第二章 支配に侵された魔の手 第二十五話 浄化とは
神陽導
「ん?………んん…ここは…」
ルーナー
「みーちゃん!」
「よかった目を覚ました」
他のメンバーも続々と目を覚ます。
そして、再度、戦闘に戻ろうとした時にルーナーが、導に耳打ちをする。
ルーナー
「………なの」
神陽導
「!…ありがとう!」
「さぁ、皆んな!トゥアを救い出すよ!」
一同
「はい!」
視点が、空中戦をしているプーラと“ 悪食の王 ”に変わる。
プーラが、軽く右腕を使えなくする為に攻撃をし、距離を取る。
すると、上から“ 悪食の王 ”の頭目掛けて攻撃を喰らわす。
其処に、地上組がやって来て、“ 悪食の王 ”と目元を包帯で隠し灰色のアサシンの様な軍服を身に付けた人が戦っていた。
ブルート
「ニヒツ!なんで」
ニヒツ
「少しの間、時間を稼ぐ」
「だから、ヘルメスさん君の本当の実力が出せる様に頑張って」
ヘルメス・ルシテア
「うん!」
導は、その言葉を聞いた瞬間に、白い衣装に姿を変える。
それをニヒツは、見届けると足蹴りで数メートルほど吹き飛ばし、ヘルメスが考えた作戦を皆に共有する時間を与えた。
ヘルメス・ルシテア
「皆んな、これは、ルーちゃんから言われた事」
「彼は、“ 汚染 ”されてる。“ 汚染 ”については後で詳しく話すけど…」
フラメン
「何か考えがあるみたいだな」
ヘルメス・ルシテア
「まず、ギフトと私以外の5人は出来るだけ、彼の注意を引き付けておいて」
「そして、戦闘が不可能になりそうだったら、ギフトの所まで撤退し、回復を…」
ギフト・ヴィッセンシャフト
「了解した」
ヘルメス・ルシテア
「私には、“ 浄化 ”する力がある!」
「それを使うには、ちょっと準備が必要だから、5分だけ耐えて!」
「それが、終わったら私が全力を尽くすから!」
一同が、同意しフラメンが、其々に詳しい指示を出して、ニヒツと入れ替わりで参戦する。
ギフトとルーナーが、ヘルメスの少し後ろから見守る。
シンソウは、その中間くらいにいた。
ヘルメス・ルシテア
「シンソウ、アレを解放する。負担を掛ける事になるけど許してね」
シンソウ
「大丈夫です!主人様のやりたいようにやってください!」
「私は、何があろうとも、主人様のお役に立ち続けます!」
ヘルメスが、刀を両手で持ち、目を閉じて呪文を唱え始める。
その様子を心配そうに見守るルーナー
ギフトは、真顔で見守る。
一方、戦闘組は…
ヴァーテル
「フリャ!」
フルート
「其処!」
チリク
「………」
三方向からのランダムな攻撃
水球や葉のダーツ、炎の斬撃、炎の火の玉
ブルートが、最前線で戦い、それに合わせる様に追撃で攻撃をする。
モデルの様な美しさを重視しながら、月明かりをスッポットライトの様に扱うブルートの動き、それだけで、動きの予想がしづらいと言うのに、そこからランダムな場所からの攻撃と相まって、殆どの攻撃を受けてしまう。
だが、そんなものは、異次元の回復スピードでカバーしておしまいだ。
右から、“ 悪食の王 ”の拳が、飛んで来る。
ブルートが、その攻撃を避けようとした時、身体が上手く反応しなかった。
ブルートが、防御の構えをとった…
その瞬間…
目の前に、藍色や赤黒いの炎を纏った刀を両手で持って突進して来たヘルメスがやって来て、攻撃を防ぐ。
ヘルメス・ルシテア
「間に合った!」
「さぁ!こっからは、私が相手してあげる!思う存分掛かって来なさい!」
“ 悪食の王 ”
「戯言を抜かすか!」
“ 悪食の王 ”が、姿を消したかと思えば、空中に移動しており、7つの黒い球体を出して、不規則な動きで、ヘルメス達に向かってくる。
ヘルメスが、足に雷を纏うとそのスピードを活かした動きで攻撃を全て叩き斬り、刀に纏わせた藍色や赤黒い炎を濃い紫色に変えて、攻撃をする。
そうすれば、一気にダメージが入る。
そして、大幅に動きが鈍くなった。
ヘルメス・ルシテア
「これじゃ、体力が持たない…」
「このまま、今出せる最大火力を叩き込んで…!」
ヘルメスの瞳に、離れていたシンソウが映る。
かなり力を使っているのか、口呼吸で限界が近そうに見えた。
ルーナーが支えてあげないと、倒れてしまいそうなそんな雰囲気だった。
その時、ヘルメスに、迷いが目覚めた。
「このまま最大火力を叩き込めば、一気に“ 浄化 ”する事は可能」
「でも、それをしたらシンソウが死んでしまう可能性が出てくる」
そんな迷いが出て来てしまった。
隙だらけのヘルメスを、“ 悪食の王 ”が見逃すはずもなく、鈍っていたとはいえ、ヘルメスの顔を大きな手で掴み、地面に叩き落とそう、急落する。
