第一章 主導者の帰りを待つ世界 第九話 堕ちた者の過去
ポツポツ
と雨が降っている。黒い空間に、誰かが泣いている様に…
何処から、「コツコツ」と「パサパサ」と足音と羽ばたく音が聞こえる。
ズィヴァーチ
「此処に入るのも懐かしいですね」
神陽導
「中々、此処には来ないの?」
シンソウ
「まぁ、レーラー王国の民の魂を入れていることを考えてみれば、耐性の無い者が入れば、身体を乗っ取られる危険性がありますから…賢明な判断ですね」
ズィヴァーチ
「そうですね。他には、民の魂を穢れさせない為などあります」
ある地点につけば、尖った岩が地面から突き出していた。
その隙間を、通りながら中央へ向かう。
其処には、ボロボロの姿で空中で坐禅を組んでる3代目レーラー王国の国王フェルスがいた。
ズィヴァーチと導は、目を大きくあけて即座に近づく。
シンソウも仰天してその場から動けていなかった。
ズィヴァーチと導が、近付けばフェルスは坐禅を解除して地面に足をつけ、ゆっくり目を開ける。
フェルス
「久しいな」
ズィヴァーチ
「お兄様!どうして!」
神陽導
「そうだよ!まずは、手当てでしょ!」
フェルス
「手当てなど、している暇はない。前回の戦いで内側と外側両方から攻撃を受けたものでな」
「そのせいで、結界が少し緩んでしまった。その修正に当たっていただけだ。気にするな」
神陽導
「だからって、無理するのは良くないでしょ!」
フェルス
「無理をしているわけではない」
ズィヴァーチ
「充分、無理していますよ?お兄様」
「貴方、今の自分の状態分かっています?」
フェルス
「これくらい平気だ。少し吐血したくらいで、騒ぎすぎだ」
シンソウ
「そんなボロボロの姿で言われても信用性は皆無ですよ」
フェルス
「……それは、そうだな」
「にしても、どうして此処に来た。ズィヴァーチ、此処には来るなと言っているだろう?」
神陽導
「それは、「私が此処に連れて行って!」ってお願いしたから。それに、神脈の修繕もしようと思って!」
フェルス
「!…そう言うことか」
「……では、レーラー王国の神脈の場所まで案内しよう」
フェルスは、ボロボロの姿で手をかざすと魔法陣を出して、扉を召喚する。
そして、その扉を開けると、切断されぐちゃぐちゃになった。
シンソウは、ポカーンとしていた。
シンソウ
「誰ですか!?主人様が、丹精込めて作った神脈をこんなぐちゃぐちゃにしたのは!!」
フェルス
「神界大帝國第312代目国王だ」
シンソウ
「なんですって!?今すぐにそいつの場所に行って、説教してやりたいです!」
フェルス
「そいつは、俺が殺した。世間では、相打ちとなっているが、正確には俺の方が勝ってる」
「まぁ、俺も瀕死ではあったが」
神陽導
「そう言う事だったの!?」
「ずっと、気になってたんだよね〜皆んな、君を死んでる様に言うから」
ズィヴァーチ
「まぁ、世間では死んでる扱いをしていますからね」
神陽導
「まぁ、それは置いといて、直すぞ!」
導の手に、光の粒子が集まると工具の様な物を作り出し、大急ぎで神脈を直す。
工具を使い、透明な空洞に金色に輝く神脈の液が透明な空洞に注ぎまれて行く。
その早技に関心を見せる、フェルスとズィヴァーチ。
フェルスに、至っては目を少し輝かせていた。
それに、しれっと気づいているシンソウであった。
神陽導
「よ〜し!修繕完了!」
フェルス
「5分でこれか…素晴らしい。この早技を私の機械にも取り入れたい。そしたら素晴らしい機械となるだろう。いや、演算能力も飛躍的に上がるな」
「一度、導さんの脳波を検査して…それを機械に取り入れ…」
シンソウ
「なんか、ブツブツ言ってますよ…」
ズィヴァーチ
「お兄様の癖です。導様の手の動きなどを見て、そう思ったのでしょう」
「流石に、脳波を検査するのはやり過ぎだと思いますが…」
神陽導
「脳波とか撮ったらどうなるの?」
ズィヴァーチ
「まぁ、自身の癖や長所、短所、それに自身の弱点など…様々なことが分かりますね」
「好きな事や過去の記憶なども」
神陽導
「へぇ〜一回、受けてみたい」
シンソウ
「それ、かなり時間がかかるので…」
ズィヴァーチ
「えぇ…最短で1週間ほどは」
神陽導
「あっ、待ってそんなかかるの!?」
フェルス
「まぁ、今は改良途中だ。完成すれば、一日で終わらせれる様にはなるだろうな」
神陽導
「ほぇ…」
シンソウ
「そろそろ戻りませんか?早くしないと疑似界が崩れるのでは?」
ズィヴァーチ
「崩壊の兆候は見えてますね」
