第二章 支配に侵された魔の手 第二十三話 足掻いて、足掻いて、足掻いて
コツコツ
虹色のステンドグラスで出来た壁がある先の見えない廊下
そこには、赤い月明かりに照らされている。
そこを一人で歩く“ トゥア・シズム ”こと“ バアルゼブル ”が一方、方向へ進む。
バアルゼブルが、足を止め虹色のステンドガラスの方を見る。
すると、外側からベチャッと何かが、虹色のステンドグラスにつく。
視線を前に持っていく。
その視線に合わせるように、何かがステンドグラスにへばりつき、垂れていく。
コツコツ
一歩、また一歩と前に進んで行く。
外から、大きな落雷の音がする。
ザーザーと大雨が降っている事も外から聞こえる音でなんと無く分かる。
それでも、気にせずにバアルゼブルは歩き続ける。
ある一定の距離を進むと、虹色のステンドグラスに人型の何かがへばりつき、垂れていく。
視線を虹色のステンドグラスに向ける。
そこから、声が聞こえる。
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気付けば、黄色やオレンジの魔薔薇が満面に咲き誇る花畑にいた。
目の前には、人型の獣人と人型の魔族の子供が楽しそうな会話をしている。
子供達は、和かに笑いながら魔薔薇で花冠や魔薔薇のブレスレットを作っていた。
赤い空が、黒くなる。
子供たちが、怖がる。その場に、その子供たちの親らしき人がやって来て、作っていた花冠やブレスレットを放り投げ出され、逃げて行く。
“ バアルゼブル ”の手には、血に染まった片手剣が握られていた。
また、一歩、また一歩と前に進む。
目の前に黒い化け物が現れる。
肩から生えた大きなツノ、大人一人を丸呑み出来そうな大きな牙のついた口
“ バアルゼブル ”が、血に染まった片手剣を、化け物に向ける。
鋭い眼光だった。
でも、その鋭い眼光は、いつの間にか“ 虚無 ”を映す。
過去になっていた。
血に染まった片手剣の先から、一滴の血が満面に咲き誇る魔薔薇に堕ちる。
と、同時に空から黒い雫や赤い雫が沢山落ちてくる。
足元に咲き誇る魔薔薇は、赤に染まって、黒に染まって…
目の前から、黒い光が現れ広がる。
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気付けば、元いた廊下だった。
手は、真っ赤に染まって、腕へとそれは伸びていく。
視線を前に向け、進む。
コツコツ…
右斜後ろから声が聞こえる。
振り返らずに、前に進む。
???
「待って!お兄さんを助けられなかった」
「本当に…ごめんなさい」
心臓から、「憎い」「憎い」「憎い」と感情が溢れてくる。
彼からしたら、“ バアル ”を救えず、魔界を見殺しにした真犯人に声だった。
その醜く憎い声の主は、ずっと、問いかけて来る。
目元に包帯をし灰色のアサシンの様な軍服を身に付けた人が描かれたステンドグラスの前にやって来る。
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目の前には、見慣れた景色が広がっていた。
2つの机と椅子、机と上や地面には大量の書類の山が広がる。
瞬きをすると、そこで、仲良く業務を行う自分とバアルの姿があった。
また、瞬きをする。
場面が変わる。
来客との会議を行う専用の会議室だ。
長机の端に、一人の藍色髪の男性が座り、その横には目元に包帯を付けている灰色のアサシンの様な軍服を身に付けた人が立っていた。
そこには、若かりし頃の自分が、緊張した様にお茶を運ぶ姿が映っていた。
お茶を運び終われば、バアルのいる席の隣に立つ。
藍色髪が、書類を取り出し魔法で、バアルの元に運ぶ。
上には、堂々と「悪魔大帝國防衛同盟契約書」と書かれてあった。
内容を簡単に言えば…
「汝らの国に関わる重大な損失となる事が起これば“ 同盟国 ”として参戦し、国を守ろう。」
「そして、すぐに守れる様に“ 悪魔大帝國・魔界守護防衛部隊 ”の者の常駐の許可をくれ。」
との事だ。
バアルは、その条文を見た。
バアルは、その条文に追加で、こう書いた。
「常駐する為に、現在の北方にある未開拓の地の開拓」
という願いを書き、反対の席にいた藍色髪の男に魔法で渡し、条文を見た。
藍色髪の男は、バアルに確認をとった後に、一番したに書かれてあった署名欄に役職名とともに名前を書いた。
署名欄
悪魔大帝國・臨時秘書 ヴェルト
署名をした後に、再度、バアルに書面を渡す。
バアルも同様に役職名と名前を書いた。
署名欄
悪魔大帝國・臨時秘書 ヴェルト
魔界大帝國・帝王 バアル・ダガヴォール
その後互いに、立ち上がり硬い握手を交わした。
ヴェルトは、
「近々物資や部隊の者を連れて再度やって来る」
と言い残し、隣に立っていた目元に包帯を付けて人にアイコンタクトをとり、会議を後にした。
それから、数日が経った。
長年、数々の王が、開拓を進めようとしていた北方の領土
それが、現地民と共に始まった。
高い城、石垣の家、整備されていく地面、順調に育つ作物
数々の王が、成し遂げれなかった事を、数年で成し遂げてしまった。
悪魔大帝國の者を見て来た。
“ バアルゼブル ”が時計を見た。
其処には、今から約1100年ほど前の時間が表示されていた。
バアルと共に、今後の関係性を話し合う。
北方の新たな王は、優しかった。
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また、あの廊下に戻って来る。
“ バアルゼブル ”は、真横にある目元に包帯を付けて灰色のアサシンの様な軍服を身に付けた人が描かれたステンドグラスを、赤く染まっていく拳で、何度も何度も殴りつけた。
ステンドグラスは、粉々に壊れ崖下へと落ちていく。
その目は、酷く殺気に満ちており、恨んでいるのが確実に分かる目だった。
割れたステンドグラスがあった場所から、黒い雫が廊下に入り込んで、氾濫した川の様に黒い水が増えていく。
“ バアルゼブル ”はそれでも進み続ける。
目の前には、一つの台座があった。
ふかふかのクッションの上に置かれた黒い直径6cmほど球を取る。
そして、それを一切の迷い無く口の中に入れ飲み込む。
バアルゼブル
「これでいいのだ。あの憎たらしいアイツを殺す為なら…!」
「私はなんだってする!」
赤く染まっていく両手を見ながら、狂った様に嘲笑う。
歓喜なるその声を聞く者は誰もいなかった。
ただ、一人を除いて
バアルゼブル
「ハッハハ!アイツが来なければ…!」
「こうもならなかった。兄は、私の兄は二度と帰っては来ない!」
「アハッハ!遂に成し遂げられる!」
「見守っててくれ…兄さん」
そう言って、“ バアルゼブル ”の肉体は、大きく変化する。
身体は肥大化し、肩から大きなツノが生え、顔も大きくなって牙や口が作られていく。
「“ 汚染 ”にだけは、気をつけろ。バアルゼブル」
「それは、誰にでも起きうる事だが、飲み込まれていけない」
「私は、純粋なお前を愛している」
その言葉は、今の彼には、もう伝わらないだろう。
王から堕落し、民を捨てた王…
その名は…“ バアルゼブル・ダガヴォール ”
今は、「1000年前に囚われし者・悪食の王」へと成り果てた。
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1000年前に囚われし者 悪食の王
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