩りをしておりまして。家は代々、狩人の家系です。
毛皮の処理は幼い頃から厳しく教えられました。」
嘘と真実を混ぜて話す。
“どこの村か”は言わない。
というか、言えない。
受付はと納得したように頷く。
「なるほど。それでこの仕上がりですか」
小型の鑑定具をかざすと、淡い光が毛皮を包む。
俺の視界にも情報が浮かび上がった。
```
【鑑定】
名称:良質な毛皮
分類:加工素材
用途:防具作成・防寒具加工
品質:良質
耐久:95/100
効果:防具作成時、防御性能をわずかに向上させる
備考:熟練した手順でなめし処理が施されている。
```
昨日よりわずかに耐久が減っている。
持ち運び方とか、保存方法にも気を付けたほうがよさそうだな。
「現在、毛皮の相場はやや高めです。
この品質であれば、一枚銀貨三枚。二枚で銀貨六枚になります。」
「ありがとうございます。それで問題ありません」
相場が分からないが、特に渋らずに受け入れる。
受付は硬貨を数え、小袋に入れて差し出した。
銀貨六枚。
重みが掌に伝わる。
昨日までは文無しだったが、やっと自分の力で資金を手に入れられた。
前世では働いて入ればお金が手に入ったが、この世界ではそもそも働くためのハードルが高い。
そう考えると胸に感じ入るものがある。
ところで、といった感じで受け付けの女性が説明を始める。
「継続的に持ち込まれるのであれば、冒険者登録をおすすめします。
登録者は買取価格が一割上がりますので」
「一割、ですか」
「はい。信頼による価格補正です」
なるほど。
組織に加入した物への優遇というわけだ。
「登録には何が必要でしょうか」
「登録料銀貨五枚と、実技試験を含めた適正確認になります。
狩りをされているということでしたので、実技試験は問題ないかと。
…それにこれまでの会話から適正についても問題ないと判断いたしました。」
……ほぼ今日の売却額が消える計算だ。
焦る必要はない。
「本日は見送らせていただきます。いずれ改めて」
「お待ちしております」
礼をして、ギルドを出る。
外の空気がひんやりと頬を撫でる。
――村から来た狩人。
今のところ、それで通る。
森で得たものが、街で貨幣に変わる。
生活は確実に一歩進んでいる。
銀貨の入った小袋を握り直し、姉妹用のパンを買って、
帰路へと歩き出した。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
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