ジャキーーン
“ 悪食の王 ”
「グワァァァァ!!!!」
“ 悪食の王 ”が、遠吠えの様な大きな声をあげる。
気付けば、ヘルメスを掴んでいた“ 悪食の王 ”の腕が斬り落とされたヘルメスは解放されていた。
斬り落としたのは、炎剣に、藍色の炎を纏ったチリクだった。
チリク
「師匠の言う通り、藍色の炎なら、効く!」
それを、見ていたヴァーテルやフルートも自身の攻撃に藍色の炎を纏わせ攻撃する。
一方、シンソウはと言えば…ルーナーの手の上に乗って、「ハァ…ハァ…」と口呼吸で限界が近かった。
其処に、ギフトが手を翳す。
そうすれば、紫色の小さな光の粒がシンソウへと流れていく。
すると、他の方向からも赤や赤いピンク色の光の小さな粒がシンソウへと流れていく。
その光の小さな粒がシンソウに吸収されると、少しずつだが体力を戻していっている様で、元気を取り戻していった。
そして、ルーナーの後ろ側からも藍色や灰色の小さな光の粒が流れてくれば、ある程度回復しており、ヘルメスの脳裏にシンソウの声が響く。
シンソウ
「主人様、私は、大丈夫です」
「決着をつけましょう。彼を早く楽にしてあげましょう!」
その言葉を聞けば、ヘルメスは頷く。
刀を鞘に戻すと、チリクたちの攻撃で体勢を崩して落下している“ 悪食の王 ”に向かって居合のポーズを取る。
ヘルメスは、呼吸を整える為に目を閉じる。
一瞬の音を見逃さないように集中していく。
ヘルメスが、目を開けた瞬間…
ヘルメス・ルシテア
「早く帰って来て!!!バアルゼブル!!!」
「救済の眼差し!」
目にも止まらぬスピードで、空中にいたヘルメスが地面の上に立っていた。
“ 悪食の王 ”は、そのまま地面へと大きな音を立てながら、落ちていった。
“ 悪食の王 ”が、虚無の瞳を空へと向ける。
ポツポツ
魔界に、青い雫が落ちる。
バアルゼブルが、倒れている所に、変身を解いた導がやって来て話しかける。
神陽導
「大丈夫?」
「これで、“ 浄化 ”できたはずだよ」
バアルゼブル
「みち…び…き………」
バアルゼブルは、口から血を流している。
ギフトがやって来て、軽い触って診察をし、首を横に振る。
その反応を見た導は、バアルゼブルの大きな手を握って、優しい顔を見せる。
神陽導
「もう大丈夫だよ」
「お兄さんが、今、迎えにくるからね」
バアルゼブル
「………………」
神陽導
「あの時は、逃げてごめんね」
「もっと、魔界の方にも目を向けてあげれれば、貴方は、こんな苦しい思いをせずに済んだかもね」
バアルゼブル
「な、ぜ…あや、まる……」
神陽導
「だって、私だって、魔王として魔界の発展に寄与していた」
「確かに、私は、貴方とは長くやり取りはしていなかった」
「でも、だからって、魔王として一民を見捨ててしまった責任は私にだってある」
バアルゼブル
「すま…ない…」
神陽導
「謝らないで、お兄さんに怒られちゃうよ」
バアルゼブル
「にぃさん…」
其処に、ニヒツがやって来る。
手には、ネリネと言うピンクの可愛らしい花が握られていた。
それを、バアルゼブルの手に握らす。
ニヒツ
「お兄さんから…」
「お兄さん、君のことをずっと心配して、魔脈に戻らずにずっと君の側で見守っていたよ」
バアルゼブル
「にぃ…さん………」
ニヒツ
「でも、もう限界みたいだから、君を「迎えに行く」と同時に「魔脈に帰る」とも言っていた」
「あの時、同盟を結んでいたとはいえ…君やお兄さん、魔界の民を守れなくてごめんね」
「もっと、早くに謝るべきだったね」
バアルゼブルの目に涙が溢れてくる。
ニヒツ
「……お兄さんの限界も近いから早く戻ってあげて」
「バアルゼブル」
バアルゼブル
「あぁ…ありがとう…」
ニヒツが握らせたネリネの花からピンクの炎が溢れ出て来て、バアルゼブルを包み込む。
それは、花のあった部分から、藍色の炎へと変わり、光の粒子と共に空へと舞ってしまった。
その光の粒子は、導が直しきれていなかった魔脈や露出した魔脈を地面へと戻していき、魔界大帝國の城に絡まりついていた魔脈も綺麗に、地面の中へと返っていった。
青い雫が落ちる。頬に優しい風が当たる。
導の目には、涙があった。
神陽導
「さようなら」
「そして、また、会おうね」
ニヒツ
「次は、幸せになってね」
_____________
白い空間が目に入る。
バアルゼブルは、ポツンと立っていた。
辺りを見渡しても何ない場所だった。
バアルゼブル
「魔脈には、戻れないか…」
「まぁ、あんなことをしたのだ…当たり前か…」
???