フェルス
「嗚呼、そうだな。だが、後、数十分は持つだろう」
「ゴフッ…」
フェルスは、口から大量の血が出る。
そして、ドサッとその場に倒れる。身体中にある傷口から血が溢れ出て池が出来る。
ズィヴァーチと導は、驚きを見せて近付く。シンソウもソワソワしてしまう。
フェルスは、気絶していた。ズィヴァーチは、フェルスをお姫様抱っこした走り出す。
ズィヴァーチ
「……導様、早く行きますよ。此処は、もう持ちません!」
神陽導
「分かった。シンソウ行くよ!」
シンソウ
「分かりました!」
空間が、「ゴゴゴ…」と揺れる。
周囲にある尖った岩に亀裂が入り崩れ落ちて行く。
ズィヴァーチは、目の前に半透明な藍色の魔法陣を出すと、扉を出す。
導たちが、近付けば扉が開きその扉の奥へ
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扉を抜けた先には、ハボリムたちがいた。
其処は、法廷だった。近くには、ヴィントが浮遊しながら見守っていた。
扉の奥を覗けば、空間が崩れ落ち崩壊して行った。
シンソウは、少し息切れしており導の肩に乗って休む。
ハボリム
「この状況は…って、なんでフェルスがいるんじゃぁぁぁ」
「フェルスは、死んだんじゃないのか!?おい!レプブリーク!お前、本当に殺したよなぁ!?ハァ!?なんで!?」
ズィヴァーチ
「此方にいるのは、4代目国王の兄のフェルス様です」
「それより、早く手当てをさせてください!このままでは死んでしまいます」
ズィヴァーチの腕の中で眠るフェルスは、かなり虫の息で辛そうだった。
指先からは、「しと…しと…」と血が滴っている。
ハボリムは、部下に指示を出してその場で、応急処置をする。
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お香の様な香りが部屋に充満している。
白いベットには、包帯が巻かれたフェルスが横たわっていた。
近くには、ズィヴァーチが真顔で座って見守っていた。
コンコン
部屋に、誰かが入って来る。導とシンソウ。そして、ハボリムだ。
導は、フェルスの顔を覗く。安らかな顔で、安定した呼吸をしながら眠りについていた。
ズィヴァーチは、何も言わずにその様子を見守っている。
ハボリムが、口を開く。
ハボリム
「……600年前、あの時、何があった。神界大帝國の記録を全て見返したが、やはりお前たちレーラー王国側が悪として書かれている」
ズィヴァーチ
「600年前、あの悲劇は、神界大帝國が『義眼守』と言う物を作り出しました。それは、源守力の心を真似して作った…言わば偽物の力」
「これが有れば、源守力が使えない人でも、使える様にするための物として…」
「その時に、安全性に付いて調べるために各国の王に呼びかけ、5名ほどの国民を借りることになりました。その時に、契約として障害が残れば神界大帝國側が保障すると明記して」
ハボリム
「嗚呼、そのことは書かれてあったな」
神陽導
「ハァ!そんなことしちゃダメって神法で決まってるでしょ!」
神法
神界全体で定められている法律の様なものである。世界共通の法律と言う意味合いである。
シンソウ
「確かに、それに付いては、キッチリ定められていましたね」
ズィヴァーチ
「当時は、その様な神法があった事は忘れ去られていましたからね」
「それで、「安全性の実験」と言われていましたが、あの人たちがやったのは、『義眼守』が幾ら使えば神界人のキャパオーバーになるかの実験」
「要するに、“ 『義眼守』をどれだけ使えば死ぬか ”の実験。最初から死ぬ前提の実験だったのです」
ハボリム
「それは、書かれていなかった。ただ、一日の使用回数に付いて調べる実験としか…」
ズィヴァーチ
「表向きは、そう誇張されていましたからね」
シンソウ
「にしても、酷い残酷な実験だったのでしょうね」
神陽導
「私がいない間に、こんなことがあったなんて…」
ズィヴァーチ
「この事件が発覚したのは、お兄様がお見舞いをしにその研究所に向かったことで発覚絵したんです」
「そして、生き残っていたのも一人だけ」
「そのあとは、貴方たちのご存じの通り。レーラー王国は神界大帝國に宣戦布告をして戦争を起こし、相打ちとなった」
神陽導
「でも、フェルスは生き残ったっと?」
ズィヴァーチ
「そうです。まぁ、瀕死でしたけどね」
「これが、レーラー王国の過去です」
ズィヴァーチの顔は、少し悲しそうな顔をしていた。