「そうだ。当たり前だ」
「我々と協力しておいて、タダで、魔脈に戻れると思うなよ?バアルゼブル」
バアルゼブル
「貴様は…レーヴァテン」
バアルゼブルの後ろに、黒い髪に鋭い目、吸血鬼の様な大きな八重歯が目立つ吸血鬼の様な存在がいた。
そう、レーヴァテンだ。
バアルゼブル
「何故、貴様が此処に…」
レーヴァテン
「そんなもの「召使」って言うメイド服着た女に殺されたからなぁ」
バアルゼブル
「そうか…」
レーヴァテン
「にしても、俺は、非常に悲しい」
「ミッターナハツゾネ様から頂いた力を無下にして、兄を殺した犯人どもに負けるとはな」
「何故、負けた?」
レーヴァテンが、ギョロっとした目で、バアルゼブルを見つめる。
バアルゼブルは、俯くしかできない。
レーヴァテン
「まぁ、いい…どうせ、貴様も地獄に行くのだ」
「魔脈には、戻れんだろうな!罪人くん」
バアルゼブル
「!…」
???
「嗚呼、そうだ」
「弟のバカな行動で、弟は、多くの“ 罪 ”を犯して来た」
「だが、それがなんだ」
バアルゼブルが、顔をあげる。
其処には、双子の兄の「バアル」の姿があった。
バアルは、レーヴァテンとバアルゼブルの間に入り、話を続ける。
バアル
「それと同時に、お前らも“ 罪人 ”として魔脈から拒まれるだろうな」
「貴様が、1,000年前にやった行為は、それこそ許されない」
レーヴァテン
「だから、なんだい?」
「それは、君の“ 汚染 ”された弟も同義だろう」
バアル
「嗚呼、そうだ」
「だが、お前に比べられたくはないな!」
「ミッターナハツゾネに、裏切られて、その呪いに殺されたお前にな!」
レーヴァテン
「!…貴様…!」
バアル
「ほら、迎えが来てくれぞ!」
「貴様は…貴様らは!二度と我の大事な弟の前に現れるな!」
レーヴァテン
「お許しを!ミッターナハツゾネ様!お助けを!」
レーヴァテンの背後から、無数の包帯で出来た手が、レーヴァテンの身体を捉えると、王冠の中に吸収されていった。
バアルゼブル
「あ、あの…にぃ…」
バシッ
バアルゼブル
「いたっ…」
バアルが、バアルゼブルの頬を叩いた。
バアルゼブルが、頬に手を当てる。痛かった。
バアル
「大馬鹿もの!」
「あれほど、「“ 汚染 ”には気をつけろ」と言い続けただろ!」
バアルゼブル
「………………」
「ごめんなさい…」
バアル
「お前のせいで、どれだけの民が死んだと思っている!」
「何万、何十万人もの民が、お前のせいで死んで魔脈にも帰れず、彷徨い続けているのだぞ!」
「皆、アンヘンガー帝國の人達のお陰で無事、全員、魔脈に戻れたからいいものの!」
「お前は、取り返しのつかないことをしたんだぞ!」
バアルの目に、涙があった。
バアル
「私の死を悔やむのは分かるが、民を巻き込むのは違うだろう!」
「「ごめんなさい」その一言で終わる問題ではないのだぞ!お前はそれを分かっているのか?!」
バアルゼブル
「………………」
バシッ
バアル
「無言でいるなら、謝り続けろ!」
「お前のやって来た事で、苦しませた者達に、謝り続けろ!」
バアルゼブルは、その場に崩れて大きな涙を出しながら…
「ごめん、ごめんなさい」
と謝り続けた。
バアルは、そんな弟の姿を見て、しゃがみ抱きしめてあげた。
そして、バアルとバアルゼブルが付けていた髪飾りから藍色の炎と、赤黒い色の炎が出て来て、2人はバラバラに、燃え散った。




